土魔法で富国強兵?

克全

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始まりの章

海外心臓移植1

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「御協力感謝いたします」
「いえ。国民の義務を果たしただけです」
「当然の事であります」

 強盗未遂犯を確保して、直ぐに警察に通報した。
 警察の対応も早く、直ぐに駆けつけてくれた。
 家の社員が元警察官や元自衛官であることは、戸別訪問調査の時に報告しておるから、邪推される心配は少ない。

「社長。ダイヤモンドの一つが希望額以上で落札されました」
「ほう。幾らだい」
「十三億九千三百に十七万円です」
「最低入札価格はいくらだったのだい」
「十億円でした」
「予定より三十九パーセント以上高かったのか。幸先がいい」
「はい」

 海外の有名オークションに委託していた、ダイヤモンドのオークションが今日から始まっている。
 全てが最低落札価格で落とされたとしても、一千億円にはなる。
 この調子で高値が付けば、一千四百億円を超える可能性もある。
 まあもっとも、最低落札価格でも落とされないダイヤモンドもあるだろうから、実際には終わってみなければ分からない。

「私にこれくらいの御金があったら、達樹君に心臓移植させてあげるんだけどな」
「馬鹿な事を言うな」
「これは社長が家宝を処分された御金だぞ」
「ごめんなさん。つい、気になっていたのだ」
「まあいい、気にするな。それで、たつき君の心臓移植とはどう言う事なのだ」

 思わずつぶやいた俺に、新納愛子が丁寧に説明してくれた。
 自衛隊員の子供が、重度の心臓病を患っているそうだ。
 治すには心臓移植しかないのだが、日本の小児心臓移植は厳しい。
 日本では小児の脳死は否認しているので、待機期間が長く、間に合わずになくなってしまう事が多いのだ。
 そのくせ欧米の小児の脳死を肯定して、海外で心臓移植を待ち望んでいる小児のチャンスを金で奪っている。

「細々と募金活動をやってはいるのですが、金額的に厳しい上に、朝共新聞と毎共新聞が、テレビ局まで使って色々邪魔をするので、街頭募金すら満足に出来ない状態なんです」

 自衛隊員の子供が心臓移植を必要とするまでは、散々募金活動を支援していたくせに、自衛隊員の子供が海外心臓移植を必要とした途端、海外の子供のチャンスを奪うなと大々的にキャンペーンを張っていると言う。
 自衛隊員が互助的に募金しようとしても、血税を使って海外の子供の心臓を奪うなと騒いでいると言う。
 朝共と毎共グループが虫唾が走るくらい嫌いで、記事の番組も見ないようにしていたので、気が付くのが遅かった。

「全額でいくらかかるんだ」
「提供者が現れるまで時間がかかる場合が多いので、予備費も入れて三億五千八百万円を目標額にしていました」
「税金や手数料を引いても賄えるな」
「はい」
「三億五千八百万円振り込んでくれ」
「「「「「はい」」」」」
「それと」
「はい、何でしょうか」

 最初は新納愛子をたしなめていた伊集院武臣だが、俺が興味があると知ると、積極的に話してくれるようになった。
 それと、俺が更に問いかけると、その後の言葉が気にかかるようだ。

「朝共と毎共には報復しないといけないね」
「「「「「はい」」」」」

「海外心臓移植予定費用」
医療費  :二億七千万円
医療予備費:  二千百万円
渡航費  :  五千九百万円
現地滞在費:  六百万円
事務所経費:  二百万円
合計   :三億五千八百万円
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