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第二章
第21話:不承不承
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皇紀2218年・王歴220年・春・皇居・10歳
「恐れながら皇帝陛下に申し上げさせていただきます」
この宮位にいる限り、身分に関係なく皇帝に直答を許されているシャーロットが、皇帝に諫言する許可を求めている。
今回はどんな口舌を使って皇帝を丸め込む気なのでしょう。
「……発言を認める、話せ」
「皇帝陛下の御心配はもっともですが、残念な事に、殿下方には実際に魔術を発動させるだけの魔力がありません。
ですから、幾ら魔術や魔法陣を学ばれても皇族の争いにはならないと思われます。
しかしながら、殿下方だけで皇家に伝わる大切な資料や魔法陣を使われると、皇帝陛下の申されるように損傷させてしまうかもしれません。
そのような事態にならないように、誰か大人を後見人として付ければいいのではないでしょうか」
シャーロットがわたくしの望みを叶えようとしえくれています。
「朕を騙そうとしても無駄だぞ、シャーロット。
魔晶石や魔宝石に蓄えた魔力があれば、本人に魔力がなくても魔術が発動する。
ハリーはミアやベンジャミンを唆して皇家に伝わる魔法陣を手に入れる心算か」
ハリー殿にそのような野望があったのですね、驚きました。
妻として手助けしなければいけません。
「恐れながら皇帝陛下、ハリー様にそのような姑息な真似は不要なのでございます。
ハリー様の魔力と魔術は、既に無敵なのでございます。
そうでなければ、あのような少領の領主が、王家や周辺領主を敵に回して生き残る事も、皇帝陛下を支援する事も不可能でございます」
やはりハリー殿は天下無敵の魔法使いのようです。
「……では何故、ミアとベンジャミンを唆すのだ」
「ただただ、従妹のミア王女殿下を心配しての事でございます。
正直に申し上げますと、ハリー様は、ライナ王女殿下をあのような目にあわせ、ミア王女殿下まで修道院入りさせると申された皇帝陛下を信じておられません。
護りに必要な魔術や魔法陣を教えるかどうかで皇帝陛下の心底を確かめ、必要とあればミア王女殿下を救い出す心心算だと思われます」
ハリーは本当にわたくしの事が好きなようですね。
「そのような秘密を口にして、シャーロットはハリーに処断されないのか」
「結果次第でございます。
私の言葉でミア王女殿下の不利になるような事があれば、処分されるでしょう。
逆にミア王女殿下の利になれば、黙認していただけます。
その程度の信頼を得ていなければ、ミア王女殿下の守護役は命じられません」
「シャーロットがそこまでする理由が分からんぞ。
黙って朕が禁止するのを見ていれば、シャーロットには何の危険も損もない。
むしろミアがハリーの元に迎えられ、ハリーはともかくミアは望みを叶えられた」
「確かにミア王女殿下は望みをかなえる事ができるでしょうが、我が主、ハリー様は皇帝陛下に逆らってミア王女殿下を攫ったという汚名を着る事になります。
臣下としてそのような事を見過ごすわけには参りません。
この点はハリー様の望みやミア王女殿下の望みとは関係ありません」
シャーロットはわたくしよりもハリー殿に忠誠を誓っているのですね。
それも、ハリー殿の命令に反する覚悟までした忠誠心です。
完全に心を許してはいけないようです。
「では、ミアに魔術書や魔法陣を読ます許可を与えれば、朕への支援を続けるだけでなく、ミアの下向も許さないと言う事だな」
「ミア殿下の安全が確保されている限り、ハリー様はミア殿下の名誉を傷つけかねない下向を許されるとは思えません」
「そこまでシャーロットが言い切るのなら、後見人を付けた上で、ミアに書物宮と宝物宮に入る許可を与える。
だがベンジャミンには与えぬ、いいな」
「恐れながら皇帝陛下に申し上げさせていただきます」
この宮位にいる限り、身分に関係なく皇帝に直答を許されているシャーロットが、皇帝に諫言する許可を求めている。
今回はどんな口舌を使って皇帝を丸め込む気なのでしょう。
「……発言を認める、話せ」
「皇帝陛下の御心配はもっともですが、残念な事に、殿下方には実際に魔術を発動させるだけの魔力がありません。
ですから、幾ら魔術や魔法陣を学ばれても皇族の争いにはならないと思われます。
しかしながら、殿下方だけで皇家に伝わる大切な資料や魔法陣を使われると、皇帝陛下の申されるように損傷させてしまうかもしれません。
そのような事態にならないように、誰か大人を後見人として付ければいいのではないでしょうか」
シャーロットがわたくしの望みを叶えようとしえくれています。
「朕を騙そうとしても無駄だぞ、シャーロット。
魔晶石や魔宝石に蓄えた魔力があれば、本人に魔力がなくても魔術が発動する。
ハリーはミアやベンジャミンを唆して皇家に伝わる魔法陣を手に入れる心算か」
ハリー殿にそのような野望があったのですね、驚きました。
妻として手助けしなければいけません。
「恐れながら皇帝陛下、ハリー様にそのような姑息な真似は不要なのでございます。
ハリー様の魔力と魔術は、既に無敵なのでございます。
そうでなければ、あのような少領の領主が、王家や周辺領主を敵に回して生き残る事も、皇帝陛下を支援する事も不可能でございます」
やはりハリー殿は天下無敵の魔法使いのようです。
「……では何故、ミアとベンジャミンを唆すのだ」
「ただただ、従妹のミア王女殿下を心配しての事でございます。
正直に申し上げますと、ハリー様は、ライナ王女殿下をあのような目にあわせ、ミア王女殿下まで修道院入りさせると申された皇帝陛下を信じておられません。
護りに必要な魔術や魔法陣を教えるかどうかで皇帝陛下の心底を確かめ、必要とあればミア王女殿下を救い出す心心算だと思われます」
ハリーは本当にわたくしの事が好きなようですね。
「そのような秘密を口にして、シャーロットはハリーに処断されないのか」
「結果次第でございます。
私の言葉でミア王女殿下の不利になるような事があれば、処分されるでしょう。
逆にミア王女殿下の利になれば、黙認していただけます。
その程度の信頼を得ていなければ、ミア王女殿下の守護役は命じられません」
「シャーロットがそこまでする理由が分からんぞ。
黙って朕が禁止するのを見ていれば、シャーロットには何の危険も損もない。
むしろミアがハリーの元に迎えられ、ハリーはともかくミアは望みを叶えられた」
「確かにミア王女殿下は望みをかなえる事ができるでしょうが、我が主、ハリー様は皇帝陛下に逆らってミア王女殿下を攫ったという汚名を着る事になります。
臣下としてそのような事を見過ごすわけには参りません。
この点はハリー様の望みやミア王女殿下の望みとは関係ありません」
シャーロットはわたくしよりもハリー殿に忠誠を誓っているのですね。
それも、ハリー殿の命令に反する覚悟までした忠誠心です。
完全に心を許してはいけないようです。
「では、ミアに魔術書や魔法陣を読ます許可を与えれば、朕への支援を続けるだけでなく、ミアの下向も許さないと言う事だな」
「ミア殿下の安全が確保されている限り、ハリー様はミア殿下の名誉を傷つけかねない下向を許されるとは思えません」
「そこまでシャーロットが言い切るのなら、後見人を付けた上で、ミアに書物宮と宝物宮に入る許可を与える。
だがベンジャミンには与えぬ、いいな」
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