26番目の王子に転生しました。今生こそは健康に大地を駆け回れる身体に成りたいです。

克全

文字の大きさ
上 下
46 / 60
第一章

第31話:リーズ魔山火属性竜

しおりを挟む
 今回のリーズ魔山火属性竜討伐軍の編成は俺に一任された。
 属性竜殺しの英雄となり、王太子の地位についた俺には絶大な権力がある。
 俺にできない事はない、などとは言わないが、討伐軍の編成程度なら全権がある。

 まして今回の獲物は火属性竜である。
 多くの民の命を奪い、国の根源である食糧生産力を激減させる災厄だ。
 よほど身勝手で邪悪な人間でなければ討伐のジャマはしない。

 もしそんな人間で、俺を超える権力者がいたとしても、今回はジャマしない。
 普通の人間は本能的に死を恐れる。
 現状が幸せであればあるほど死を恐れるから、権力者は俺のジャマをしない。

 俺以外の誰にもできない延命の秘術だが、表向き延命の秘術には属性竜以上に強い竜族素材が必要だと言ってあるから。

 まあ、現実には俺を超える権力者は存在しない。
 父王はいるが、人望など全くない。
 今も後宮にこもって酒池肉林の時を過ごしているだろう。

 俺が今回の討伐に動員したのは、側近10人と家臣8300人だ。
 家臣の内300人は見廻騎士団、5000人は王国騎士家の縁者だ。
 残り3000人がドロヘダ辺境伯家から召し抱えた最精鋭騎士だ。

 ここに王家王国の騎士団が8個部隊8000人加わる。
 彼らが強固な陣を組んで魔境の奥に進む。
 大量の携帯食と回復薬と治療薬を活用して奥に進む。

「先鋒騎士団はここまでだ。
 これ以上奥に進もうとすれば死傷者ができる。
 極力この砦を護って欲しいが、想定外の魔獣が現れたら撤退しろ。
 今は逃げるしかなくても、諦めずに鍛え続ければ必ず勝てる時が来る!
 無駄死にする事は断じて許さん!」

 俺は8000人の先鋒騎士団にリーズ魔境砦を護らせて奥に進んだ。
 単に火属性竜を狩るだけなら俺独りでいいが、騎士団を鍛え直し、王家王国を立て直すには必要な手間暇だ。

 先鋒騎士団を魔境の森の中に築いた砦に残して進んだ。
 彼らは俺の直臣ではなく王家王国の騎士で、指揮下に入っただけだ。

 俺は直臣の8300だけを率いて魔境を進む。
 道のない魔境に騎馬で進める道を造りながら少しずつ進む。

 森の緑はとても濃くむせ返るほど濃い緑の香りが立ち込めているが、湿度がない。
 木本体だけでなく枝やツタがジャマだが、湿度がない分体力が削られない。
 緑が濃い分だけ魔蟲や魔獣が多いが、一騎当千の家臣達なら戦える。

 楽勝とまでは行かないが、連携に気をつければ斃せない事はない。
 家臣の練度を高めるために、できるだけ手出ししないようにしている。
 俺が魔力で木々を伐採さえすれば、魔獣を斃しながら道を造ってくれる。

「魔境騎士団と近衛騎士団はここまでだ。
 セバスチャンとアンゲリカ、マッケンジー以外はここを護ってくれ。
 先日先鋒騎士団にも言ったが、今は逃げるしかなくても、諦めずに鍛え続ければ必ず勝てる時が来る!
 無駄死にする事は断じて許さん!」

「「「「「はっ!」」」」」
「極力砦を守らせていただきますが、王子に無用な心配をおかけするような事はしません、ご安心ください!」

 ドロヘダ辺境伯家出身の魔境騎士団は、十分な補給物資と予備部隊がいれば、中レベル魔獣を楽々と狩る事できた。

 高レベル魔獣でも高品質の回復薬と治療薬をふんだんに与えれば、何とか死者なしに狩る事ができた。

 リーズ魔山の中腹にある戦術的要地を堅固な砦を築けば、何とか死守できるほどの高練度騎士団だった。

 彼らが更なる高みに登れるように、主力騎士に俺が創り出した高レベル武器や防具を貸与し、騎士団員全員に高品質の回復薬と治療薬を与えた。

「ジェネシス王子、どうせ私達は属性竜と戦う時には後方に下がらせるのでしょう。
 それなら連れて行く必要などないでしょう」

 セバスチャンは俺が何を言うのか分かっていて文句を言う。
 セバスチャンにもプライドがあるから、言わずにはおられないのだろう。
 こういう時には若い頃のやんちゃな性格が頭をもたげるのだろう。

「俺が完全に独りで狩った事になってしまったら、単に王国が独裁政権になるだけでなく、誰にも政務や軍事を委任できなくなる。
 属性竜を討伐した時に、サポートや補給をしてくれたパーティーメンバーがいたとなったら、誰にも文句を言わせない代理人が生まれる。
 3人にはそんな代理人になってもらう」

