土魔法で富国強兵?

克全

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進撃の章

追い込み

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「総理、私に売って頂けませんか」
「それは構いませんが、どう活用されるのですか」
「色々とです」
「色々とですか」
「はい」
「分かりました。
 御任せしましょう」

 俺は総理大臣に直談判して、尖閣諸島を全て購入した。
 二〇一二年当時、魚釣島、南小島、北小島の三島で二〇億五〇〇〇万円だったが、全諸島の所有権と鉱業権の両方を、二〇〇〇億円で取得した。
 正直法外な金額だが、後々のいざこざを避けるためには、どうしても必要な金額だ。
 それに、ここで五〇〇〇億円支払うのも、年度末に税金として五〇〇〇億円支払うのも、大した違いではない。

 この事実は、傘下のテレビ局二社を通じて、全世界に大々的に発信した。
 当然大陸大国は激しく抗議してきたが、今大陸大国の味方をする国などない。
 沖合の島に政府を樹立している元大陸大国政府も、激しい抗議をしてきたが、アメリカ政府からの強い要望を受けて、世論の鎮静化に動いた。

 元大陸大国は、押し込められた島の中で、現大陸大国に併合させて利益を得ようとする一派と、このまま独立国として繁栄したいという一派に別れていた。
 大陸から渡って来た権力者達は、元々この島に住んでいた人達に政権を渡すくらいなら、現大陸大国政府に莫大な金額で島を売り渡す計画だった。

 だから俺は、元々島に住んでいた人達の一派と手を結ぶ事を考えた。
 彼らの多くは親日だ。
 現大陸大国政府に島が飲み込まれることを、とても恐れている。
 現大陸大国政府の力で、国連から独立国として認められていない恐怖もある。
 だから、尖閣諸島の領有権の主張を取り下げ、キッチリと書面で領土領海を取り決めることを条件に、同盟を締結することを提案した。

 日本の現政権はもちろん、半島の拠点を失ったアメリカ政府も、元大陸大国政府が治めている島を、自陣営に残しておきたいと考えたようだ。
 半島南の国が、行き過ぎた反日政策の果てに、半島北の国に飲み込まれた現実を重視したのだ。
 アメリカは第七艦隊を尖閣諸島周辺に派遣して、現大陸大国政府と元大陸大国政府に圧力をかけた。
 日本に供与する予定の強襲揚陸艦と駆逐艦も、日本政府への引き渡し訓練という名目で、日米両軍兵士の操作で派遣された。

 アメリカが威嚇役を引き受けてくれたから、俺は飴を与える役に徹した。
 日本との同盟を祝って、石油と天然ガスを格安で売却する契約を持ちかけた。
 五年更新だが、OPECの最安値の半額で、元大陸大国の島が今年輸入した量を売却するという契約だ。
 彼らはこれに飛び付いた。
 この契約による利益は、現大陸大国政府と対抗するには、どうしても必要なモノだった。

 現大陸大国の大艦隊が壊滅したこともあり、島を売却しようとしていた一派が力を失っていたのが幸いした。
 半島南の人達の悲惨なありさまと、英国から返還された地域の人達の悲惨なありさまが、元々島に住んでいた人達を立ち上がらせたのだ。
 日本は有力な同盟国を手に入れ、国境領海問題の一つを解決した。
 同盟国は正式名称を改め、台湾民国となった。
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