婚約破棄戦争

克全

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3章

33話

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「心配しなくていい。
 支援に斥候組頭のブレンダンを付ける。
 お前は何も心配せずに、妹を助け出せばいい」

「ドナハ王子殿下。
 ありがとうございます。
 本当にありがとうございます」

 キラム・ノーランは、イーハ王に組する貴族の放った斥候だった。
 元々は農民の子供だったのだが、税が払えない両親が売ったのだ。
 いや、売らされたのだ。
 貴族の家臣と結託する奴隷商人に税の代わりに取られたのだ。
 売る売らない以前の問題なのだが、公的書類には両親が売ったことになっていた。

 キラム・ノーランは子供の奴隷として酷使された。
 顔立ちがよかったために、少年男娼にされてしまった。
 地獄のような生活だった。
 だがキラムは挫けなかった。
 必ず生き延び報復すると誓った。

 キラムが最初に覚えたのは、人の心を読む事だった。
 自分を買った相手の顔と仕草を見て、心を読む術を会得した。
 殴られないように。
 殺されないように。
 油断すれば、奴隷男娼など簡単に殺されてしまう。

 金で拷問殺人の愉悦を買う貴族士族もいるのだ。
 復讐する為には、生き残らなければならない。
 その必要から、読心術を会得した。
 その力を使って上手く立ち回り、金持ちに買って貰った。
 そこで身体を使って歓心を買い、剣術を学ぶ機会を得た。

 だがそこも直ぐに駄目になってしまった。
 金持ちが盗賊に襲われたのだ。
 一家皆殺しにされ、有り金全て奪われた。
 キラムも殺される所だったが、美貌と読心術が命を救った。
 上手く立ち回って、盗賊団の仲間に入ったのだ。

 最初は身体を使って立場を築いた。
 初歩的な手ほどきしか受けられなかったが、剣術も続けた。
 盗賊団の斥候からも積極的に学んだ。
 盗賊団で学べることは全て学んだが、特に斥候術を学んだ。
 逃げる心算だったからだ。

 学びながら、時を待った。
 数年間は盗賊団のアジトで身体を張って生き延びた。
 ある程度成長してからは、引き込み役をやらされた。
 金持ちの下働きに送り込まれ、機会を見て戸を開けて、盗賊団を引き入れるのだ。
 自分で人殺しはしなかったが、その手助けはしていた。

 そんな間も、剣術と斥候術を学び続けていた。
 天与の才能が有ったのだろう。
 盗賊団で学べる斥候術は全て学んだ。
 戦場での技術は学べなかったが、民家に入り込む術は天下無双となっていた。
 剣に関しては、技を学ぶ機会はなかったが、ただ一剣を突き斬る速さと強さを極めた。

 復讐に賭ける一念は、並の技では防げない突きと斬り込みを学ばせた。
 その速さと強さは、並の剣士を一刀で斬り殺す程だった。
 だがまたしてもキラムの運命は大きく動くことになった。
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