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始まりの章
コスプレと買い食い
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「パパ愉しい」
「パパ恥ずかしいの」
「パパは愉しいけど恥ずかしい」
顔から火が出そうだ。
五十を軽く越えて、今更コスプレするとは思わなかった。
桃と緑が、テレビでコスプレを観たのが全てだった。
耳や尻尾が出ていようと、コスプレならパパと御散歩出来ると言い出したのだ。
こんな田舎から、コスプレ姿で出歩けないと言ったら、車を買えばいいと言われた。
ペーパードライバーだと言ったら、練習すればいいと言われた。
御金がないと言ったら、ダイヤモンドを売ればいいと言われた。
ダイヤモンドを売るのは危険だと言ったら、金を創るとまで言われてしまった。
そこまで言われてしまうと、もう反対できなかった。
「パパのコスプレも可愛いよ」
「うん。パパも似合っている」
「そう言ってくれるのは嬉しいけれど、パパは目立つのが苦手なんだよ」
「耳も尻尾もパパと一緒」
「一緒が嬉しい」
桃と緑は褒めてくれるし嬉しそうだけど、何処の誰が五十男の半妖狐姿など見たがるものか。
桃と緑のリアル過ぎる姿を誤魔化すために、本職に大金を支払って俺用の半妖狐のコスチュームを作ってもらった。
田舎の家から、コスプレ会場の神戸倉庫街まで目立たずに来られるように、中古のワゴン車まで購入した。
これで桃と緑が創り出した、レプリカ小判百枚を売った御金がほとんど消えてしまった。
哀しい事だが、犯罪組織に眼を付けられてまで作った御金が、ほとんど残っていない。
「パパ、あれが食べたい」
「僕はあれがいいな」
「分かったから、順番に買おうな」
「はぁぁぁい」
「はい」
桃と緑は、初めての買い食いが愉しくて仕方ないようだ。
俺も子供の頃は、夏の夜店が愉しみで仕方なかったから、気持ちは分かる。
分かるが、子供としては尋常じゃない食欲だ。
どこの大食いタレントなんだと、心の中でつぶやいてしまった。
まあ、でも、なんだ。
愉しそうに嬉しそうに走る回る桃と緑の姿を見れるのなら、俺の羞恥心など吹き飛んでしまう。
一人が好いと言って、故郷を飛び出した自分だとは思えない心境の変化だ。
「これ甘くて酸っぱい」
「これふわふわで甘い」
りんご飴に齧り付いた桃が、少し顔をしかめて笑っている。
女の子なのだから、もう少しおしとやかに食べてもいいのだが。
緑は緑で、身体をくねくねさせて綿菓子を楽しんでいる。
男の子なのだから、もう少し食べ方ががさつでもいいのだが。
「パパあれも買って」
「あれはなあに」
「あれはイカ焼きと言って、海に住んでいるイカを丸焼きにした物だよ」
「食べたい。食べたい。食べたい」
「僕も食べたいなぁ」
あぁあぁ、桃はあちらこちらに食べカスとつけタレを飛び跳ねさせて、可愛い姿が台無しだ。
緑は身体を汚さないように食べているから、桃の速さについて行けず、段々食べ切れない物が持ち切れなくなってる。
まあ、でも、なんだ。
こんなに嬉しそうなんだから、どうでもいいか。
「パパ恥ずかしいの」
「パパは愉しいけど恥ずかしい」
顔から火が出そうだ。
五十を軽く越えて、今更コスプレするとは思わなかった。
桃と緑が、テレビでコスプレを観たのが全てだった。
耳や尻尾が出ていようと、コスプレならパパと御散歩出来ると言い出したのだ。
こんな田舎から、コスプレ姿で出歩けないと言ったら、車を買えばいいと言われた。
ペーパードライバーだと言ったら、練習すればいいと言われた。
御金がないと言ったら、ダイヤモンドを売ればいいと言われた。
ダイヤモンドを売るのは危険だと言ったら、金を創るとまで言われてしまった。
そこまで言われてしまうと、もう反対できなかった。
「パパのコスプレも可愛いよ」
「うん。パパも似合っている」
「そう言ってくれるのは嬉しいけれど、パパは目立つのが苦手なんだよ」
「耳も尻尾もパパと一緒」
「一緒が嬉しい」
桃と緑は褒めてくれるし嬉しそうだけど、何処の誰が五十男の半妖狐姿など見たがるものか。
桃と緑のリアル過ぎる姿を誤魔化すために、本職に大金を支払って俺用の半妖狐のコスチュームを作ってもらった。
田舎の家から、コスプレ会場の神戸倉庫街まで目立たずに来られるように、中古のワゴン車まで購入した。
これで桃と緑が創り出した、レプリカ小判百枚を売った御金がほとんど消えてしまった。
哀しい事だが、犯罪組織に眼を付けられてまで作った御金が、ほとんど残っていない。
「パパ、あれが食べたい」
「僕はあれがいいな」
「分かったから、順番に買おうな」
「はぁぁぁい」
「はい」
桃と緑は、初めての買い食いが愉しくて仕方ないようだ。
俺も子供の頃は、夏の夜店が愉しみで仕方なかったから、気持ちは分かる。
分かるが、子供としては尋常じゃない食欲だ。
どこの大食いタレントなんだと、心の中でつぶやいてしまった。
まあ、でも、なんだ。
愉しそうに嬉しそうに走る回る桃と緑の姿を見れるのなら、俺の羞恥心など吹き飛んでしまう。
一人が好いと言って、故郷を飛び出した自分だとは思えない心境の変化だ。
「これ甘くて酸っぱい」
「これふわふわで甘い」
りんご飴に齧り付いた桃が、少し顔をしかめて笑っている。
女の子なのだから、もう少しおしとやかに食べてもいいのだが。
緑は緑で、身体をくねくねさせて綿菓子を楽しんでいる。
男の子なのだから、もう少し食べ方ががさつでもいいのだが。
「パパあれも買って」
「あれはなあに」
「あれはイカ焼きと言って、海に住んでいるイカを丸焼きにした物だよ」
「食べたい。食べたい。食べたい」
「僕も食べたいなぁ」
あぁあぁ、桃はあちらこちらに食べカスとつけタレを飛び跳ねさせて、可愛い姿が台無しだ。
緑は身体を汚さないように食べているから、桃の速さについて行けず、段々食べ切れない物が持ち切れなくなってる。
まあ、でも、なんだ。
こんなに嬉しそうなんだから、どうでもいいか。
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