上 下
6 / 31
第1章

第6話:お母さん:チバミユキ視点

しおりを挟む
20XX年4月1日:伏見神社ダンジョン99階:千葉深雪20歳視点

 ダンジョンの外では力が限られてしまいますが、それでも全力をだしました。
 お母さんが殺されるかもしれないと言われたら、休んでなどいられません。
 殺されなくても、嘘の証言をさせようと人質にされるかもしれません。

「お母さん、助かるから、必ず助かるから、私を信じて」

 分かっています、本当は分かっているのです。
 リョウ達がお母さんを殺す事も人質にする事もありません。
 お母さんは……もう長くない……そんなお母さんを利用したりしない。

 私は、ショウヘイおじさんの言う通りにする事で、おじさんが絶対に裏切れないようにしているのです、ずるい方法をとっているのです!

 どんな身勝手な方法を使ってでも、お母さんを助けたい!
 佐那ちゃんを助けてくれたショウヘイおじさんなら、助けてくれるかもしれない。

 ダンジョン病の権威と言われている先生から、もう長くないと言われてしまったお母さんを、助けてくれるかもしれない!

「がんばったな、こんなに早く帰って来るとは思わなかった」

 佐那ちゃんの時と同じ場所、病院近くの人目の少ない公園に入ったとたん、目の前の風景がダンジョンに変わりました。
 それに気がつく前に、ショウヘイおじさんが声をかけてくれました。

「ここはどこですか?」

「延命用の部屋だ」

「延命用の部屋、あ、佐那ちゃん」

「お姉ちゃん、お帰りなさい」

 お帰りなさいって、ここは私達の家じゃないのよ。

「佐那ちゃん、そちらの方は?」

 立ち上がって私に声をかけてくれた佐那ちゃんの後ろにはベッドがあり、誰かが寝ているのですが、もしかして……

「ショウヘイおじさんのお母さんだよ」

「申し訳ありません、お母様の病室を使わせてくださって」

「気にするな、寝たきりだから誰が一緒でも分からない。
 深雪と佐那がお母さん側にいるだけで、俺の母親に何かあっても分かる。
 その分だけ俺が自由に動けるから、臨床実験に使うドロップを集められる」

「お姉ちゃん、ショウヘイおじさんの快復魔術は凄いんだよ!
 ショウヘイおじさんのお母さんを25年も延命しているの!
 それも、身体が弱らないの、若々しいままなの!」

「それは大げさだ、多少は老化を止めているが、完全に止めている訳じゃない。
 深雪、お母さんをそのベッドに寝かせてあげろ。
 俺の手造りベッドだから見た目は悪いが、寝心地は良いぞ」

「あ、はい、ありがとうございます、毛布なのですか?」

「ああ、シーツはドロップしないからな」

「ドロップの毛皮を毛布にされたのですか?」

「ああ、キングホワイトウルフの毛皮を手縫いした」

「え、キングホワイトウルフ、ウルフのキングクラスなんて何階に出るのですか?!
 世界中のどのダンジョンでもキングクラスなんて出てきていません!
 ダンジョンモンスター学会も認定していませんよ?!」

「ダンジョンモンスター学会なんて知らないが、鑑定魔術を使えばわかるだろう?」

「鑑定魔術、そんな魔術、世界中の誰も会得していません!」

「10年ダンジョンで暮らせば、命懸けで挑めば、自然と身に付く」

「ダンジョンが世界に現れて30年、その時から挑み続けている人でも、誰1人会得していません!」

「それは通いでダンジョンに挑んでいるからだ。
 全てを賭けてダンジョンで暮らせば、10年で会得できる。
 俺が会得できたんだから間違いない」

「それは、ダンジョンで10年暮らしたら、私でも鑑定魔術を会得できるという事ですか?」

「当然だ、鑑定だけでなく、エクセレントヒールも会得できる。
 おしゃべりはここまでだ、お母さんに延命魔術をかけるぞ」

「あ、はい、お願いします」

「発病2年までのダンジョン病は、グリーンドラゴンの血とエクセレントヒールだけで治せるが、発病2年以上のダンジョン病だと延命しかできない」

 説明しながらショウヘイおじさんがお母さんに血を飲ませてくれます。
 外に持ち出したら1億や2億の値段は軽くつきます。
 いえ、名声と莫大な富を得たダンジョンアタッカーの多くがダンジョン病です。

