12 / 14
返り討ち
しおりを挟む
「火付け盗賊改め方長官、建部荒次郎である。
逆らう者は問答無用で斬る。
神妙にいたせ」
「ちぃい。
しゃらくせぇ。
皆殺しにしちまえ!」
火付け盗賊にとっては、飛んで火にいる夏の虫だった。
準備万端整えた所に、のこのこと地獄の鬼太郎がやってきた。
だがそれは、あくまで火付け盗賊改めからの見方でしかない。
火付け盗賊改めには与力同心あわせて五十人いるが、その全てをこの捕物に投入できるわけではなく、普通の捕り物では与力一騎に同心三人、与力の配下が槍持ち一人、草履取一人、若党二人、同心が小者と称する岡っ引きの親分一人と、子分の下っぴき七人ほどだ。
同心は刃引きの長脇差か十手を使う。
親分と子分は十手を持ってはいるが、実際の捕物に使うのは、専門の捕物道具は突棒、刺股、袖搦だ。
突棒は先端が鉄製でT字型になっていて、T字部分に多数の歯があり、突くだけでなく袖をからめることができる。
刺股は先端がU字型の金具がつき、U字の先で犯人の脛を突きなじり倒し、U字の股のところで首を押えた。
刺股は現代でも防犯用として改良され、国や地方で使われてることがある。
袖搦は先端が矢羽根のよう二股になっていて、二股部分に多数の釘が埋め込まれていて、袖をからめて捕える。
どうしても苦戦する時は、砂や灰など目潰しを用いることもある。
今回は腕利きの元武士や浪人五十人以上だから、長官自らが出馬し、与力四騎同心二十人、親分子分百六十人が動員された。
四倍近い人数で圧倒しようとしたものの、そうはいかなかった。
地獄の鬼太郎一味は一人一人が一騎当千の剣客だった。
全員が人を殺した事のある者ばかりだった。
それも一人二人ではなく、十人以上の人間を殺した事のあるモノ達だった。
人殺しに全く躊躇わない者達ばかりだった。
所々で囲みを破られ、大木戸を突破されてしまった。
特に地獄の鬼太郎と幹部達の暴れようは鬼人のようだった。
間合いが遠く有利なはずの捕物道具を使っている親分子分が、次々と斬る捨てられ、同心も刃引きの長脇差や十手では抵抗できず、真剣を抜いて斬り捨てようとするも、それでも返り討ちされる同心がいた。
馬上の与力が槍で助太刀するも、与力まで手傷を負う状態となった。
遂に札差大和屋与兵衛も護衛までもが戦う事になった。
逃げた地獄の鬼太郎につけ狙われる危険を排除したかったからだ。
大和屋与兵衛だけならば護衛で何とかなるが、息子や娘を狙われると護りきれないかもしれないと、大和屋与兵衛が心配したからだ。
勝敗の行方は混沌とした。
逆らう者は問答無用で斬る。
神妙にいたせ」
「ちぃい。
しゃらくせぇ。
皆殺しにしちまえ!」
火付け盗賊にとっては、飛んで火にいる夏の虫だった。
準備万端整えた所に、のこのこと地獄の鬼太郎がやってきた。
だがそれは、あくまで火付け盗賊改めからの見方でしかない。
火付け盗賊改めには与力同心あわせて五十人いるが、その全てをこの捕物に投入できるわけではなく、普通の捕り物では与力一騎に同心三人、与力の配下が槍持ち一人、草履取一人、若党二人、同心が小者と称する岡っ引きの親分一人と、子分の下っぴき七人ほどだ。
同心は刃引きの長脇差か十手を使う。
親分と子分は十手を持ってはいるが、実際の捕物に使うのは、専門の捕物道具は突棒、刺股、袖搦だ。
突棒は先端が鉄製でT字型になっていて、T字部分に多数の歯があり、突くだけでなく袖をからめることができる。
刺股は先端がU字型の金具がつき、U字の先で犯人の脛を突きなじり倒し、U字の股のところで首を押えた。
刺股は現代でも防犯用として改良され、国や地方で使われてることがある。
袖搦は先端が矢羽根のよう二股になっていて、二股部分に多数の釘が埋め込まれていて、袖をからめて捕える。
どうしても苦戦する時は、砂や灰など目潰しを用いることもある。
今回は腕利きの元武士や浪人五十人以上だから、長官自らが出馬し、与力四騎同心二十人、親分子分百六十人が動員された。
四倍近い人数で圧倒しようとしたものの、そうはいかなかった。
地獄の鬼太郎一味は一人一人が一騎当千の剣客だった。
全員が人を殺した事のある者ばかりだった。
それも一人二人ではなく、十人以上の人間を殺した事のあるモノ達だった。
人殺しに全く躊躇わない者達ばかりだった。
所々で囲みを破られ、大木戸を突破されてしまった。
特に地獄の鬼太郎と幹部達の暴れようは鬼人のようだった。
間合いが遠く有利なはずの捕物道具を使っている親分子分が、次々と斬る捨てられ、同心も刃引きの長脇差や十手では抵抗できず、真剣を抜いて斬り捨てようとするも、それでも返り討ちされる同心がいた。
馬上の与力が槍で助太刀するも、与力まで手傷を負う状態となった。
遂に札差大和屋与兵衛も護衛までもが戦う事になった。
逃げた地獄の鬼太郎につけ狙われる危険を排除したかったからだ。
大和屋与兵衛だけならば護衛で何とかなるが、息子や娘を狙われると護りきれないかもしれないと、大和屋与兵衛が心配したからだ。
勝敗の行方は混沌とした。
0
お気に入りに追加
27
あなたにおすすめの小説


