土魔法で富国強兵?

克全

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進撃の章

光合成発電

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「社長。
 予算は幾らほどですか」
「納税分を除いた現金は、幾らくらいあるんだい」
「五兆円少しです」
「一兆円投入しても大丈夫だな」
「余裕です」

 著しい会社の膨張で、北郷さんなどの三年程度の在職者が最古参の幹部になっている。
 彼女達古参の女性陣が、財務を管理してくれる。
 会社の財務部が日々細々とした事を管理しているが、監察が必要なのだ。
 自分でも毎日チェックしているし、税理士も目を光らしてくれている。
 誰かに任せきりにすると言う事は、その人の心を誘惑の苦しみにさらすことになりかねない。

「購入したビルやマンション、一軒家は全部改装した上で社宅にしてくれ」
「既に多くの社宅があって、空き家や空き室が大量に出てしまいます」
「空くところは賃貸に回してくれ」
「マンション管理の支社に回してよろしいですか」
「ああ、そうしてくれ」

 北郷さんの言うように、自衛官の子供が日共組主導で虐めにあった件や、鉱山や油田警備社員のために、職場近くに急いで災害復興住宅を建てた。
 次に古い炭鉱住宅をリフォームして、最終的には新築マンション建造している。
 衣食住は、家族も含めて社員には、一瞬でも不自由をかけないようにしてきた。
 だから、今一兆円分の不動産を購入しても、入居する社員は少ない。

 もっとも、今もどんどん積極的に株式買収を行っているから、これから社宅が必要な人間は増えていくだろう。
 地中熱を利用した空調は、リフォーム時に導入している。
 立地条件によっては、太陽熱温水器や太陽光発電システム、風力発電システムを導入している。
 マイクロ水力発電も、利用できる場所は実験も兼ねて導入している。

 俺が一番導入したいと思っているのは、光合成発電住宅だ。
 人工光合成の基盤を屋根に設置し、蟻酸を生産するのだ。
 創り出した蟻酸を貯蔵し、必要になった時に蟻酸から水素を作り、その水素を使って発電することが出来る。
 太陽光発電と違い、雨天時や夜間時のための蓄電池は不要だし、充放電時のロスもない。
 問題は太陽光エネルギー変換効率だが、研究資金を二千億ほど投入すれば、驚くほど研究が進むはずだ。

 実験に使う土地や家、資材は住宅費用として別枠で八千億円ある。
 二千億円は純粋な研究費用だ。
 研究員の給料などは人件費として別会計だ。
 タナボタの天然ガスと石油でメタンハイドレートの実用化に持ち込む。
 メタンハイドレートを使い切るまでに、人工光合成を実用化する。

 人工光合成が実用化されれば、エネルギー問題だけでなく、人工光合成からバイオプラスチックの生産まで可能になる。
 残り四兆円の資金の内、三兆円はこの分野に投資してもいい。
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