土魔法で富国強兵?

克全

文字の大きさ
上 下
72 / 90
発展の章

汚職役人(第三者視点)

しおりを挟む
 日本政府は潤沢となった国家予算を使って、防衛力の強化に取り組んだ。
 北東大国と半島国との領海問題でも多少の撃墜や撃沈はあるが、大陸大国との領土領海問題では、艦隊が壊滅しているのだ。
 報復を警戒して防衛力を強化するのは、国民の不安を解消する為にも、絶対必要な事だった。
 だが同時に、膨れ上がった国債の返済をしなければならない。
 これは佐藤一朗の強い強い願いだったので、絶対に無碍には出来なかった。

 何故なら、佐藤一朗傘下のマスコミは、国防と赤字予算の解消が出来ないようでは、日本の指導者としての資格なし、という論陣を張っていたのだ。
 もしこれに従わなければ、現内閣を終わらせて、自分達の意を汲んでくれる内閣に代えようとするだろう。
 それどころか、野党に政権をゆだねる決意をするかもしれない。
 今の日本で佐藤一朗に逆らう事は、清廉潔白な聖人君子以外は不可能だった。

 だから日本政府は、年間予算の健全化を図った。
 赤字国債はもちろん、建設国債も新規発行を認めなかった。
 財務省を始めとする、各省庁が激烈な抵抗を示したが、佐藤一朗傘下のマスコミが官僚の不正を調べ上げ、裁判を起こしたからたまらない。
 今迄のように政府や司法に任せるのではなく、一国民として、憲法の国民平等を前提に、役人が国に与えた損害を国民が訴える形をとった。

 三権分立の建前から、司法は役人の処罰を避けたが、マスコミはその裁判官の思想を調査して暴き、過去の些細な犯罪や違反まで調べ上げ、辞職するまでする叩きに叩いた。
 過去のマス塵と同じ手法を使ったが、反日の為ではなく、役人の不正犯罪を隠蔽しようとする、同じく役人である裁判官を断罪するのに使われた。

 市民裁判である。
 フランス革命時の狂気に満ちた市民裁判。
 共産主義下のモスクワ裁判。
 本来なら絶対にやってはならない裁判だ。

 だが佐藤一朗は、日本の赤字国債を完済し、同時に国防力を高め、さらに景気を減退させないためには、断じて行わなければいけないと考えたのだ。
 そしてそれは功を奏した。
 新規国債を発行しない緊縮財政だったが、大幅に増えた税収の御陰で、前年と同じ予算を確保した上に、年間十億円の赤字国債を返済出来ていた。

 それが可能なのは、佐藤一朗の積極投資の御陰だった。
 各研究開発に膨大な予算を投入した事で、日本の研究開発は著しく進み、研究職員の生活も安定した。
 地熱発電所の大量建造により、建設業は未曾有の好景気となり、下請け孫請け曾孫請けに至るまで、等しくその利益を享受できた。
 何故なら、下請け孫請け曾孫請けに不当な待遇をした企業は、情け容赦なく叩き潰されたからだ。

 こういう場合の佐藤一朗の報復は、全く情け容赦がない。
 圧力をかけられる、ありとあらゆるところに連絡を取り、徹底的に潰しをかけるのだ。
 しかもマスコミはもちろん、ネットも使っても過去現在の不正犯罪を調べるのだから、必ず刑務所送りとなってしまう。

 日本国民の大半が、等しく好景気を享受する事が出来ていた。
しおりを挟む
感想 7

あなたにおすすめの小説

(完)なにも死ぬことないでしょう?