「分かっていた事ではありますが、そんな重い役目は返上したいです」

「そうはいかない、属性竜狩りのパーティーメンバーにならなくても、傅役のセバスチャンは筆頭大臣になるのだ。
 どうせやらなければいけないのなら、少しでもやり易いように、箔をつけておけ」

「しかたありませんね」

「王子、私は敵と戦う以外できません」

「アンゲリカには俺の護衛以外頼まないから安心してくれていいよ」

「王子、私は魔術と魔道具の研究に専念したいのですが?」

「マッケンジー、大臣を兼任してくれるのなら、俺が狩った魔獣素材を自由に使って研究してくれていいよ」

「そういう事でしたらしかたありませんね。
 研究の片手間に大臣をさせていただきます」

「安全圏に行ってもらおう。
 属性竜がお出迎えしてくれるようだ」

 俺は3人を防御魔法陣で守りつつ遠くへ送った。
 3人なら自力で中腹の砦に戻れる位置。
 砦にいる騎士団員からは見つけられない場所だ。

 ギャアアアアアオン!

 リーズ魔山の火属性竜は、コービー港魔海水属性竜よりは賢かった。
 亜竜が俺にやられた術を知っていたのか、咆哮と同時にブレスを放ってきた。
 灼熱のブレスには、近寄っただけで人体発火しそうな熱がこもっていた。
 
 だが相手が火属性竜なのは最初から分かっていた。
 防御も攻撃も準備は整えている。
 ブレスに近づく気はないが、喰らっても大丈夫なだけの防御魔術は準備してある。

 圧縮強化攻撃水魔術弾を大量に用意してある。
 コービー港に行った時に莫大な海水を亜空間に蓄えておいた。
 純水に精製した上に氷結魔術で絶対零度にまで冷やしてある。

 ブレスを放った直後で、灼熱地獄となっている火属性竜の口に叩き込んだ。
 そのまま真直ぐ進ませて後頚部から飛び出させた。

 咽喉の奥から脛骨と頚椎神経を断ち切る。
 いや、正確には首を内部から破裂させて首と胴体を泣き別れにさせた。
 とても生命力の強い属性竜であろう、首が胴から離れたら絶命する。

 俺は火属性竜が劣化しないように亜空化に放り込んで保存した。
 自分の経穴に創った亜空間は700個以上ある。

 前世でWHOに認められた正穴は361穴だが、左右2つある経穴もあれば、WHOに認められていない奇穴が250以上もある。
 
 その経穴全てに、魔力を創り蓄える魔力器官か何でも保管できる亜空間を創り出しているので、一緒に入れておきたくないモノは違う亜空間に保管できるのだ。

 水属性は火属性に対して相克の関係なので、内部で干渉しないようのできるとはいえ、同じ亜空間には入れたくなかった。
 だから属性別に魔獣や魔力弾を保管してある。
しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

勇者パーティーにダンジョンで生贄にされました。これで上位神から押し付けられた、勇者の育成支援から解放される。

克全
ファンタジー
エドゥアルには大嫌いな役目、神与スキル『勇者の育成者』があった。力だけあって知能が低い下級神が、勇者にふさわしくない者に『勇者』スキルを与えてしまったせいで、上級神から与えられてしまったのだ。前世の知識と、それを利用して鍛えた絶大な魔力のあるエドゥアルだったが、神与スキル『勇者の育成者』には逆らえず、嫌々勇者を教育していた。だが、勇者ガブリエルは上級神の想像を絶する愚者だった。事もあろうに、エドゥアルを含む300人もの人間を生贄にして、ダンジョンの階層主を斃そうとした。流石にこのような下劣な行いをしては『勇者』スキルは消滅してしまう。対象となった勇者がいなくなれば『勇者の育成者』スキルも消滅する。自由を手に入れたエドゥアルは好き勝手に生きることにしたのだった。

少し冷めた村人少年の冒険記

mizuno sei
ファンタジー
 辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。  トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。  優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。

元外科医の俺が異世界で何が出来るだろうか?~現代医療の技術で異世界チート無双~

冒険者ギルド酒場 チューイ
ファンタジー
魔法は奇跡の力。そんな魔法と現在医療の知識と技術を持った俺が異世界でチートする。神奈川県の大和市にある冒険者ギルド酒場の冒険者タカミの話を小説にしてみました。  俺の名前は、加山タカミ。48歳独身。現在、救命救急の医師として現役バリバリ最前線で馬車馬のごとく働いている。俺の両親は、俺が幼いころバスの転落事故で俺をかばって亡くなった。その時の無念を糧に猛勉強して医師になった。俺を育ててくれた、ばーちゃんとじーちゃんも既に亡くなってしまっている。つまり、俺は天涯孤独なわけだ。職場でも患者第一主義で同僚との付き合いは仕事以外にほとんどなかった。しかし、医師としての技量は他の医師と比較しても評価は高い。別に自分以外の人が嫌いというわけでもない。つまり、ボッチ時間が長かったのである意味コミ障気味になっている。今日も相変わらず忙しい日常を過ごしている。 そんなある日、俺は一人の少女を庇って事故にあう。そして、気が付いてみれば・・・ 「俺、死んでるじゃん・・・」 目の前に現れたのは結構”チャラ”そうな自称 創造神。彼とのやり取りで俺は異世界に転生する事になった。 新たな家族と仲間と出会い、翻弄しながら異世界での生活を始める。しかし、医療水準の低い異世界。俺の新たな運命が始まった。  元外科医の加山タカミが持つ医療知識と技術で本来持つ宿命を異世界で発揮する。自分の宿命とは何か翻弄しながら異世界でチート無双する様子の物語。冒険者ギルド酒場 大和支部の冒険者の英雄譚。

転生者は冒険者となって教会と国に復讐する!

克全
ファンタジー
東洋医学従事者でアマチュア作家でもあった男が異世界に転生した。リアムと名付けられた赤子は、生まれて直ぐに極貧の両親に捨てられてしまう。捨てられたのはメタトロン教の孤児院だったが、この世界の教会孤児院は神官達が劣情のはけ口にしていた。神官達に襲われるのを嫌ったリアムは、3歳にして孤児院を脱走して大魔境に逃げ込んだ。前世の知識と創造力を駆使したリアムは、スライムを従魔とした。スライムを知識と創造力、魔力を総動員して最強魔獣に育てたリアムは、前世での唯一の後悔、子供を作ろうと10歳にして魔境を出て冒険者ギルドを訪ねた。 アルファポリスオンリー

最強の職業は解体屋です! ゴミだと思っていたエクストラスキル『解体』が実は超有能でした

服田 晃和
ファンタジー
旧題:最強の職業は『解体屋』です!〜ゴミスキルだと思ってたエクストラスキル『解体』が実は最強のスキルでした〜 大学を卒業後建築会社に就職した普通の男。しかし待っていたのは設計や現場監督なんてカッコいい職業ではなく「解体作業」だった。来る日も来る日も使わなくなった廃ビルや、人が居なくなった廃屋を解体する日々。そんなある日いつものように廃屋を解体していた男は、大量のゴミに押しつぶされてしまい突然の死を迎える。  目が覚めるとそこには自称神様の金髪美少女が立っていた。その神様からは自分の世界に戻り輪廻転生を繰り返すか、できれば剣と魔法の世界に転生して欲しいとお願いされた俺。だったら、せめてサービスしてくれないとな。それと『魔法』は絶対に使えるようにしてくれよ!なんたってファンタジーの世界なんだから!  そうして俺が転生した世界は『職業』が全ての世界。それなのに俺の職業はよく分からない『解体屋』だって?貴族の子に生まれたのに、『魔導士』じゃなきゃ追放らしい。優秀な兄は勿論『魔導士』だってさ。  まぁでもそんな俺にだって、魔法が使えるんだ!えっ?神様の不手際で魔法が使えない?嘘だろ?家族に見放され悲しい人生が待っていると思った矢先。まさかの魔法も剣も極められる最強のチート職業でした!!  魔法を使えると思って転生したのに魔法を使う為にはモンスター討伐が必須!まずはスライムから行ってみよう!そんな男の楽しい冒険ファンタジー!

おっさんなのに異世界召喚されたらしいので適当に生きてみることにした

高鉢 健太
ファンタジー
 ふと気づけば見知らぬ石造りの建物の中に居た。どうやら召喚によって異世界転移させられたらしかった。  ラノベでよくある展開に、俺は呆れたね。  もし、あと20年早ければ喜んだかもしれん。だが、アラフォーだぞ?こんなおっさんを召喚させて何をやらせる気だ。  とは思ったが、召喚した連中は俺に生贄の美少女を差し出してくれるらしいじゃないか、その役得を存分に味わいながら異世界の冒険を楽しんでやろう!

元勇者パーティーの雑用係だけど、実は最強だった〜無能と罵られ追放されたので、真の実力を隠してスローライフします〜

一ノ瀬 彩音
ファンタジー
元勇者パーティーで雑用係をしていたが、追放されてしまった。 しかし彼は本当は最強でしかも、真の実力を隠していた! 今は辺境の小さな村でひっそりと暮らしている。 そうしていると……? ※第3回HJ小説大賞一次通過作品です!

S級冒険者の子どもが進む道

干支猫
ファンタジー
【12/26完結】 とある小さな村、元冒険者の両親の下に生まれた子、ヨハン。 父親譲りの剣の才能に母親譲りの魔法の才能は両親の想定の遥か上をいく。 そうして王都の冒険者学校に入学を決め、出会った仲間と様々な学生生活を送っていった。 その中で魔族の存在にエルフの歴史を知る。そして魔王の復活を聞いた。 魔王とはいったい? ※感想に盛大なネタバレがあるので閲覧の際はご注意ください。

処理中です...