26番目の王子に転生しました。今生こそは健康に大地を駆け回れる身体に成りたいです。

克全

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第一章

第33話:エディン大魔山の火属性竜

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神暦2492年、王国暦229年10月7日:エディン大魔山・ジェネシス視点

 俺が雑用を片付けてエディン大魔山に来られたのは、秋になってからだった。
 最側近3人の内2人は王都で大臣をしてくれている。
 残っているのは脳筋黒人美女のアンゲリカだけだ。

 これから雪が降る冬に、まだ鍛錬の足らない王国騎士団は連れて来られない。
 手練れの家臣達も、冬を越すのに食欲が増して獰猛になっている魔獣がいる、大魔境に入らせるわけにはいかない。

 これまでよく仕えてくれた他の側近達は、王国騎士団の団長を務めてくれている。
 だから今回はアンゲリカと新たに取立てた側近達を連れて行った。
 俺が実力を示した時に、最初に配下になった密偵達が新たな側近だ。

 俺はアンゲリカと100人の密偵を率いて大魔境に入った。
 少数精鋭のお陰で、王国騎士団を鍛えている時とは比べ物にならない速さで、大魔境を走破して大魔山に登ることができた。

 前世の記憶がある俺は、高山病に備えて登山をした。
 どのような難所も、魔力と魔術に任せて地形まで変えられる。
 避難所に造り替えられるようなところは全て手を入れておいた。

 密偵達は実力に合わせて、大魔山の中腹で待たせることにした。
 俺の代理を任せられる人間は多いほどいい。
 火属性竜討伐のサポートをした者なら、俺の代理人が務まる。

 途中までのサポーターだと言うのは、彼らが口にしない限り誰にも分からない。
 その点で密偵というのは適役だ。
 秘密を口にしない事が大前提の役職で、先祖代々そう言う訓練を受けてきた。

 同じ任務に当たった人間以外には任務について話さない。
 逆に言えば、同じ任務に当たった人間には話す事ができる。

 これが秘密を守るのに凄く役にたつ。
 誰にも何も話せないと言うのはとても辛い事だ。
 追い詰められた時に話せる人間が1人でもいるかいないかはとても大きい。

 そんな彼らとアンゲリカが待つのは俺が新造した横穴砦だ。
 高レベル魔獣が全力で攻撃してきたとしても、耐えられる強度の横穴だ。
 これで俺も安心して火属性竜討伐に専念できる。

 俺は高山病を防ぐために血液の成分を変えた。
 ヘモグロビン濃度を高め、血管を拡張させている。
 周囲の空気を平地と同じ酸素濃度に保つより、この方が安全だ。

 独りになった俺は空を飛んで一気に大魔山の噴火口に向かった。
 そこにいるであろう火属性竜を狩るために!

(待ってくれ、異世界からの転生者よ。
 我はまだ死にたくない、いや、死ねないのだ。
 我にはどうしてもやらなければいけない事があるのだ。
 見逃してくれるのなら其方の眷属になる、だから殺さないでくれ)

 火属性竜だと思っていた大魔山のボスに心話で話しかけられてとても驚いた。
 先史文明時代の資料では、心話は純血種竜以上しかできないはずだ。

(お前は純血種竜なのか?)

(そうだ、我は数少ない純血種竜だ。
 我には数が激減した純血種竜を増やすという大事な使命がある。
 この世界の常識から外れた、転生者に殺されるわけにはいかないのだ)

(眷属になると言われても、はいそうですかとは言えない。
 これまでお前が引き起こしたスタンピードや噴火の罰が必要だ。
 それに、純血種竜の素材はとても貴重なのだ。
 罰と利益に見合う保証してくれるのだろうな?!)

(噴火やスタンピードを起こしたのは我ではない。
 以前の噴火は我がここから追いだした火属性竜がやった事だ。
 奴はリーズ魔山に逃げたが、転生者殿に斃されてもういない。
 スタンピードは魔境にいる木属性竜がやった事で、我の責任ではない)

(証拠はあるのか?)

(火属性竜がやった噴火や火砕流の証拠と言われても困る。
 転生者殿に殺されてしまった後では証拠の示しようがない。
 ただ、下の大魔境に隠れている木属性竜の居場所は教えられる)

(木属性竜の居場所を教えたくらいでは証拠にも保証にもならない。
 他に何ができるのだ?!)

(脱皮のたびに抜け殻を渡そう)

(その程度では足らない)

(定期的に爪と歯を引き渡そう)

 純血種竜の鱗と皮、爪と牙が半永久的に手に入るのはとても大きな利になる。
 だがそれだけでは足らない。
 
 皮から人工多能性幹細胞(iPS)を作り出す事は不可能ではないだろう。
 だがもっと確実に人工多能性幹細胞(iPS)を作りだせるモノを確保したい。

(手足を切り落としてよこせとか、眼玉をえぐり取ってよこせとは言わない。
 だが、精子か卵子、血液くらいはもらわないと割に合わない。
 それと、俺の眷属になると言うのなら、俺の敵を滅ぼしてもらう。
 俺の命じる相手と戦ってもらうが、それでもいいのか?!)
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