13 / 14
決着
しおりを挟む
「親分、ここは俺達が何とかする。
親分は船で逃げてくれ」
「気にするな。
あいつさえ殺せば何とかなる」
鬼太郎は迂闊に近づいてきた捕り方を斬り殺すと、囲みに穴ができた。
その穴に飛び込んで、建部荒次郎の首を狙った。
いや、殺せなくてもいいのだ。
手傷を負わせることができれば、火付け盗賊改は捕り物どころではなくなる。
鬼太郎は邪魔になる小者三人を立て続けに斬り捨てた。
もはや馬上の建部荒次郎と鬼太郎の間には誰もいない。
だが馬上の建部荒次郎の方が圧倒的に有利だ。
普通ならば馬上で槍を持つ建部荒次郎に、徒士の鬼太郎が勝てるはずがない。
間合いが全く違う。
だが人殺しに慣れた鬼太郎には秘策があった。
頭の中で何度も火付け盗賊改や町奉行所と戦う事を想定していた。
地を這うように建部荒次郎に近づいた鬼太郎は、最初に手綱を斬った。
返す刀で馬の脛を断ち斬るという、信じられない剣技を見せた。
右前脚を断ち斬られた馬は、あまりの痛みに後ろ足で棹立ちになった。
手綱を斬られて不安定になっていた建部荒次郎は、馬が棹立ちになった事で馬上から投げ出されてしまった。
激しく放り出された建部荒次郎は、身動きが取れないほど身体を強打した。
鬼太郎は止めを刺そうとした。
だがそこに、常に鬼太郎を警戒していた黒鉄長太郎が割って入った。
だが黒鉄長太郎の腕では、鬼太郎を斬る事も止める事も不可能だ。
剣技が圧倒的に違う。
だが黒鉄長太郎には備えがあった。
小者の猿の音三郎達に大量の目潰しを用意させていたのだ。
剣の間合いの外から、次々と目潰しが投げつけられ、鬼太郎も辟易して、止めを刺すより逃げることを優先しようとした。
だが鬼太郎を逃がしたくない大和屋与兵衛が、店の護衛の大半を戦いに参加させ、絶対に鬼太郎を逃がさないようにした。
対談方でもある護衛が死傷すると、これからの商売に大きな影響があるが、鬼太郎を逃がす方が危険だと考えていた。
しかし鬼太郎も勝負勘が鋭い男だ。
大和屋与兵衛の周りから護衛が減ったのを見て、大和屋与兵衛を斬ろうとした。
鬼太郎の手の中には、大和屋与兵衛の次男峯次郎がいる。
峯次郎を使えば、再度の押し込みがたやすくなる。
いや、押し込まなくても身代が手に入るかもしれない。
鬼太郎の遣り口を熟知している古参幹部が、鬼太郎と行動を共にした。
残っていた護衛を引き受けて、鬼太郎が大和屋与兵衛を切れるようにした。
だが、大和屋与兵衛と多少のかかわりがある黒鉄長太郎が、身を挺して庇った。
鉄片で補強した肩で鬼太郎の剣を受けたが、鎖骨を砕かれてしまった。
だがその甲斐はあった。
身の軽い猿の音三郎が、黒鉄長太郎を斬るためにほんの少し隙ができた所を、音もたてずに背後を襲い、心臓を一突きした。
親分は船で逃げてくれ」
「気にするな。
あいつさえ殺せば何とかなる」
鬼太郎は迂闊に近づいてきた捕り方を斬り殺すと、囲みに穴ができた。
その穴に飛び込んで、建部荒次郎の首を狙った。
いや、殺せなくてもいいのだ。
手傷を負わせることができれば、火付け盗賊改は捕り物どころではなくなる。
鬼太郎は邪魔になる小者三人を立て続けに斬り捨てた。
もはや馬上の建部荒次郎と鬼太郎の間には誰もいない。
だが馬上の建部荒次郎の方が圧倒的に有利だ。
普通ならば馬上で槍を持つ建部荒次郎に、徒士の鬼太郎が勝てるはずがない。
間合いが全く違う。
だが人殺しに慣れた鬼太郎には秘策があった。
頭の中で何度も火付け盗賊改や町奉行所と戦う事を想定していた。
地を這うように建部荒次郎に近づいた鬼太郎は、最初に手綱を斬った。
返す刀で馬の脛を断ち斬るという、信じられない剣技を見せた。
右前脚を断ち斬られた馬は、あまりの痛みに後ろ足で棹立ちになった。
手綱を斬られて不安定になっていた建部荒次郎は、馬が棹立ちになった事で馬上から投げ出されてしまった。
激しく放り出された建部荒次郎は、身動きが取れないほど身体を強打した。
鬼太郎は止めを刺そうとした。
だがそこに、常に鬼太郎を警戒していた黒鉄長太郎が割って入った。
だが黒鉄長太郎の腕では、鬼太郎を斬る事も止める事も不可能だ。
剣技が圧倒的に違う。
だが黒鉄長太郎には備えがあった。
小者の猿の音三郎達に大量の目潰しを用意させていたのだ。
剣の間合いの外から、次々と目潰しが投げつけられ、鬼太郎も辟易して、止めを刺すより逃げることを優先しようとした。
だが鬼太郎を逃がしたくない大和屋与兵衛が、店の護衛の大半を戦いに参加させ、絶対に鬼太郎を逃がさないようにした。
対談方でもある護衛が死傷すると、これからの商売に大きな影響があるが、鬼太郎を逃がす方が危険だと考えていた。
しかし鬼太郎も勝負勘が鋭い男だ。
大和屋与兵衛の周りから護衛が減ったのを見て、大和屋与兵衛を斬ろうとした。
鬼太郎の手の中には、大和屋与兵衛の次男峯次郎がいる。
峯次郎を使えば、再度の押し込みがたやすくなる。
いや、押し込まなくても身代が手に入るかもしれない。
鬼太郎の遣り口を熟知している古参幹部が、鬼太郎と行動を共にした。
残っていた護衛を引き受けて、鬼太郎が大和屋与兵衛を切れるようにした。
だが、大和屋与兵衛と多少のかかわりがある黒鉄長太郎が、身を挺して庇った。
鉄片で補強した肩で鬼太郎の剣を受けたが、鎖骨を砕かれてしまった。
だがその甲斐はあった。
身の軽い猿の音三郎が、黒鉄長太郎を斬るためにほんの少し隙ができた所を、音もたてずに背後を襲い、心臓を一突きした。
0
お気に入りに追加
27
あなたにおすすめの小説


