土魔法で富国強兵?

克全

文字の大きさ
上 下
16 / 90
始まりの章

人化

しおりを挟む
「パパ見て」
「桃か、桃なのか」
「そうだよ。可愛い」
「ああ、とっても可愛いよ」
「パパ。私は」
「緑もとっても可愛いよ」
「じゃあ一緒に御出掛けで出来る」
「残念だけど、御耳と尻尾を隠せないと、一緒に御出掛けは無理だな」
「「えぇぇぇぇぇ」」

 人化できるとは思わなかった。
 心臓が口から飛び出すかと思うほど驚いた。
 父親として平静を装うとしたけれど、多分思いっきり動揺したのを見抜かれている。
 まあそれは仕方がない。
 小心者の性格は直らない。
 桃と緑は不服そうだけれど、流石に大きな狐耳と尻尾を出した、半妖の姿で表を連れて歩くわけにはいかない。
 桃と桜は、一緒に御出掛けしたくて、一所懸命化ける魔法を覚えたのだろうけれど、ここは厳しくしないと大騒ぎになってしまう。

「どうしても一緒に御出掛けしたいのなら、狐の姿のままだよ」
「「えぇぇぇぇぇ」」
「化けきれてないのだから、仕方がないよ」
「だって、狐の姿だと、パパに手御を繋いでもらえないよ」
「僕はパパと御話しながら散歩したいな」

 桃も緑もうれしい事を言ってくれるが、これだけは我慢してもらわないといけない。
 この世界で大騒動になるのも怖いが、異世界の追っ手が怖い。
 桃と緑が殺されるかもしれないと思うと、恐怖で足がすくむ。
 少しの油断が最悪の事態を呼ぶことは、犯罪組織に巻き込まれた事で理解している。
 もう二度とあのような思いはしたくない。

「桃と緑を追っている、異世界の奴らに見つかってもいけない。そんな事になったら、桃と緑を預けてくれた御母さんに合わせる顔がなくなる」
「うん。分かった」
「分かりました」

 普段は自由奔放で聞き分けのない桃も、御母さんの話が出たら素直に聞いてくれる。
 気の弱い緑の方は、異世界からの追っ手が怖いのだろう。
 桃にせっつかれて、色々な魔法を覚えているようだけれど、こんなに気が弱くては、追っ手を攻撃出来るかどうかも怪しい。

「じゃあいつもみたいに、狐に化けてなら御散歩していいの」
「僕も狐の姿でもいいから、パパと御散歩したいな」
「仕方ないな。おかしな気配がしたら、直ぐにパパに言うんだよ。パパには異世界の気配なんてわからないからね」
「任せて」
「分かりました」

 桃と緑が初めて狐の姿のままでしゃべった時は少しだけ驚いた。
 母親が狐の姿のまま話しかけていたから、何時かはしゃべり出すと思っていた。
 その時は少し早い気もしたが、猫や犬の成長を考えたら、普通なのかもしれない。
 異世界の妖狐の成長速度など、俺に分かる訳がない。
 考えるだけ無駄というモノだ。
 今はこの子達と愉しく暮らすだけだ。
しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

虐待され続けた公爵令嬢は身代わり花嫁にされました。

恋愛 / 完結 24h.ポイント:134pt お気に入り:3,362

奴隷魔法使い

ファンタジー / 完結 24h.ポイント:0pt お気に入り:77

地味で器量の悪い公爵令嬢は政略結婚を拒んでいたのだが

恋愛 / 完結 24h.ポイント:7pt お気に入り:1,375

異世界の貴族に転生できたのに、2歳で父親が殺されました。

ファンタジー / 完結 24h.ポイント:28pt お気に入り:331

よい異世界召喚に巻き込まれましたが、殺された後でした。

ファンタジー / 完結 24h.ポイント:14pt お気に入り:475

処理中です...