青空一夏
恋愛
ジュリエットはイリスィオス・ケビン公爵に一目惚れされて子爵家から嫁いできた美しい娘。イリスィオスは初めこそ優しかったものの、二人の愛人を離れに住まわせるようになった。 悩むジュリエットは悲しみのあまり湖に身を投げて死のうとしたが死にきれず昏睡状態になる。前世を昏睡状態で思い出したジュリエットは自分が日本という国で生きていたことを思い出す。還暦手前まで生きた記憶が不意に蘇ったのだ。 若い頃はいろいろな趣味を持ち、男性からもモテた彼女の名は真理。結婚もし子供も産み、いろいろな経験もしてきた真理は知っている。 『亭主、元気で留守がいい』ということを。 だったらこの状況って超ラッキーだわ♪ イケてるおばさん真理(外見は20代前半のジュリエット)がくりひろげるはちゃめちゃコメディー。 ゆるふわ設定ご都合主義。気分転換にどうぞ。初めはシリアス?ですが、途中からコメディーになります。中世ヨーロッパ風ですが和のテイストも混じり合う異世界。 昭和の懐かしい世界が広がります。懐かしい言葉あり。解説付き。

悪意のパーティー《完結》

アーエル
ファンタジー
私が目を覚ましたのは王城で行われたパーティーで毒を盛られてから1年になろうかという時期でした。 ある意味でダークな内容です ‪☆他社でも公開

極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~

恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」 そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。 私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。 葵は私のことを本当はどう思ってるの? 私は葵のことをどう思ってるの? 意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。 こうなったら確かめなくちゃ! 葵の気持ちも、自分の気持ちも! だけど甘い誘惑が多すぎて―― ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。

我が家に子犬がやって来た!

もも野はち助(旧ハチ助)
ファンタジー
【あらすじ】ラテール伯爵家の令嬢フィリアナは、仕事で帰宅できない父の状況に不満を抱きながら、自身の6歳の誕生日を迎えていた。すると、遅くに帰宅した父が白黒でフワフワな毛をした足の太い子犬を連れ帰る。子犬の飼い主はある高貴な人物らしいが、訳あってラテール家で面倒を見る事になったそうだ。その子犬を自身の誕生日プレゼントだと勘違いしたフィリアナは、兄ロアルドと取り合いながら、可愛がり始める。子犬はすでに名前が決まっており『アルス』といった。 アルスは当初かなり周囲の人間を警戒していたのだが、フィリアナとロアルドが甲斐甲斐しく世話をする事で、すぐに二人と打ち解ける。 だがそんな子犬のアルスには、ある重大な秘密があって……。 この話は、子犬と戯れながら巻き込まれ成長をしていく兄妹の物語。 ※全102話で完結済。 ★『小説家になろう』でも読めます★

「魔道具の燃料でしかない」と言われた聖女が追い出されたので、結界は消えます

七辻ゆゆ
ファンタジー
聖女ミュゼの仕事は魔道具に力を注ぐだけだ。そうして国を覆う大結界が発動している。 「ルーチェは魔道具に力を注げる上、癒やしの力まで持っている、まさに聖女だ。燃料でしかない平民のおまえとは比べようもない」 そう言われて、ミュゼは城を追い出された。 しかし城から出たことのなかったミュゼが外の世界に恐怖した結果、自力で結界を張れるようになっていた。 そしてミュゼが力を注がなくなった大結界は力を失い……

従妹を甘やかす婚約者に意趣返しするお話

下菊みこと
恋愛
従兄と結託してやり返すお話。 元サヤではありません。 御都合主義のハッピーエンドです。 小説家になろう様でも投稿しています。

悪役令嬢にざまぁされた王子のその後

柚木崎 史乃
ファンタジー
王子アルフレッドは、婚約者である侯爵令嬢レティシアに窃盗の濡れ衣を着せ陥れようとした罪で父王から廃嫡を言い渡され、国外に追放された。 その後、炭鉱の町で鉱夫として働くアルフレッドは反省するどころかレティシアや彼女の味方をした弟への恨みを募らせていく。 そんなある日、アルフレッドは行く当てのない訳ありの少女マリエルを拾う。 マリエルを養子として迎え、共に生活するうちにアルフレッドはやがて自身の過去の過ちを猛省するようになり改心していった。 人生がいい方向に変わったように見えたが……平穏な生活は長く続かず、事態は思わぬ方向へ動き出したのだった。

あるところに嫌われ者のお姫様がいた。

下菊みこと
ファンタジー
家族のやり直しのお話。 御都合主義のハッピーエンド。 小説家になろう様でも投稿しています。

処理中です...