 彼らなら、グリーンドラゴンの血とエクセレントヒールの治療を組み合わせたら、100億でも200億でも払うでしょう。

「人間での臨床実験は俺の母親だけだが、ダンジョンモンスターを使った臨床実験は5000体以上やっているから間違いない」

 お母さんの身体が緑色に光り輝きました!
 佐那ちゃんの時には光っていなかったのですが?
 え、え、え、いつまで光り続けるのですか?!

「心配しなくていい、ダンジョン病を発症してから長い年月が立った者を延命するには、身体をむしばんだダンジョン病の影響を消さなければならない。
 消すまでに時間がかかるのだが、その間光っているんだ」

★★★★★★

 646:名無しW
 25年のダンジョン病を延命できるなんて、本当だと思うか!

 647:名無しX
 わからん、分からんが、できれば良いと思っている。

 648:なんちゃって賢者
 ドローンの配信が義務付けられた20年前から見ているが、ショウヘイが嘘を言った事は1度もないぞ。

 649:名無しD
 俺もにわかだが、ショウヘイは嘘をつかない気がする。

 650:シッタカ
 ショウヘイのダンジョンスキルは賢者なんじゃないのか?

 651:銀仮面
 何度聞いても答えてくれなかったが、そうかもしれないな。

 652:お天道様
 職業なんて何でもいい、行いが賢者なのだから。

 653:内部告発者A(うら若き乙女)
 え、あ、うそ、鑑定魔術なんてあるの?!

 654:シッタカ
 賢者のショウヘイなら持っていて当然だろう?

 655:なんちゃって賢者
 いや、本当に賢者かどうかは分からないから。

 656:内部告発者A(うら若き乙女)
 本者の賢者がいたら嫌なの?

 657:なんちゃって賢者
 ……ちょっとだけ嫌だ。

 648:名無しW
 だったら、なんちゃって賢者も10年間ダンジョンに籠ったら?

 659:なんちゃって賢者
 初日に死ぬわ!

 660:シッタカ
 治療費に100億だと、本当にそれだけ払う奴がいるのかよ?

 661:名無しA
 最初期からダンジョンの潜り続けている最古参なら、簡単に払えるさ。

 662:名無しB
 そうだな、年間所得が公表される国だと、100億くらいは普通だよな。

 663:名無しW
 治療がはじまるぞ、集中しろ。

 664:名無しX
 いや、俺達が集中しても意味ないから。

 665:お天道様
 ……深雪ちゃんのお母さん、緑に光っている。

 666:シッタカ
 ショウヘイも言っているじゃないか、治療の効果だよ。

 667:なんちゃって賢者
 いや、治療の効果だろうと、人間は自分で光らないぞ!

 668:銀仮面
 ダンジョンの中の事を外の常識ではかるのはやめろ、無意味だ。

 669:ザマア好き
 そんな事より復讐はどうなっているの、みんなで復讐するのよ!
 リョウや元事務次官の父親、マスゴミを潰さないと深雪が外に出られないのよ!

 670:シッタカ
 ダンジョンの中に籠っていた方が幸せな気がしてきたのだが……

 671:ホワイトナイト
It's okay, don't worry, not only the Foreign Correspondents' Association of Japan but also the US government has decided to lodge a formal protest with the Japanese government.
(だいじょうぶだ、安心しろ、日本外国特派員協会だけでなく、アメリカ政府も日本政府に正式な抗議をする事になった)

 672:名無しのドイツ人A
What's the big deal? Are you going to let Shohei immigrate to America? !
Let Shohei immigrate to Germany!
(何がだいじょうぶだ、ショウヘイをアメリカに移民させる気だろう?!
 ショウヘイはドイツに移民させるんだ!)

