土魔法で富国強兵?

克全

文字の大きさ
上 下
9 / 90
出会いの章

小判

しおりを挟む
「何だこれは」
 男は驚愕して、思わず叫んでいた。
 庭に小判が散乱していたのだ。
 この地区は、大昔には金山があった。
 だからと言って、小判が庭に散乱している訳がない。
 昨日まではそんな物なかったのだから。
 万が一あるとしても、少し離れた廃鉱山に隠されているか、山に埋められているはずだ。
「やっぱり、桃と緑だろうな」
 男は馬鹿ではない。
 桃と緑が急に激しく鳴いた事と、自分が小判の事を口にしたことから、魔法か何かで小判を創り出した事に気が付いていた。
 誰が見ている訳ではないが、男は慌てて小判を回収した。
 見つかったら大変なことになるのは分かっていた。
「ありがとう。桃、緑」
「「クォーン。クォーン。クォーン」」
 桃と緑は、甘えるような、自慢するような鳴き声をあげた。
 男は小判に困惑していたが、桃と緑にちゃんと御礼を言った。
 どれほど小判の扱いに困惑していても、男の為に桃と緑が小判を作ってくれたことは確かだ。
 それに対して御礼を口にしないなど、男にはありえない事だった。
 心から御礼を言うとともに、桃と緑を優しく撫でてあげた。
 桃と緑は、男の愛撫にうっとりとした表情を浮かべている。
 自分達がしたことを、男が喜んでいる。
 その事に満足している表情でもあり、単純に愛撫が気持ちい事でもある。
「せっかく桃と緑が創り出してくれたものだから、大切に使わないといけないな」
 男は和机の上に置いているパソコンを使う為に、別の部屋に移動した。
 以前は専用の机の上にパソコンを置いていたのだが、パソコンを使っている間も桃と緑が寂しい思いをしないように、パソコンを炬燵としても使える和机の上に移動させたのだ。
 ここならば、桃と緑を膝の上に乗せながらネットサーフィンをする事が出来る。
 動画の編集や投稿に時間をとられても、桃と緑に寂しい思いをさせないで済む。
 もう男には、桃と緑のいない生活は考えられないようになっていた。
 その生活を続けるためにも、せっかく創り出してくれた小判を、出来るだけ高値で売ろうとしていた。
 ネットで色々検索して、信頼出来そうなオークションサイトを探した。
 今住んでいる場所は僻地ではあるが、神戸と大阪なら日帰りで往復する事が出来る。
 直接足を運ぶことで、交通費と移動による時間浪費以上に利益が出るのなら、現地に行ってオークションに参加する事も考えていた。
 男は片手で桃と緑を愛撫しながら、時間をかけてオークション会場とオークションサイトを吟味していた。
 そしてようやく、一つのオークション会場を見つけた。
しおりを挟む
感想 7

あなたにおすすめの小説

最後に言い残した事は

白羽鳥(扇つくも)
ファンタジー
 どうして、こんな事になったんだろう……  断頭台の上で、元王妃リテラシーは呆然と己を罵倒する民衆を見下ろしていた。世界中から尊敬を集めていた宰相である父の暗殺。全てが狂い出したのはそこから……いや、もっと前だったかもしれない。  本日、リテラシーは公開処刑される。家族ぐるみで悪魔崇拝を行っていたという謂れなき罪のために王妃の位を剥奪され、邪悪な魔女として。 「最後に、言い残した事はあるか?」  かつての夫だった若き国王の言葉に、リテラシーは父から教えられていた『呪文』を発する。 ※ファンタジーです。ややグロ表現注意。 ※「小説家になろう」にも掲載。

父が再婚しました

Ruhuna
ファンタジー
母が亡くなって1ヶ月後に 父が再婚しました

我が家に子犬がやって来た!

