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5話

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 犯罪者ギルドの追っ手は、私が思っていたより執拗でした。
 ギルドの面目にかけても、私を殺さなければいけないと思ったのかもしれません。
 確かに私に逃げられてしまったら、他のギルドからも舐められるでしょう。
 なによりメンドーサ侯爵家の家臣や、領都に住む犯罪者ギルド以外の住民から甘く見られてしまったら、今までのように好き勝手にはできなくなります。

「蒼虎、先回りしている刺客を皆殺しにして。
 赤虎、追ってくる刺客を皆殺しにして。
 黒王、近づいてくる刺客を皆殺しにして」

 ガァオォォォォ!
 ガァオォォォォ!
 ヒィィィィイン!

 三頭とも自信満々の返事をしてくれます。
 彼らに任せれば何の心配もいりません。
 声に出して命令しなくても、心の中で思うだけで感じ取って動いてくれます。
 ですがそれでは、ペリーヌには分かりません。
 今はペリーヌを安心させることが一番大切なのです。

 ペリーヌが心の奥底に隠した秘密。
 それを打ち明けてもいいと思うくらいの、信用信頼を勝ち取る必要があります。
 全てを明らかにしたうえで、勝ち続けることが大切なのです。
 相手がどこの誰であろうと、私なら撃退してくれる。
 そう信じてもらう必要があるのです。

 ガァオォォォォ!

 最初に蒼虎が一時間ほどで戻ってきました。
 先回りした刺客を皆殺しにしてくれたのでしょう。
 蒼虎の強さと足の速さなら、この先十キロに敵はいなくなりました。

 ガァオォォォォ!

 それから一時間ほど経って、今度は赤虎が帰ってきました。
 追撃していた刺客を皆殺しにしてくれたのでしょう。
 蒼虎より遅かったのは、私たちが先を急いでいたことで、後ろに取り残されたからで、赤虎が蒼虎より劣っているからではありません。

 ヒィィィィイン!

 黒王が赤虎と同時に戻ってきてくれました。
 草食動物である馬の生存本能に根差した、飛び抜けた索敵能力でも、敵の存在がないと判断できたのでしょう。
 自信満々に戻ってきました。

 ガァオォォォォ!

 一度戻ってまた離れて行った蒼虎が戻ってきてくれました。
 巨大な鹿を口にくわえて運んできてくれています。
 蒼虎から見て安全と判断できたので、食糧を狩ってきてくれたのです。
 気の利く子です。

「ペリーヌ、休憩するから黒王に護ってもらいなさい」

「……はい」

 まだまだ完全信用信頼してもらえていません。
 本当は私が生理現象までみんな見守るべきなのですが、女性同士とはいえ見られるのは恥ずかしいことです。
 下手に我慢したら内臓の病気になってしまいます。
 だからといって、出会ったばかりの虎と一対一で過ごすのも怖いでしょう。
 少しでも恐怖感が少ないのは、馬の黒王か白王になってしまいます。
 だから黒王にペリーヌの守護役を任せているのです。
 ペリーヌが生理現象をすませている間に、鹿を解体しましょう。
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