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第二章
第71話:婿取り
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皇紀2222年・王歴224年・晩夏・皇居・14歳
「ミア殿下からの命令を伝えます。
殿下はエレンバラ皇国名誉侯爵、エレンバラ皇国子爵ハリー卿を婿に取られます。
直ぐに婿入りの準備を整えなさい。
これは皇女としてだけでなく、摂政としての命令でもあります」
わたくしの代わりにシャーロットが、皇国会議に出席している重臣達に厳しく命令してくれますが、話しが少し違います。
昨日の話では降嫁のはずだったのに、なぜ婿取りに変わっているのでしょうか。
シャーロットがハリー様の命令に逆らうはずがないですから、一晩のうちに状況が変わったという事でしょうか。
まあ、わたくしとしては、ハリー様と夫婦になれるのなら、降嫁でも婿入りでもどちらでもかまわないので、ここは黙ってシャーロットに任せましょう。
「恐れながら申しあげます。
急にそのような事を申されましても、皇国にも皇家にも伝統がございます。
それを無視して直ぐに婿取りと申されても困ります。
それに、皇女殿下の婿取りなど聞いた事もございません。
そのような前例のない事を認める訳には参りません」
皇帝の顔色を見て、反対だと悟った左大臣が恐々反対の言葉を口にします。
幾人かの重臣が、同じように皇帝の顔色を伺って反対の態度をとっています。
わたくしを恐れて言葉に出さない卑怯な連中です。
この場で殺してやりたくなりますが、我慢です。
ハリー様に凶暴な女だと思われたくないですから。
それに、わたくしが直接手を下さなくても、やってくれる者がいます。
「「「「「ガルゥウウウウウ」」」」」
「不忠者どもが、それでも皇家に仕える皇国貴族か。
ミア殿下が何年前からハリー卿の所に降嫁したいと言ってきたか、皇国貴族なら知らないとは言わせないぞ、不忠者どもが」
わたくしの護衛に皇国会議に参加している魔狼達の殺意の籠った唸り声と、わたくしの代弁者として皇国会議に参加している、シャーロットの殺意の籠った厳しい叱責に、反対の態度をとっていた重臣達は震えあがりました。
三分の二の重臣が奪爵追放刑となり、新たに重臣として皇国会議に参加している者は、わたくしを怒らせないように無反応を貫いていましたが、姑息な態度で生き残った連中の中には、いまだにわたくしの事を舐めている者がいますね。
「お前達が以前からやっていたように、記録を改竄して自分達の都合のいいようにすれば、それで済む事であろう。
今反対の言葉を口にした左大臣殿はもちろん、卑怯にも口に出すことなく態度で反対の意を表した者共もやらなくていい。
やりたい者がやればいい、それだけの事だ。
殿下の助けになる者には庇護を与え、殿下に逆らう者には庇護を与えない。
皇帝陛下の庇護を受ければいい、それで何の心配もいらない、安心であろう。
再度ミア殿下の御意志を伝える。
吉日をもって、エレンバラ皇国名誉侯爵エレンバラ皇国子爵ハリー卿をミア皇女殿下の婿とする。
不忠者どもは皇居からつまみ出せ」
ウォオオオオオン
「ひぃいいいいい、おゆるしを、おゆるしください」
「わ、わ、わ、わたしは……」
「違います、間違いです、反対の態度など取っておりません、殿下、ミア殿下……」
「お、お、お、おゆ、おゆるし……」
「申し訳ありませんでした、どうか、どうか、どうかお許しください。
返上します、左大臣は返上します、だから奪爵だけは、奪爵だけは……」
「ミア殿下からの命令を伝えます。
殿下はエレンバラ皇国名誉侯爵、エレンバラ皇国子爵ハリー卿を婿に取られます。
直ぐに婿入りの準備を整えなさい。
これは皇女としてだけでなく、摂政としての命令でもあります」
わたくしの代わりにシャーロットが、皇国会議に出席している重臣達に厳しく命令してくれますが、話しが少し違います。
昨日の話では降嫁のはずだったのに、なぜ婿取りに変わっているのでしょうか。
シャーロットがハリー様の命令に逆らうはずがないですから、一晩のうちに状況が変わったという事でしょうか。
まあ、わたくしとしては、ハリー様と夫婦になれるのなら、降嫁でも婿入りでもどちらでもかまわないので、ここは黙ってシャーロットに任せましょう。
「恐れながら申しあげます。
急にそのような事を申されましても、皇国にも皇家にも伝統がございます。
それを無視して直ぐに婿取りと申されても困ります。
それに、皇女殿下の婿取りなど聞いた事もございません。
そのような前例のない事を認める訳には参りません」
皇帝の顔色を見て、反対だと悟った左大臣が恐々反対の言葉を口にします。
幾人かの重臣が、同じように皇帝の顔色を伺って反対の態度をとっています。
わたくしを恐れて言葉に出さない卑怯な連中です。
この場で殺してやりたくなりますが、我慢です。
ハリー様に凶暴な女だと思われたくないですから。
それに、わたくしが直接手を下さなくても、やってくれる者がいます。
「「「「「ガルゥウウウウウ」」」」」
「不忠者どもが、それでも皇家に仕える皇国貴族か。
ミア殿下が何年前からハリー卿の所に降嫁したいと言ってきたか、皇国貴族なら知らないとは言わせないぞ、不忠者どもが」
わたくしの護衛に皇国会議に参加している魔狼達の殺意の籠った唸り声と、わたくしの代弁者として皇国会議に参加している、シャーロットの殺意の籠った厳しい叱責に、反対の態度をとっていた重臣達は震えあがりました。
三分の二の重臣が奪爵追放刑となり、新たに重臣として皇国会議に参加している者は、わたくしを怒らせないように無反応を貫いていましたが、姑息な態度で生き残った連中の中には、いまだにわたくしの事を舐めている者がいますね。
「お前達が以前からやっていたように、記録を改竄して自分達の都合のいいようにすれば、それで済む事であろう。
今反対の言葉を口にした左大臣殿はもちろん、卑怯にも口に出すことなく態度で反対の意を表した者共もやらなくていい。
やりたい者がやればいい、それだけの事だ。
殿下の助けになる者には庇護を与え、殿下に逆らう者には庇護を与えない。
皇帝陛下の庇護を受ければいい、それで何の心配もいらない、安心であろう。
再度ミア殿下の御意志を伝える。
吉日をもって、エレンバラ皇国名誉侯爵エレンバラ皇国子爵ハリー卿をミア皇女殿下の婿とする。
不忠者どもは皇居からつまみ出せ」
ウォオオオオオン
「ひぃいいいいい、おゆるしを、おゆるしください」
「わ、わ、わ、わたしは……」
「違います、間違いです、反対の態度など取っておりません、殿下、ミア殿下……」
「お、お、お、おゆ、おゆるし……」
「申し訳ありませんでした、どうか、どうか、どうかお許しください。
返上します、左大臣は返上します、だから奪爵だけは、奪爵だけは……」
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