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出会いの章
探検
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謎の鞄を受けとってから五日間が過ぎて、ようやく陳から連絡が来た。
この五日間、男は生きた心地がしなかった。
鞄の中に百億円以上のカラーダイヤモンドが入っている事など、男には知りようがなかった。
犯罪に使われる武器かもしれないとか、爆弾が入っているのかもしれないとか、恐ろしい想像ばかりが思い浮かび、碌に寝る事も出来なかった。
ただ桃と緑には、
「大切なモノだから、絶対に噛んじゃいけないよ」
「「キュゥーン、キュゥーン、キュゥーン」」
桃と緑は、男を心配するようなイントネーションで鳴き声をあげている。
「ごめんね。心配させてしまっているね。それと、大事な物であると同時に、危険なものかもしれないんだ」
「「キュゥーン、キュゥーン、キュゥーン」」
桃と緑は、一層心配そうに鳴きだした。
「大丈夫だよ。桃と緑に万が一の事がないように、桃と緑の部屋から離れた二階に置いておくから」
男の借家が無駄に広いと前に説明したが、二階は全く使っていなかった。
桃と緑の安全を考えれば、母屋ではなく、車庫や離れに鞄を置いておきたかった。
だが万が一盗まれでもしたら、殺されるに違いなかった。
だから母屋に隠すしかないが、爆弾と言う可能性もあり、普段寝室にしている部屋から一番遠い二階の部屋に隠す事にしたのだ。
男は桃と緑が鞄に悪戯しないように、側から離さなかった。
夜もほとんど眠れなかったから、桃と緑を布団の中に入れて離さなかった。
だが、五日間一睡も出来なかった訳ではない。
二時間程度の短時間だが、短時間だからこそ深く深く眠った。
その深睡眠の間に、桃が好奇心を抑えきれなかった。
臆病な緑が必死で止めたが、強気の桃を緑が止められるはずもなく、一緒に鞄を置いている二階に探検に行ってしまった。
桃にしても、最初は内心ビクビクワクワクしていた。
男が余りに怖がっていたし、一生懸命桃と緑を護ろうとしているのが伝わったので、強気で好奇心旺盛な桃も、少しは恐怖を感じていたのだ。
だがそれ以上に、危険な事に立ち向かう事に冒険心が掻き立てられてもいた。
桃が先を進んで階段を登り、緑がビクビクと後をついていく。
男が鍵をかけていたが、桃は魔法を使って簡単に開けてしまう。
男は押入れの奥に隠していたのだが、匂いを覚えていた桃は簡単に見つけ出してしまう。
男が恐怖して心配していたモノだから、どれほど危ないモノかと不安と期待に胸膨らませていた桃だが、桃の嗅覚には全く危険な兆候を感じられなかった。
肩透かしを食らったような桃だったが、ここで悪戯を考えついてしまった。
この五日間、男は生きた心地がしなかった。
鞄の中に百億円以上のカラーダイヤモンドが入っている事など、男には知りようがなかった。
犯罪に使われる武器かもしれないとか、爆弾が入っているのかもしれないとか、恐ろしい想像ばかりが思い浮かび、碌に寝る事も出来なかった。
ただ桃と緑には、
「大切なモノだから、絶対に噛んじゃいけないよ」
「「キュゥーン、キュゥーン、キュゥーン」」
桃と緑は、男を心配するようなイントネーションで鳴き声をあげている。
「ごめんね。心配させてしまっているね。それと、大事な物であると同時に、危険なものかもしれないんだ」
「「キュゥーン、キュゥーン、キュゥーン」」
桃と緑は、一層心配そうに鳴きだした。
「大丈夫だよ。桃と緑に万が一の事がないように、桃と緑の部屋から離れた二階に置いておくから」
男の借家が無駄に広いと前に説明したが、二階は全く使っていなかった。
桃と緑の安全を考えれば、母屋ではなく、車庫や離れに鞄を置いておきたかった。
だが万が一盗まれでもしたら、殺されるに違いなかった。
だから母屋に隠すしかないが、爆弾と言う可能性もあり、普段寝室にしている部屋から一番遠い二階の部屋に隠す事にしたのだ。
男は桃と緑が鞄に悪戯しないように、側から離さなかった。
夜もほとんど眠れなかったから、桃と緑を布団の中に入れて離さなかった。
だが、五日間一睡も出来なかった訳ではない。
二時間程度の短時間だが、短時間だからこそ深く深く眠った。
その深睡眠の間に、桃が好奇心を抑えきれなかった。
臆病な緑が必死で止めたが、強気の桃を緑が止められるはずもなく、一緒に鞄を置いている二階に探検に行ってしまった。
桃にしても、最初は内心ビクビクワクワクしていた。
男が余りに怖がっていたし、一生懸命桃と緑を護ろうとしているのが伝わったので、強気で好奇心旺盛な桃も、少しは恐怖を感じていたのだ。
だがそれ以上に、危険な事に立ち向かう事に冒険心が掻き立てられてもいた。
桃が先を進んで階段を登り、緑がビクビクと後をついていく。
男が鍵をかけていたが、桃は魔法を使って簡単に開けてしまう。
男は押入れの奥に隠していたのだが、匂いを覚えていた桃は簡単に見つけ出してしまう。
男が恐怖して心配していたモノだから、どれほど危ないモノかと不安と期待に胸膨らませていた桃だが、桃の嗅覚には全く危険な兆候を感じられなかった。
肩透かしを食らったような桃だったが、ここで悪戯を考えついてしまった。
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