 673:名無しの中国人A
笨蛋,让翔平以中共贵族的身份移民吧。
我不会让你来惹我的!
(愚かな、ショウヘイは中国共産党の貴族として移民してもらう。
 お前達には手出しさせない!)

 674:名無しのフランス人A(パリジェンヌ)
Non, la France accueillera Shohei !
En tant que successeur légitime de l’Empire romain, la France est le pays parfait pour Shohei !
(いえ、ショウヘイを迎えるのはフランスよ!
 ローマ帝国の正統なる後継国、フランスこそショウヘイに相応しい国よ!)

 675:なんちゃって賢者
 こいつら、どうやってショウヘイをダンジョンから引っ張り出す気だ?

★★★★★★

もしよければお気に入り登録と❤をお願いします。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

[完結]回復魔法しか使えない私が勇者パーティを追放されたが他の魔法を覚えたら最強魔法使いになりました

mikadozero
ファンタジー
3月19日 HOTランキング4位ありがとうございます。三月二十日HOTランキング2位ありがとうございます。 ーーーーーーーーーーーーー エマは突然勇者パーティから「お前はパーティを抜けろ」と言われて追放されたエマは生きる希望を失う。 そんなところにある老人が助け舟を出す。 そのチャンスをエマは自分のものに変えようと努力をする。 努力をすると、結果がついてくるそう思い毎日を過ごしていた。 エマは一人前の冒険者になろうとしていたのだった。

【完結】【勇者】の称号が無かった美少年は王宮を追放されたのでのんびり異世界を謳歌する

雪雪ノ雪
ファンタジー
ある日、突然学校にいた人全員が【勇者】として召喚された。 その召喚に巻き込まれた少年柊茜は、1人だけ【勇者】の称号がなかった。 代わりにあったのは【ラグナロク】という【固有exスキル】。 それを見た柊茜は 「あー....このスキルのせいで【勇者】の称号がなかったのかー。まぁ、ス・ラ・イ・厶・に【勇者】って称号とか合わないからなぁ…」 【勇者】の称号が無かった柊茜は、王宮を追放されてしまう。 追放されてしまった柊茜は、特に慌てる事もなくのんびり異世界を謳歌する..........たぶん….... 主人公は男の娘です 基本主人公が自分を表す時は「私」と表現します

王宮で汚職を告発したら逆に指名手配されて殺されかけたけど、たまたま出会ったメイドロボに転生者の技術力を借りて反撃します

有賀冬馬
ファンタジー
王国貴族ヘンリー・レンは大臣と宰相の汚職を告発したが、逆に濡れ衣を着せられてしまい、追われる身になってしまう。 妻は宰相側に寝返り、ヘンリーは女性不信になってしまう。 さらに差し向けられた追手によって左腕切断、毒、呪い状態という満身創痍で、命からがら雪山に逃げ込む。 そこで力尽き、倒れたヘンリーを助けたのは、奇妙なメイド型アンドロイドだった。 そのアンドロイドは、かつて大賢者と呼ばれた転生者の技術で作られたメイドロボだったのだ。 現代知識チートと魔法の融合技術で作られた義手を与えられたヘンリーが、独立勢力となって王国の悪を蹴散らしていく!

最強幼女は惰眠を求む! 〜神々のお節介で幼女になったが、悠々自適な自堕落ライフを送りたい〜

フウ
ファンタジー
※30話あたりで、タイトルにあるお節介があります。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー これは、最強な幼女が気の赴くままに自堕落ライフを手に入を手に入れる物語。 「……そこまでテンプレ守らなくていいんだよ!?」 絶叫から始まる異世界暗躍! レッツ裏世界の頂点へ!! 異世界に召喚されながらも神様達の思い込みから巻き込まれた事が発覚、お詫びにユニークスキルを授けて貰ったのだが… 「このスキル、チートすぎじゃないですか?」 ちょろ神様が力を込めすぎた結果ユニークスキルは、神の域へ昇格していた!! これは、そんな公式チートスキルを駆使し異世界で成り上が……らない!? 「圧倒的な力で復讐を成し遂げる?メンド臭いんで結構です。 そんな事なら怠惰に毎日を過ごす為に金の力で裏から世界を支配します!」 そんな唐突に発想が飛躍した主人公が裏から世界を牛耳る物語です。 ※やっぱり成り上がってるじゃねぇか。 と思われたそこの方……そこは見なかった事にした下さい。 この小説は「小説家になろう」 「カクヨム」でも公開しております。 上記サイトでは完結済みです。 上記サイトでの総PV1000万越え!