もも野はち助(旧ハチ助)
ファンタジー
【あらすじ】ラテール伯爵家の令嬢フィリアナは、仕事で帰宅できない父の状況に不満を抱きながら、自身の6歳の誕生日を迎えていた。すると、遅くに帰宅した父が白黒でフワフワな毛をした足の太い子犬を連れ帰る。子犬の飼い主はある高貴な人物らしいが、訳あってラテール家で面倒を見る事になったそうだ。その子犬を自身の誕生日プレゼントだと勘違いしたフィリアナは、兄ロアルドと取り合いながら、可愛がり始める。子犬はすでに名前が決まっており『アルス』といった。 アルスは当初かなり周囲の人間を警戒していたのだが、フィリアナとロアルドが甲斐甲斐しく世話をする事で、すぐに二人と打ち解ける。 だがそんな子犬のアルスには、ある重大な秘密があって……。 この話は、子犬と戯れながら巻き込まれ成長をしていく兄妹の物語。 ※全102話で完結済。 ★『小説家になろう』でも読めます★

公爵令嬢アナスタシアの華麗なる鉄槌

招杜羅147
ファンタジー
「婚約は破棄だ!」 毒殺容疑の冤罪で、婚約者の手によって投獄された公爵令嬢・アナスタシア。 彼女は獄中死し、それによって3年前に巻き戻る。 そして…。

【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?

アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。 泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。 16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。 マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。 あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に… もう…我慢しなくても良いですよね? この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。 前作の登場人物達も多数登場する予定です。 マーテルリアのイラストを変更致しました。

(完)なにも死ぬことないでしょう?

青空一夏
恋愛
ジュリエットはイリスィオス・ケビン公爵に一目惚れされて子爵家から嫁いできた美しい娘。イリスィオスは初めこそ優しかったものの、二人の愛人を離れに住まわせるようになった。 悩むジュリエットは悲しみのあまり湖に身を投げて死のうとしたが死にきれず昏睡状態になる。前世を昏睡状態で思い出したジュリエットは自分が日本という国で生きていたことを思い出す。還暦手前まで生きた記憶が不意に蘇ったのだ。 若い頃はいろいろな趣味を持ち、男性からもモテた彼女の名は真理。結婚もし子供も産み、いろいろな経験もしてきた真理は知っている。 『亭主、元気で留守がいい』ということを。 だったらこの状況って超ラッキーだわ♪ イケてるおばさん真理(外見は20代前半のジュリエット)がくりひろげるはちゃめちゃコメディー。 ゆるふわ設定ご都合主義。気分転換にどうぞ。初めはシリアス?ですが、途中からコメディーになります。中世ヨーロッパ風ですが和のテイストも混じり合う異世界。 昭和の懐かしい世界が広がります。懐かしい言葉あり。解説付き。

悪意のパーティー《完結》

アーエル
ファンタジー
私が目を覚ましたのは王城で行われたパーティーで毒を盛られてから1年になろうかという時期でした。 ある意味でダークな内容です ‪☆他社でも公開

『悪役』のイメージが違うことで起きた悲しい事故

ラララキヲ
ファンタジー
 ある男爵が手を出していたメイドが密かに娘を産んでいた。それを知った男爵は平民として生きていた娘を探し出して養子とした。  娘の名前はルーニー。  とても可愛い外見をしていた。  彼女は人を惹き付ける特別な外見をしていたが、特別なのはそれだけではなかった。  彼女は前世の記憶を持っていたのだ。  そして彼女はこの世界が前世で遊んだ乙女ゲームが舞台なのだと気付く。  格好良い攻略対象たちに意地悪な悪役令嬢。  しかしその悪役令嬢がどうもおかしい。何もしてこないどころか性格さえも設定と違うようだ。  乙女ゲームのヒロインであるルーニーは腹を立てた。  “悪役令嬢が悪役をちゃんとしないからゲームのストーリーが進まないじゃない!”と。  怒ったルーニーは悪役令嬢を責める。  そして物語は動き出した…………── ※!!※細かい描写などはありませんが女性が酷い目に遭った展開となるので嫌な方はお気をつけ下さい。 ※!!※『子供が絵本のシンデレラ読んでと頼んだらヤバイ方のシンデレラを読まれた』みたいな話です。 ◇テンプレ乙女ゲームの世界。 ◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。 ◇ご都合展開。矛盾もあるかも。 ◇なろうにも上げる予定です。

処理中です...