公爵令嬢は夜這いをかけてきた王太子を叩きのめして父親から勘当追放されてしましました。途中で助けた美少女はいわくがあるようです。

克全

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4話

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「そうか、災難だったね」

「……」

 私が助けた美少女はペリーヌと名乗りました。
 絶世の美少女とはこの娘のためにある言葉だと思うほどです。
 遠目にも美しく珍しい銀の髪色をしていましたが、近くで見るとこの国の人間とは思えない緑の瞳でした。

 父親を目の前で殺され委縮してしまっているのでしょう。
 ポツポツと話してくれる身の上話は、聞き取りにくいくらいの小声でしたが、その声は天界の音曲かと思うほどの美声です。
 質の悪い男なら、この子を鞭打って悲鳴をあげさせようとするでしょう。
 実際貴族の一部にはそのような外道も存在します。

 ガァオォォォォ!

「ヒィ!」

 蒼虎がひと声鳴いて追っ手の接近を知らせてくれますが、青い虎の鳴き声はペリーヌにとっては恐怖でしかないようです。
 ですがこればかりは慣れてもらうしかありません。
 しかし、しつこい連中です。
 王家に訴え出て、王家に騎士団と共に取り調べ行くと威圧したのが悪かったのでしょうか?

 いえ、そんな事はないでしょう。
 今までも、このような事は何度もあったはずです。
 なにをどう言おうが、少しでも揉めた相手は口封じしてきたのでしょう。
 そうでなければメンドーサ侯爵家の表看板があっても、とうの昔に王国が密偵を放って調べているはずです。

 いえ、それも違いますね。
 王国はすでに何度も密偵を放っているはずです。
 メンドーサ侯爵家の状態も正確につかんでいるはずです。
 でもそれを、賄賂をもらって握り潰す重臣や、何か理由をつけて放置させる重臣がいるのでしょう。
 醜いことです。
 
「なにか力になれることはあるか?
 私は修行の旅に出ている騎士だから、修行ついでにいくらでも手を貸すぞ」

「……いえ、大丈夫です」

 私は何度も声をかけるのですか、ペリーヌは頑なに殻に閉じこもります。
 話してくれた範囲の事情だけを考えれば、人間不信になるのも仕方がありません。
 ありませんが、どうも引っかかるのです。
 わずかな言葉の端々と、怯える態度。
 なにか重大な秘密を抱えているように思えてなりません。

 私も何の理由もなく『賢者』という異名をつけられているわけではありません。
 王家が眼をつけるほどの知識と魔力に聖なる力を会得しています。
 さらに自衛のために武芸まで身につけているのです。
 ペリーヌの態度に不審な点を見つけてしまいます。

 問題はそれを見て見ぬふりをすべきなのかどうか……
 お節介と言われようとも介入すべきなのか?
 時間をかけてでも信用信頼を得て、ペリーヌから話してくれるのを待つか?
 いっそ何も気づいていないことにして、ペリーヌが望むときに別れるか?
 時間の限られた秘密でなければいいのですが……
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