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第二章
第29話:ボグ魔術
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皇紀2218年・王歴220年・秋・北山奥地の魔境・10歳
「ウッドソード、ウッドソード」
もう、魔晶石の魔力が残り少なくなっています。
あれほど沢山の魔力が詰まっていたはずなのに、一時間ほどで枯渇しそうです。
リーダーだけを攻撃すればいいと思っていたのですが、正面にいる他の二頭も、左右の二頭も、リーダーと連携して襲い掛かってきてしまいました。
しかたなく、引っ切り無しにレベル四の魔術を放たないといけなくなりました。
その所為で魔力の消耗が激し過ぎるのです。
「ソイルボール」
「ソイルボール」
「ソイルボール」
魔術が使える戦闘侍女達が、わたくしが休めるように支援してくれます。
わたくしは、ずっと使える最大の魔術を放ち続けていましたが、戦闘侍女達は、時間稼ぎと割り切って、一番効率のいい属性の最小魔術を放っています。
わたくしも同じ事ができればいいのですが、非常用に肌着やマントに刺繍した魔術は、わたくしが放てる最強最大の魔術だけなのです。
「「「「「ソイルボール」」」」」
群れを組むだけあって、鉤竜には知恵があるようです。
最小効率で鉤竜を阻むために、土の塊で目を狙っているのですが、体を小刻みに動かし、目をつぶってこちらの攻撃を防いでしまいます。
ですので、徐々にこちらに迫ってきてしまうのです。
わたくしは、もう自分の足で立って戦っていますが、母上様はまだ戦闘侍女に抱きかかえられ、徐々に後退しているありさまです。
「「「「「ウギャァアアアアオ」」」」」
「後退」
「「「「「ソイルボール」」」」」
「逃げろ、逃げるのだ」
もう言葉も立場も状況も、選んでいる場合ではありません。
一瞬の遅れで、鉤竜に喰い殺されてしまうのです。
前にも右にも左にも逃げられないのなら、後ろに逃げるしかありません。
そこにもう一頭の鉤竜がいるかもしれなくても、一人時間稼ぎをしてくれているシャーロットにさらなる負担をかけるとしても。
「「「「「ソイルボール」」」」」
「喰らいやがれ、化け物が」
「これでどうだ、化け物が」
もう魔力に余裕のある者は誰一人いません。
レベル一の魔術を使っては、魔力が回復するのを待つ状況です。
情けない事に、わたくしの魔力回復力はとても少ないのです。
そんなわたくしや戦闘侍女達を少しでも支援しようと、最初の衝撃から立ち直った兵士達が、全く通じない事が分かっていながら矢を射っています。
わたくし達の前に立って、少しでも時間を稼ごうとしてくれているのです。
自分達が喰われる事で、少しでもわたくし達が助かる可能性に賭けているのです。
満腹になった鉤竜がわたくし達を見逃すかもしれないと。
この者達ならば、心から信用する事ができます。
全員で、ここから生きて帰れたらの話ですが……
「これは、いったい……」
兵士の一人が周囲の状況を目にして絶句しています。
いえ、兵士だけではなく、わたくしも言葉を失っています。
木々は焼け落ち、所々に土の槍が天に向かって伸びています。
シャーロットの奮戦がよく分かる状況ですが、わたくしも兵士達もその程度で驚いているわけではありません。
そうではなく、森であった場所が、広い沼になっている事に驚愕しているのです。
しかもその真ん中で鉤竜が溺れているのです。
「「「「「ウギャァアアアアオ」」」」」
「スーパーボグ、エリアボグ、スーパーボグ、エリアボグ、スーパーボグ」
「ウッドソード、ウッドソード」
もう、魔晶石の魔力が残り少なくなっています。
あれほど沢山の魔力が詰まっていたはずなのに、一時間ほどで枯渇しそうです。
リーダーだけを攻撃すればいいと思っていたのですが、正面にいる他の二頭も、左右の二頭も、リーダーと連携して襲い掛かってきてしまいました。
しかたなく、引っ切り無しにレベル四の魔術を放たないといけなくなりました。
その所為で魔力の消耗が激し過ぎるのです。
「ソイルボール」
「ソイルボール」
「ソイルボール」
魔術が使える戦闘侍女達が、わたくしが休めるように支援してくれます。
わたくしは、ずっと使える最大の魔術を放ち続けていましたが、戦闘侍女達は、時間稼ぎと割り切って、一番効率のいい属性の最小魔術を放っています。
わたくしも同じ事ができればいいのですが、非常用に肌着やマントに刺繍した魔術は、わたくしが放てる最強最大の魔術だけなのです。
「「「「「ソイルボール」」」」」
群れを組むだけあって、鉤竜には知恵があるようです。
最小効率で鉤竜を阻むために、土の塊で目を狙っているのですが、体を小刻みに動かし、目をつぶってこちらの攻撃を防いでしまいます。
ですので、徐々にこちらに迫ってきてしまうのです。
わたくしは、もう自分の足で立って戦っていますが、母上様はまだ戦闘侍女に抱きかかえられ、徐々に後退しているありさまです。
「「「「「ウギャァアアアアオ」」」」」
「後退」
「「「「「ソイルボール」」」」」
「逃げろ、逃げるのだ」
もう言葉も立場も状況も、選んでいる場合ではありません。
一瞬の遅れで、鉤竜に喰い殺されてしまうのです。
前にも右にも左にも逃げられないのなら、後ろに逃げるしかありません。
そこにもう一頭の鉤竜がいるかもしれなくても、一人時間稼ぎをしてくれているシャーロットにさらなる負担をかけるとしても。
「「「「「ソイルボール」」」」」
「喰らいやがれ、化け物が」
「これでどうだ、化け物が」
もう魔力に余裕のある者は誰一人いません。
レベル一の魔術を使っては、魔力が回復するのを待つ状況です。
情けない事に、わたくしの魔力回復力はとても少ないのです。
そんなわたくしや戦闘侍女達を少しでも支援しようと、最初の衝撃から立ち直った兵士達が、全く通じない事が分かっていながら矢を射っています。
わたくし達の前に立って、少しでも時間を稼ごうとしてくれているのです。
自分達が喰われる事で、少しでもわたくし達が助かる可能性に賭けているのです。
満腹になった鉤竜がわたくし達を見逃すかもしれないと。
この者達ならば、心から信用する事ができます。
全員で、ここから生きて帰れたらの話ですが……
「これは、いったい……」
兵士の一人が周囲の状況を目にして絶句しています。
いえ、兵士だけではなく、わたくしも言葉を失っています。
木々は焼け落ち、所々に土の槍が天に向かって伸びています。
シャーロットの奮戦がよく分かる状況ですが、わたくしも兵士達もその程度で驚いているわけではありません。
そうではなく、森であった場所が、広い沼になっている事に驚愕しているのです。
しかもその真ん中で鉤竜が溺れているのです。
「「「「「ウギャァアアアアオ」」」」」
「スーパーボグ、エリアボグ、スーパーボグ、エリアボグ、スーパーボグ」
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