土魔法で富国強兵?

克全

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出会いの章

怪しいC人民共和国人

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「やあ旦那。何を売りたいんだい」
「このレプリカ小判を売りたいんだ」
「随分多いな、転売か」
「いや、家にあったものを売るだけだ」
「ふむ。買い付けはしないんだな」
「しない、一般人として売りたいだけだ」
「何枚だ」
「百枚だ」
「今日の相場でいいのか」
「構わない」
「計らしてもらっていいか」
「ああ、構わない」
「私は陳だ」
「そうか」
 どう見ても中国人にしか見えない、怪しい格好をした男・陳が話しかけてきた。
 小判を売りに来た男は、陳に話しかけられて、あれよあれよという間に小判を売る話になってしまった。
「二十四金で十六・八グラムが百枚だから、千六百八十グラムだね」
「ああ、そうだな」
「五百グラム以上あるから、グラム五千五円で買い取ろう。総額八百四十万八千四百円だが、それいいか」
「それで構わない」
「申告はするのか」
「確定申告の事か」
「ああ」
「する心算だが、それがどうかしたのか」
「真面目に税金を払うのか」
「その心算だが」
「私、野党の議員と仲がいい」
「それがどうした」
 陳の話では、C民国から帰化した女性野党議員と仲がいいそうで、男が望むなら、税金を払わなくていいように細工してくれるそうだ。
 さらに突っ込んで話をすると、その女性野党議員は、C人民共和国の工作員なので、C人民共和国との密貿易が可能なようだ。
 陳も出来る事なら、税金を払わない密貿易で金を日本から持ち出したいようで、今回の金売買を秘密裏に行いたいと男に持ちかけたのだ。
 男は悪事に手を染める気はなかった。
 脱税など絶対にしたくなかった。
 だが、金の入手先は秘密だった。
 異世界から来た妖狐達が作ってくれたとは、言えないし信じてもらえない。
 それに何より、このような秘密を聞かさえれた以上、断れば殺されるだろう。
 男は死ぬのが怖かった。
 C人民共和国の拷問は、日本とは比較にならないくらい無慈悲だと知っていたから、直ぐに提案を受けることにした。
 命あっての物種だ。
「今日はいい取引が出来ました。これからも宜しくお願い致します」
「もう売る物はないよ」
「いえ、いえ。転売の手伝いをして頂きますよ。ちゃんと御礼はしますから、仲良くやりましょう」
 男は罠に嵌ったのだ。
 このオークション自体が、日本人をC人民共和国の工作員に引き込む罠だったのだ。
 こんな事なら、多少買取価格が安くても、ネットオークションでレプリカ小判を売るべきだったと、男は心の中で激しく反省したが、全ては後の祭りだった。
 レプリカ小判の代金は、現金で支払われた。
 恐怖に苛まれながら帰宅した男だったが、男の後をC人民共和国の工作員が尾行していた。
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