土魔法で富国強兵?

克全

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発展の章

汚職役人(第三者視点)

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 日本政府は潤沢となった国家予算を使って、防衛力の強化に取り組んだ。
 北東大国と半島国との領海問題でも多少の撃墜や撃沈はあるが、大陸大国との領土領海問題では、艦隊が壊滅しているのだ。
 報復を警戒して防衛力を強化するのは、国民の不安を解消する為にも、絶対必要な事だった。
 だが同時に、膨れ上がった国債の返済をしなければならない。
 これは佐藤一朗の強い強い願いだったので、絶対に無碍には出来なかった。

 何故なら、佐藤一朗傘下のマスコミは、国防と赤字予算の解消が出来ないようでは、日本の指導者としての資格なし、という論陣を張っていたのだ。
 もしこれに従わなければ、現内閣を終わらせて、自分達の意を汲んでくれる内閣に代えようとするだろう。
 それどころか、野党に政権をゆだねる決意をするかもしれない。
 今の日本で佐藤一朗に逆らう事は、清廉潔白な聖人君子以外は不可能だった。

 だから日本政府は、年間予算の健全化を図った。
 赤字国債はもちろん、建設国債も新規発行を認めなかった。
 財務省を始めとする、各省庁が激烈な抵抗を示したが、佐藤一朗傘下のマスコミが官僚の不正を調べ上げ、裁判を起こしたからたまらない。
 今迄のように政府や司法に任せるのではなく、一国民として、憲法の国民平等を前提に、役人が国に与えた損害を国民が訴える形をとった。

 三権分立の建前から、司法は役人の処罰を避けたが、マスコミはその裁判官の思想を調査して暴き、過去の些細な犯罪や違反まで調べ上げ、辞職するまでする叩きに叩いた。
 過去のマス塵と同じ手法を使ったが、反日の為ではなく、役人の不正犯罪を隠蔽しようとする、同じく役人である裁判官を断罪するのに使われた。

 市民裁判である。
 フランス革命時の狂気に満ちた市民裁判。
 共産主義下のモスクワ裁判。
 本来なら絶対にやってはならない裁判だ。

 だが佐藤一朗は、日本の赤字国債を完済し、同時に国防力を高め、さらに景気を減退させないためには、断じて行わなければいけないと考えたのだ。
 そしてそれは功を奏した。
 新規国債を発行しない緊縮財政だったが、大幅に増えた税収の御陰で、前年と同じ予算を確保した上に、年間十億円の赤字国債を返済出来ていた。

 それが可能なのは、佐藤一朗の積極投資の御陰だった。
 各研究開発に膨大な予算を投入した事で、日本の研究開発は著しく進み、研究職員の生活も安定した。
 地熱発電所の大量建造により、建設業は未曾有の好景気となり、下請け孫請け曾孫請けに至るまで、等しくその利益を享受できた。
 何故なら、下請け孫請け曾孫請けに不当な待遇をした企業は、情け容赦なく叩き潰されたからだ。

 こういう場合の佐藤一朗の報復は、全く情け容赦がない。
 圧力をかけられる、ありとあらゆるところに連絡を取り、徹底的に潰しをかけるのだ。
 しかもマスコミはもちろん、ネットも使っても過去現在の不正犯罪を調べるのだから、必ず刑務所送りとなってしまう。

 日本国民の大半が、等しく好景気を享受する事が出来ていた。
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