土魔法で富国強兵?

克全

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始まりの章

古銭創作販売

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「どうですか、これなんか極め付きの逸品ですよ」
「そうですか。いろいろな店の商品を見させていただいて、その上で購入するモノを決めたいと思っています」
「そうですか。残念ですねぇぇぇ。これほどの逸品、今日中に売れてしまうかもしれませんよ」
「それは、御縁がなかったと言う事なので、仕方ない事です」
「そうですか。勿体ないと思うんですがね」

 嫌な目つきをしていやがる。
 こういう人間は、人を騙す事で愉悦を感じるタイプだ。
 こんな人間には嫌と言うほど出会ってきた。
 個々での売買は絶対やめよう。
 この古銭も偽物か、ボッタクリの商品だろう。

「残念ですね。値上げ必死の御勧めの逸品なんですがねぇ」
「金儲けの為に、転売目的での購入ではありません。ずっと大切にするモノです」
「だからこそ、御客様に相応しい逸品だと思いますよぉ」
「そうですか。でしたら、他の店を見て回った後で、明日また伺います」
「本当にいいんですかぁ、御客様にとって大変な損失ですぉ」
「ええ、先程も申しましたが、御縁ですから」

「パパ。私あいつ嫌い」
「僕も嫌い」
「パパも嫌いだよ」
「あいつ、パパの事を『貧乏人がぁ』って言ってた」
「僕も聞いた」
「じゃあ、明日あいつにリベンジしてやろう」
「「賛成」」

 三日かけて、桃と緑とワイワイガヤガヤと愉しく言い合いながら、創り出す古銭を選び古銭屋を探した。
 手持ちの五円玉と十円玉、途中の成分を集めて創り出す。
 よくよく桃と緑と話したら、材料を集める時に方角と範囲を決められるようだ。
 そうでなければ、家が倒壊したり、車が破壊されたりしてしまう。
 とにかく、山の地面に向けてもらうようにした。
 水道管やガス管を使われたらえらいことになってしまう。

 創り出す事にした銅貨は、以下の物にした。


「銅貨」
文久永宝     :三万六千円
寛永通宝・小菅母銭:一万円
寛永通宝・四文母銭:二万円

「皇朝十二文銭」
饒益神宝     :百万円
貞観永宝     :十万円から五十万円
富寿神宝     :五万円から十万円
承和昌宝     :五万円から十万円
乾元大宝     :五万円から十万円
万年通宝     :五万円から十万円
隆平永宝     :五万円から十万円
寛平大宝     :五万円から十万円
和同開珎     :一万円から五万円
延喜通宝     :一万円から五万円
神功開宝     :一万円から五万円

「これは、偽物ですね」
「やっぱりそうですか」
「ええ、騙されましたね」
「僕もそんな気がしていたんですが、これも勉強だと思って買ってみました」
「そうですか」

 見学に費やした日の夜に、桃と緑にプレミア古銭を創り出してもらった。
 それを翌日、前日の見学させてもらった古銭屋さんに鑑定してもらった。
 俺と桃と緑が、そろっていい人と判断した古銭屋さんから順に、創り出した全部の古銭を鑑定買取してもらった。
 案の定、俺に『貧乏人がぁ』と陰で悪態をついた古銭屋が勧めた古銭は、全部偽物だった。

「これは、一体どこで手に入れられたのですか」
「先祖伝来の家宝ですが、どうかしましたか」
「いいえ、まずまずの古銭だと思いましてぇ」
「先に鑑定した頂いた御店では、最低でも百万を超えると言われましたが」
「いえ、それはぁ、そのぉ」
「昨日は、この古銭を販売する先を選ぶための下見でした」
「えっ」
「信頼出来ないところに、家宝を預けるわけにはいきませんから」
「それは」
「この店に家宝を預けられません」
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