いっとう愚かで、惨めで、哀れな末路を辿るはずだった令嬢の矜持
空月
ファンタジー
古くからの名家、貴き血を継ぐローゼンベルグ家――その末子、一人娘として生まれたカトレア・ローゼンベルグは、幼い頃からの婚約者に婚約破棄され、遠方の別荘へと療養の名目で送られた。
その道中に惨めに死ぬはずだった未来を、突然現れた『バグ』によって回避して、ただの『カトレア』として生きていく話。
※悪役令嬢で婚約破棄物ですが、ざまぁもスッキリもありません。
※以前投稿していた「いっとう愚かで惨めで哀れだった令嬢の果て」改稿版です。文章量が1.5倍くらいに増えています。

【完結】夜を舞う〜捕物帳、秘密の裏家業〜
トト
歴史・時代
琴音に密かに思いを寄せる同心の犬塚。
でも犬塚は知らない。琴音こそ自分が日夜追いかけまわしている義賊ネコ娘だとは。
そして、江戸を騒がすもう一人の宿敵ネズミ小僧がネコ娘と手を組んだ。
正義か悪か、奇妙な縁で結ばれた三人の爽快時代活劇。
カクヨムで公開中のショートショート「夜を舞う」のキャラクターたちを心情豊かに肉付けした短編になります。
7番目のシャルル、狂った王国にうまれて【少年期編完結】
しんの(C.Clarté)
歴史・時代
15世紀、狂王と淫妃の間に生まれた10番目の子が王位を継ぐとは誰も予想しなかった。兄王子の連続死で、不遇な王子は14歳で王太子となり、没落する王国を背負って死と血にまみれた運命をたどる。「恩人ジャンヌ・ダルクを見捨てた暗愚」と貶される一方で、「建国以来、戦乱の絶えなかった王国にはじめて平和と正義と秩序をもたらした名君」と評価されるフランス王シャルル七世の少年時代の物語。
歴史に残された記述と、筆者が受け継いだ記憶をもとに脚色したフィクションです。
【カクヨムコン7中間選考通過】【アルファポリス第7回歴史・時代小説大賞、読者投票4位】【講談社レジェンド賞最終選考作】
※表紙絵は離雨RIU(@re_hirame)様からいただいたファンアートを使わせていただいてます。
※重複投稿しています。
カクヨム:https://kakuyomu.jp/works/16816927859447599614
小説家になろう:https://ncode.syosetu.com/n9199ey/


冷遇妻に家を売り払われていた男の裁判
七辻ゆゆ
ファンタジー
婚姻後すぐに妻を放置した男が二年ぶりに帰ると、家はなくなっていた。
「では開廷いたします」
家には10億の価値があったと主張し、妻に離縁と損害賠償を求める男。妻の口からは二年の事実が語られていく。

思わず呆れる婚約破棄
志位斗 茂家波
ファンタジー
ある国のとある夜会、その場にて、その国の王子が婚約破棄を言い渡した。
だがしかし、その内容がずさんというか、あまりにもひどいというか……呆れるしかない。
余りにもひどい内容に、思わず誰もが呆れてしまうのであった。
……ネタバレのような気がする。しかし、良い紹介分が思いつかなかった。
よくあるざまぁ系婚約破棄物ですが、第3者視点よりお送りいたします。

【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く
ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。
5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。
夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる