土魔法で富国強兵?

克全

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進撃の章

奨学金

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「予算はどれくらいを考えておられるのですか」
「千億円くらいかな」
「そんなに出して大丈夫ですか」
「だいじょうぶぅぅぅぅぅ」
「パパに二言はありません」

 肝付さんと奨学基金の話をしていると、桃と緑が会話に加わってきた。
 色々な事業に大金を投じているから、肝付さんの心配ももっともだけれど、桃と緑の言う方が正しい。
 天然ガスの売却利益と宝石の売却利益で、十兆円は超えているのだ。
 ある程度の御金を使わないと、税金が大変なことになる。
 まあ、日本の累積赤字解消の為に、税金を納める事が嫌なわけではないが、新規事業や福祉事業にも興味があるのだ。

「桃と緑の言うように、俺に二言はないよ。
 それに、日本の国際交渉能力を高める必要があるからね。
 その為には、日本人の国連職員を増やさなければならない」
「社長の仰る通りだよ、肝付さん」
「海田さん」

 俺の言葉を海田さんが後押ししてくれた。
 会社の海洋部門の総責任者として、今日は本社に来てくれていたのだ。
 海田さんは海上自衛隊で艦長を歴任されただけあって、国際情勢にも詳しい。
 国連職員の数が、国際紛争の裁定に影響を及ぼす可能性がある。
 北東大国はもちろん、半島や大陸大国も、国連での影響力を行使している。
 日本政府が動かないのなら、俺が動いてやる。

「俺の調べた範囲では、国連職員数は拠出金に準じていると聞いています」
「それは私も聞いております」
「日本は大陸大国に抜かれて第三位に落ちたとは言え、八・五%の予算を拠出しています」
「その通りです」
「それなのに、日本人職員は千人少ししかいないと聞いています」
「その通りです」
「適正な日本人職員数は六千五百人ほどなので、五千五百人の枠が空いているはずです」
「はい。
 日本人の国連職員をどんどん増やすように動きましょう」

 問題は、国内志向の高い日本人を、どうやって国連に送り込むかだ。
 そこで考えたのが奨学基金だ。
 国連職員を務めている間は、返済を猶予するのだ。
 そして国連職員を十五年勤めたら、返済額を半分にする。
 三十年勤めたら、全額返済免除にする。
 問題は奨学金の額だ。
 東京で部屋を借りて学ぶのは御金がかかる。
 思い切った額を貸与すべきだろう。

 本部の上級職員を目指すなら、修士号が必修だ。
 そうなると六年間の奨学金となる。
 二千万円は軽く越えることになるだろう。
 普通の仕事で返済するのは大変だ。
 ほぼ不可能と言ってもいい。
 国連ボランティアや国連インターンを務めている間も、奨学金の返済を猶予すれば、自然と国連における日本人割合は増えるだろう。

「2016年末の国連」
国連事務局スタッフの人数       :三九六五一人
国連事務局および関連機関のスタッフ人数:七六二三四人

国連の拠出金の分担率はアメリカ、中国に次いで日本は八・五%の三位。
国連機関で働く日本人職員の数は一〇七一人で二五位だったはず。
八・五%の適正な人数は六四八〇人だ。
枠だけで言えば、五四〇九人も採用枠が空いている。

「奨学金制度」
一時金:百万円貸与
学費 :全額貸与
交通費:全額貸与
住宅費:生活保護基準に準じる(東京一等地で五三七〇〇円)
生活費:生活保護基準に準じる(東京一等地で七九二三〇円)
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