土魔法で富国強兵?

克全

文字の大きさ
上 下
66 / 90
進撃の章

苦悩の大陸大国(第三者視点)

しおりを挟む
 大陸大国の最高指導者は苦慮していた。
 全世界を敵に回すことになった。
 援助という建前の貸し付けで、多くの発展途上国や中進国の政府を味方に付けてはいたが、民意までは操れていないからだ。

 それに拒否権を行使する事は出来るが、国連安全保障理事会で槍玉にあげられるのは当然だ。
 それでも、日本人を殺さず捕虜にして、実効支配出来ていれば、利益の方が多かっただろう。
 いや、日本人を皆殺しにして、更なる国際非難を浴びようとも、島を実効支配して、莫大な埋蔵資源を確保出来れば、十分利益の方が多かっただろう。

 だが、実際には上陸部隊が全滅してしまい、実効支配が出来ていない。
 全世界の人は、ライブ映像が途切れたから、大陸大国が日本人を殺すか捕虜にして、島を実効支配したと思っているだろうが、全く出来ていないのだ。
 諦めて撤退など出来なかいが、次の手が難しかった。

 最高指導者は現地艦隊司令長官と話し合ったが、どれほど強く言っても、艦艇による強襲上陸は不可能だという回答だった。
 確かに人工衛星からの映像でも、島周辺は激しい火山活動を起こしていて、艦体を近づけるのは危険だった。
 本当に忌々しい日本人だと、最高指導者は苛立ちを募らせていた。

 そこで次善の策として、無事な輸送ヘリコプターを活用して、更なる上陸部隊を空輸するように命じたが、それも艦隊司令長官は否定的だった。
 専門の揚陸兵士が全滅しており、どうしても強襲揚陸を行うとしたら、一段も二段も質の落ちる、各艦隊の陸戦兵を投入する事になるからだった。

 それでも、大陸大国の最高指導者は強行させた。
 もう後戻りなど出来ないからだ。
 自国の国際評価を地に落としてまで実行した領海領地紛争だ。
 実効支配しなければ、国内での指導力が地に落ちてしまう。
 完全な独裁体制を敷いた心算ではあったが、どこに反体制派が潜んでいるか分からない。

 無理矢理二度目のヘリコプターによる強襲降下を実施させた。
 不思議と火山ガスの噴出は止まっていた。
 明らかな誘いで、罠以外の何物でもないのだが、焦った最高指導者には判断出来なかった。
 当然二度目の強襲降下兵達も、火山ガスの噴出で蒸し殺しにされた。

 意地になった最高指導者は、艦隊によるミサイル攻撃を実施するように命じた。
 艦隊司令長官は何度も反対したが、艦隊司令長官の解任まで臭わされ、ついに命令に従うことになった。
 最初にフリゲートからミサイルによる攻撃が行われ、次いで艦載機から対地ロケットが次々と発射された。
 島の平野部は瓦礫の山となり、大陸大国兵士の遺体は跡形も残らなかった。

 だがその映像は、各国の人工衛星に撮影され、少し遅れて発信され、大陸大国に対する国際世論を更に強硬にさせる原因となった。
 特に佐藤一朗が打ち上げさせた気象衛星からの映像は、とても鮮明であったため、何度も何度も全世界のニュース映像に使われることになった。
しおりを挟む
感想 7

あなたにおすすめの小説

父が再婚しました

Ruhuna
ファンタジー
母が亡くなって1ヶ月後に 父が再婚しました

(完)なにも死ぬことないでしょう?

青空一夏
恋愛
ジュリエットはイリスィオス・ケビン公爵に一目惚れされて子爵家から嫁いできた美しい娘。イリスィオスは初めこそ優しかったものの、二人の愛人を離れに住まわせるようになった。 悩むジュリエットは悲しみのあまり湖に身を投げて死のうとしたが死にきれず昏睡状態になる。前世を昏睡状態で思い出したジュリエットは自分が日本という国で生きていたことを思い出す。還暦手前まで生きた記憶が不意に蘇ったのだ。 若い頃はいろいろな趣味を持ち、男性からもモテた彼女の名は真理。結婚もし子供も産み、いろいろな経験もしてきた真理は知っている。 『亭主、元気で留守がいい』ということを。 だったらこの状況って超ラッキーだわ♪ イケてるおばさん真理(外見は20代前半のジュリエット)がくりひろげるはちゃめちゃコメディー。 ゆるふわ設定ご都合主義。気分転換にどうぞ。初めはシリアス?ですが、途中からコメディーになります。中世ヨーロッパ風ですが和のテイストも混じり合う異世界。 昭和の懐かしい世界が広がります。懐かしい言葉あり。解説付き。

悪意のパーティー《完結》

アーエル
ファンタジー
私が目を覚ましたのは王城で行われたパーティーで毒を盛られてから1年になろうかという時期でした。 ある意味でダークな内容です ‪☆他社でも公開

極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~

恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」 そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。 私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。 葵は私のことを本当はどう思ってるの? 私は葵のことをどう思ってるの? 意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。 こうなったら確かめなくちゃ! 葵の気持ちも、自分の気持ちも! だけど甘い誘惑が多すぎて―― ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。

君と旅をするために

ナナシマイ
ファンタジー
 大切なものはすべて、夕焼け色に染まっていました。 「お前は、魔力を暴走させるだけの危険物だ」  赤い髪を持って生まれた子供は“忌み子”と呼ばれ、  魔力を上手く操れない危険な存在として  人々に忌避されていました。  その忌み子でありながら、  魔法が大好きで、魔法使いとして生きる少女 リル。  彼女は、剣士の少年 フレッドとともに旅をしています。  楽しいことにも、危険なことにも出会う中で、  次第に明らかになっていく旅の目的。  そして、リルの抱える秘密とは――――  これは、とある小さな魔法使いの、後悔をたどる物語。 ◇◇◇ ※小説家になろう様、カクヨム様、エブリスタ様、ノベルアップ+様、ノベリズム様にも掲載しています。 ※自サイトにも掲載しています。↓ https://www.nanashimai.com

【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?

アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。 泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。 16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。 マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。 あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に… もう…我慢しなくても良いですよね? この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。 前作の登場人物達も多数登場する予定です。 マーテルリアのイラストを変更致しました。

主役の聖女は死にました

F.conoe
ファンタジー
聖女と一緒に召喚された私。私は聖女じゃないのに、聖女とされた。

公爵令嬢アナスタシアの華麗なる鉄槌

招杜羅147
ファンタジー
「婚約は破棄だ!」 毒殺容疑の冤罪で、婚約者の手によって投獄された公爵令嬢・アナスタシア。 彼女は獄中死し、それによって3年前に巻き戻る。 そして…。

処理中です...