皇女激愛戦記

克全

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第二章

第47話:飛び地

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 皇紀2219年・王歴221年・夏・皇居・11歳

「ミア皇女殿下、また領地を献上したいと言う者が現れました」

「それは、カンリフも認めているのですか」

「渋々ですが、殿下に献上したという領地を、そのまま横領する事はできませんから、認めております、ご安心ください」

 わたくしは、自分で命じたカンリフ討伐命令を撤回しました。
 その上で、和平の仲介をしたのですが、これが大変でした。
 今確保している領地で状態で線引きするのか、わたくしが討伐命令を出す前の状態で線引きするのか、あるいはカンリフが国王を追放する前の状態で線引きするのか。
 もめにもめたのですが、わたくしも何時を基準にすべきか分かりませんでした。
 
 そんな時に知恵を授けてくれるのは、何時もシャーロットです。
 そのシャーロットに指示を出しているのはハリー様でしょう。
 だったら、わたくしは難しく考える事なく、シャーロットが教えてくれた通りにすればいいだけの事です。
 そう考えると何の心配もなくなりました。

 シャーロットの話では、この戦いの責任はカンリフにあると言うのが大前提なので、決まった基準など設けなくていいとの事でした
 わたくしの有利になるように決めればいいだけだと言うのです。
 そもそもとても勝てそうにない状況だからこそ、カンリフはわたくしに討伐命令の撤回を頼んできているのだそうです。
 わたくしに味方してくれた者に有利な和平案をだすのが当然なのだそうです。

 その結果、カンリフは奪われた領地を奪い返す事ができず、奪った領地はわたくし名義にする事で取り上げられる結果となりました。
 わたくしに味方した者達は、建前だけわたくし名義にした領地に代官を送り、僅かな名義使用料をわたくしに贈ればいいと思っていたのでしょう。
 普通の王女や皇女なら、領地を治める家臣などないので、僅かな名義使用料を貰えるだけで満足していた事でしょう。

 ですが、わたくしには、ハリー様という、とても強力な後ろ盾がいるのです。
 ハリー様は首都で餓死しかけていた多くの難民を助けるために、領地に迎えて食事と教育を与えられ、数年かけて立派な文官や武官に育て上げられたのです。
 そのような者達をわたくしの名義になった領地に差し向けてくれたのです。
 わたくしに味方した者達は、当てが外れて腹を立てたかもしれませんが、そのお陰でカンリフとの緩衝地帯ができたのですから、むしろ感謝して欲しいです。

 最初にカンリフがわたくしに割譲したのは一万人を養える領地でした。
 ですがカンリフはもちろん、不利に陥った貴族や騎士がわたくしに領地を寄贈した事で、わたくしの領地は十万人を養えるほどの大領となりました。
 その広さと豊かさは、小さな地方を支配する領主と同じなのです。
 生きるために地獄同然の修道院に送られるはずだった頃には、とても考えられないほどの富と兵力を手に入れる事ができたのです。

 もちろん、領地の富は実際に管理してくださっているハリー様と折半になりますし、大小飛び飛びの領地では、守る力も攻める力も小さなものです。
 ですが、皇女という地位が大きな護りの力になるとシャーロットが言ってくれていますから、その力を使ってハリー様の役に立ちたいと思っています。
 ただ、物欲しそうな顔をする皇帝には何もやる気はありません。
 欲しい物があるのなら、さっさとハリー様に降嫁させてくれればいいのです。
 降嫁させてくれるのなら、治められる税の一割くらいはくれてあげますのに。
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