【完結】夜を舞う〜捕物帳、秘密の裏家業〜
トト
歴史・時代
琴音に密かに思いを寄せる同心の犬塚。
でも犬塚は知らない。琴音こそ自分が日夜追いかけまわしている義賊ネコ娘だとは。
そして、江戸を騒がすもう一人の宿敵ネズミ小僧がネコ娘と手を組んだ。
正義か悪か、奇妙な縁で結ばれた三人の爽快時代活劇。
カクヨムで公開中のショートショート「夜を舞う」のキャラクターたちを心情豊かに肉付けした短編になります。


いっとう愚かで、惨めで、哀れな末路を辿るはずだった令嬢の矜持
空月
ファンタジー
古くからの名家、貴き血を継ぐローゼンベルグ家――その末子、一人娘として生まれたカトレア・ローゼンベルグは、幼い頃からの婚約者に婚約破棄され、遠方の別荘へと療養の名目で送られた。
その道中に惨めに死ぬはずだった未来を、突然現れた『バグ』によって回避して、ただの『カトレア』として生きていく話。
※悪役令嬢で婚約破棄物ですが、ざまぁもスッキリもありません。
※以前投稿していた「いっとう愚かで惨めで哀れだった令嬢の果て」改稿版です。文章量が1.5倍くらいに増えています。
徳川家基、不本意!
克全
歴史・時代
幻の11代将軍、徳川家基が生き残っていたらどのような世の中になっていたのか?田沼意次に取立てられて、徳川家基の住む西之丸御納戸役となっていた長谷川平蔵が、田沼意次ではなく徳川家基に取り入って出世しようとしていたらどうなっていたのか?徳川家治が、次々と死んでいく自分の子供の死因に疑念を持っていたらどうなっていたのか、そのような事を考えて創作してみました。

冷遇妻に家を売り払われていた男の裁判
七辻ゆゆ
ファンタジー
婚姻後すぐに妻を放置した男が二年ぶりに帰ると、家はなくなっていた。
「では開廷いたします」
家には10億の価値があったと主張し、妻に離縁と損害賠償を求める男。妻の口からは二年の事実が語られていく。
7番目のシャルル、狂った王国にうまれて【少年期編完結】
しんの(C.Clarté)
歴史・時代
15世紀、狂王と淫妃の間に生まれた10番目の子が王位を継ぐとは誰も予想しなかった。兄王子の連続死で、不遇な王子は14歳で王太子となり、没落する王国を背負って死と血にまみれた運命をたどる。「恩人ジャンヌ・ダルクを見捨てた暗愚」と貶される一方で、「建国以来、戦乱の絶えなかった王国にはじめて平和と正義と秩序をもたらした名君」と評価されるフランス王シャルル七世の少年時代の物語。
歴史に残された記述と、筆者が受け継いだ記憶をもとに脚色したフィクションです。
【カクヨムコン7中間選考通過】【アルファポリス第7回歴史・時代小説大賞、読者投票4位】【講談社レジェンド賞最終選考作】
※表紙絵は離雨RIU(@re_hirame)様からいただいたファンアートを使わせていただいてます。
※重複投稿しています。
カクヨム:https://kakuyomu.jp/works/16816927859447599614
小説家になろう:https://ncode.syosetu.com/n9199ey/
戦国九州三国志
谷鋭二
歴史・時代
戦国時代九州は、三つの勢力が覇権をかけて激しい争いを繰り返しました。南端の地薩摩(鹿児島)から興った鎌倉以来の名門島津氏、肥前(現在の長崎、佐賀)を基盤にした新興の龍造寺氏、そして島津同様鎌倉以来の名門で豊後(大分県)を中心とする大友家です。この物語ではこの三者の争いを主に大友家を中心に描いていきたいと思います。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる