上 下
30 / 31
第1章

第30話:影武者との交渉:アラキヤストモ視点

しおりを挟む
20XX年4月19日:茶ノ木稲荷神社ダンジョン1階:荒木保知55歳視点

 俺は市ヶ谷基地にいる梅木篤信を探して戦い続けた。
 邪魔する者は問答無用で斬り殺した。

 魔術を放つ事もできるが、できれば隠しておきたい。
 表向き今のダンジョンアタッカーは外で魔術を使えない。

 少なくとも俺が転移魔術を使うまでは使えない事になっていた。
 転移魔術だけが例外的に外で使える、と思われている方が安全だ。

 俺は市ヶ谷基地の庁舎地下深くにまで攻め込んだ。
 核攻撃をされても指揮機能を失わないように、地下深くに指令室がある。

 戦術情報処理装置や戦術データ・リンクをはじめとする各種の、最新型C5Iシステムと連動している。

 梅木篤信はそこにいた!
 1番安全な場所に隠れて、家族を人質に取った人たちに戦わせていた!
 卑怯下劣な梅木篤信らしい、中学生の頃と変わらないやり口だった!

「梅木篤信、長年の恨みを晴らしてくれる!」

「ギャアアアアア!」

 一瞬で両手両足を粉砕してやった!
 痛みにのたうち回る姿をあざ笑ってやる気だった。
 だが、そのあまりに無様な姿を不審だと思った。

「本当の事を白状させてやる!」

 沸騰する怒りを何とか抑え込んで、茶ノ木稲荷神社ダンジョンに連行した。

「ヒール、正直に白状しろ、お前は梅木篤信本人か、それとも影武者か?!」

「俺様は梅木篤信だ、殺すならさっさと殺せ!」

「梅木篤信本人なら、そう簡単に死ねると思うな!
 俺も含めて、お前を恨んでいる人は星の数ほどいる。
 その人たちを代表して、死ぬよりも苦しませてやる!」

「けっ、誰が思い通りになるか!」

「エクセレントヒール、ばかが、楽には死なさないと言っただろう!
 どれほどの猛毒を飲もうと死ねないぞ。
 完全に死なない限り、心臓が止まっても5分以内なら治せるんだ。
 この世界にあるどんな毒でも死ねないのだよ!」

「ギャアアアアア!」

 再び両手足を砕き、腹を裂いて内臓を引きずりだし、腸を口に突っ込んでやった!
 激痛でケイレンする姿を見て、積み重なった恨みを少しずつ晴らしていく。
 同時に、影武者なら本当の事を白状するしかないようにした。

「エクセレントヒール、まだ始まったばかりだぞ、その程度で俺の恨みは晴れない!
 サモングール!」

「グールだと、何をする気だ?!」

「生きたままグールに貪り食われる苦痛を与えてやるよ!
 お前の子供、リョウのレベル上げのために、グールが徘徊する所に放り出された人がいる事は分かっている、同じ苦痛を味わえ!」

「ギャアアアアア!
 やめてくれ、許してくれ、殺してくれ、頼む、楽に殺してくれ!」

「だめだ、絶対に殺さない、俺が苦しんだ40年は苦しませる。
 お前らに殺された人の遺族が望む拷問を、40年間繰り返してやる。
 エクセレントヒールがあるんだ、俺の目を盗んで死ねると思うな!」

「違うんだ、俺じゃないんだ、俺は梅木篤信じゃないんだ!
 家族を人質の取られて仕方なく影武者をしているだけなんだ!
 だから許してくれ、楽に死なせてくれ!」

「助けてくれ、殺さないでくれとは言わないのか?」

「俺が裏切ったと知られたら、家族が殺される。
 それに、俺も好き勝手に色々とやってきた。
 表に出れば確実に死刑になるような事をやってきた。
 梅木篤信の天下は絶対に終わらないと思い、調子に乗っていた。
 俺は殺されても仕方がない、だが、家族は何もしていないんだ!」

「影武者を務めるくらいだから、梅木一派の事はかなり知っているな?」

「ああ、知っているが、全部じゃないぞ、梅木篤信は誰も信じていないからな」

「分かっている、知っている事を全部話せ。
 特に人質に囚われている場所は全部話せ。
 ライブ配信しているから、そこにいる梅木一派も身動きできなくなる。
 減刑する事を条件に、梅木一派から人質を取り返す事も可能だ」

「自衛官や機動隊員の家族は全員人質だ。
 階級が上の者、実力がある者の家族ほど、本人とは遠く離される。
 全ての基地や駐屯所で家族が人質になっている」

「在日米軍に救出させる!
 聞いているか梅木一派、今直ぐ人質を解放して投降しろ。
 さもないと在日米軍の精鋭がお前達を殺す!」

「待ってくれ、人質は基地や駐屯地だけにいるんじゃない。
 自衛隊や機動隊専用のダンジョンはもちろん、一般開放されているダンジョンのセーフティーゾーンにも捕らわれている。
 ここ、茶ノ木稲荷神社ダンジョン50階にも捕らわれている。
 まず間違いなく、基地や駐屯地、ダンジョン以外の場所にも捕らえられている。
 俺の家族なら、想像もつかない場所に捕らえられているだろう……」

「それで良く正直に話したな?」

「40年も拷問されるのに耐えられなかったのが1番の理由だ。
 だが、ショウヘイなら家族を探し出して助けてくれるかもしれないとも思った。
 何とか家族を助けてもらえないだろうか?」

「分かった、必ず助けるとは約束できないが、できるだけの事をしよう。
 このライブ配信を観ている者に頼む、この部分を拡散してくれ。
 梅木篤信が人質にしている家族を助けてくれた者には若返りの魔術をかける。
 いつでも若返り魔術を使える権利を与える。
 若返り魔術を売買する事も許すから、今直ぐ人質の救出を頼む。
 日本中にある、防衛省と警視庁の庁舎、基地、駐屯地、警察署、ダンジョンに捕らえられている人質を救出してくれ。
 今人質を捕らえている梅木一派にも、人質を解放したら若返り魔術をかける権利を与える、だから今直ぐ自首しろ!」

★★★★★★

もしよければお気に入り登録と❤をお願いします。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

転生者は冒険者となって教会と国に復讐する!

克全
ファンタジー
東洋医学従事者でアマチュア作家でもあった男が異世界に転生した。リアムと名付けられた赤子は、生まれて直ぐに極貧の両親に捨てられてしまう。捨てられたのはメタトロン教の孤児院だったが、この世界の教会孤児院は神官達が劣情のはけ口にしていた。神官達に襲われるのを嫌ったリアムは、3歳にして孤児院を脱走して大魔境に逃げ込んだ。前世の知識と創造力を駆使したリアムは、スライムを従魔とした。スライムを知識と創造力、魔力を総動員して最強魔獣に育てたリアムは、前世での唯一の後悔、子供を作ろうと10歳にして魔境を出て冒険者ギルドを訪ねた。 アルファポリスオンリー

死にたくない、若返りたい、人生やり直したい、還暦親父の異世界チート無双冒険譚

克全
ファンタジー
田中実は60歳を前にして少し心を病んでいた。父親と祖母を60歳で亡くした田中実は、自分も60歳で死ぬのだと思ってしまった。死にたくない、死ぬのが怖い、永遠に生きたいと思った田中実は、異世界行く方法を真剣に探した。過去に神隠しが起ったと言われている場所を巡り続け、ついに異世界に行ける場所を探し当てた。異世界に行って不老不死になる方法があるかと聞いたら、あると言われたが、莫大なお金が必要だとも言われた。田中実は異世界と現世を行き来して金儲けをしようとした。ところが、金儲け以前に現世の神の力が異世界で使える事が分かり、異世界でとんでもない力を発揮するのだった。

世界最強の勇者は伯爵家の三男に転生し、落ちこぼれと疎まれるが、無自覚に無双する

平山和人
ファンタジー
世界最強の勇者と称えられる勇者アベルは、新たな人生を歩むべく今の人生を捨て、伯爵家の三男に転生する。 しかしアベルは忌み子と疎まれており、優秀な双子の兄たちと比べられ、学校や屋敷の人たちからは落ちこぼれと蔑まれる散々な日々を送っていた。 だが、彼らは知らなかったアベルが最強の勇者であり、自分たちとは遥かにレベルが違うから真の実力がわからないことに。 そんなことも知らずにアベルは自覚なく最強の力を振るい、世界中を驚かせるのであった。

金貨増殖バグが止まらないので、そのまま快適なスローライフを送ります

桜井正宗
ファンタジー
 無能の落ちこぼれと認定された『ギルド職員』兼『ぷちドラゴン』使いの『ぷちテイマー』のヘンリーは、職員をクビとなり、国さえも追放されてしまう。  突然、空から女の子が降ってくると、キャッチしきれず女の子を地面へ激突させてしまう。それが聖女との出会いだった。  銀髪の自称聖女から『ギフト』を貰い、ヘンリーは、両手に持てない程の金貨を大量に手に入れた。これで一生遊んで暮らせると思いきや、金貨はどんどん増えていく。増殖が止まらない金貨。どんどん増えていってしまった。  聖女によれば“金貨増殖バグ”だという。幸い、元ギルド職員の権限でアイテムボックス量は無駄に多く持っていたので、そこへ保管しまくった。  大金持ちになったヘンリーは、とりあえず念願だった屋敷を買い……スローライフを始めていく!?

クラス転移で無能判定されて追放されたけど、努力してSSランクのチートスキルに進化しました~【生命付与】スキルで異世界を自由に楽しみます~

いちまる
ファンタジー
ある日、クラスごと異世界に召喚されてしまった少年、天羽イオリ。 他のクラスメートが強力なスキルを発現させてゆく中、イオリだけが最低ランクのEランクスキル【生命付与】の持ち主だと鑑定される。 「無能は不要だ」と判断した他の生徒や、召喚した張本人である神官によって、イオリは追放され、川に突き落とされた。 しかしそこで、川底に沈んでいた謎の男の力でスキルを強化するチャンスを得た――。 1千年の努力とともに、イオリのスキルはSSランクへと進化! 自分を拾ってくれた田舎町のアイテムショップで、チートスキルをフル稼働! 「転移者が世界を良くする?」 「知らねえよ、俺は異世界を自由気ままに楽しむんだ!」 追放された少年の第2の人生が、始まる――! ※本作品は他サイト様でも掲載中です。

【完結】ご都合主義で生きてます。-商売の力で世界を変える。カスタマイズ可能なストレージで世の中を変えていく-

ジェルミ
ファンタジー
28歳でこの世を去った佐藤は、異世界の女神により転移を誘われる。 その条件として女神に『面白楽しく生活でき、苦労をせずお金を稼いで生きていくスキルがほしい』と無理難題を言うのだった。 困った女神が授けたのは、想像した事を実現できる創生魔法だった。 この味気ない世界を、創生魔法とカスタマイズ可能なストレージを使い、美味しくなる調味料や料理を作り世界を変えて行く。 はい、ご注文は? 調味料、それとも武器ですか? カスタマイズ可能なストレージで世の中を変えていく。 村を開拓し仲間を集め国を巻き込む産業を起こす。 いずれは世界へ通じる道を繋げるために。 ※本作はカクヨム様にも掲載しております。

弓使いの成り上がり~「弓なんて役に立たない」と追放された弓使いは実は最強の狙撃手でした~

平山和人
ファンタジー
弓使いのカイトはSランクパーティー【黄金の獅子王】から、弓使いなんて役立たずと追放される。 しかし、彼らは気づいてなかった。カイトの狙撃がパーティーの危機をいくつも救った来たことに、カイトの狙撃が世界最強レベルだということに。 パーティーを追放されたカイトは自らも自覚していない狙撃で魔物を倒し、美少女から惚れられ、やがて最強の狙撃手として世界中に名を轟かせていくことになる。 一方、カイトを失った【黄金の獅子王】は没落の道を歩むことになるのであった。

転生貴族のハーレムチート生活 【400万ポイント突破】

ゼクト
ファンタジー
ファンタジー大賞に応募中です。 ぜひ投票お願いします ある日、神崎優斗は川でおぼれているおばあちゃんを助けようとして川の中にある岩にあたりおばあちゃんは助けられたが死んでしまったそれをたまたま地球を見ていた創造神が転生をさせてくれることになりいろいろな神の加護をもらい今貴族の子として転生するのであった 【不定期になると思います まだはじめたばかりなのでアドバイスなどどんどんコメントしてください。ノベルバ、小説家になろう、カクヨムにも同じ作品を投稿しているので、気が向いたら、そちらもお願いします。 累計400万ポイント突破しました。 応援ありがとうございます。】 ツイッター始めました→ゼクト  @VEUu26CiB0OpjtL

処理中です...