二人分働いてたのに、「聖女はもう時代遅れ。これからはヒーラーの時代」と言われてクビにされました。でも、ヒーラーは防御魔法を使えませんよ?

小平ニコ
ファンタジー
「ディーナ。お前には今日で、俺たちのパーティーを抜けてもらう。異論は受け付けない」  勇者ラジアスはそう言い、私をパーティーから追放した。……異論がないわけではなかったが、もうずっと前に僧侶と戦士がパーティーを離脱し、必死になって彼らの抜けた穴を埋めていた私としては、自分から頭を下げてまでパーティーに残りたいとは思わなかった。  ほとんど喧嘩別れのような形で勇者パーティーを脱退した私は、故郷には帰らず、戦闘もこなせる武闘派聖女としての力を活かし、賞金首狩りをして生活費を稼いでいた。  そんなある日のこと。  何気なく見た新聞の一面に、驚くべき記事が載っていた。 『勇者パーティー、またも敗走! 魔王軍四天王の前に、なすすべなし!』  どうやら、私がいなくなった後の勇者パーティーは、うまく機能していないらしい。最新の回復職である『ヒーラー』を仲間に加えるって言ってたから、心配ないと思ってたのに。  ……あれ、もしかして『ヒーラー』って、完全に回復に特化した職業で、聖女みたいに、防御の結界を張ることはできないのかしら?  私がその可能性に思い至った頃。  勇者ラジアスもまた、自分の判断が間違っていたことに気がついた。  そして勇者ラジアスは、再び私の前に姿を現したのだった……

みそっかす銀狐(シルバーフォックス)、家族を探す旅に出る

伽羅
ファンタジー
三つ子で生まれた銀狐の獣人シリル。一人だけ体が小さく人型に変化しても赤ん坊のままだった。 それでも親子で仲良く暮らしていた獣人の里が人間に襲撃される。 兄達を助ける為に囮になったシリルは逃げる途中で崖から川に転落して流されてしまう。 何とか一命を取り留めたシリルは家族を探す旅に出るのだった…。

ハズレスキル【収納】のせいで実家を追放されたが、全てを収納できるチートスキルでした。今更土下座してももう遅い

平山和人
ファンタジー
侯爵家の三男であるカイトが成人の儀で授けられたスキルは【収納】であった。アイテムボックスの下位互換だと、家族からも見放され、カイトは家を追放されることになった。 ダンジョンをさまよい、魔物に襲われ死ぬと思われた時、カイトは【収納】の真の力に気づく。【収納】は魔物や魔法を吸収し、さらには異世界の飲食物を取り寄せることができるチートスキルであったのだ。 かくして自由になったカイトは世界中を自由気ままに旅することになった。一方、カイトの家族は彼の活躍を耳にしてカイトに戻ってくるように土下座してくるがもう遅い。

大器晩成エンチャンター~Sランク冒険者パーティから追放されてしまったが、追放後の成長度合いが凄くて世界最強になる

遠野紫
ファンタジー
「な、なんでだよ……今まで一緒に頑張って来たろ……?」 「頑張って来たのは俺たちだよ……お前はお荷物だ。サザン、お前にはパーティから抜けてもらう」 S級冒険者パーティのエンチャンターであるサザンは或る時、パーティリーダーから追放を言い渡されてしまう。 村の仲良し四人で結成したパーティだったが、サザンだけはなぜか実力が伸びなかったのだ。他のメンバーに追いつくために日々努力を重ねたサザンだったが結局報われることは無く追放されてしまった。 しかしサザンはレアスキル『大器晩成』を持っていたため、ある時突然その強さが解放されたのだった。 とてつもない成長率を手にしたサザンの最強エンチャンターへの道が今始まる。

処理中です...