土魔法で富国強兵?

克全

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出会いの章

小判

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「何だこれは」
 男は驚愕して、思わず叫んでいた。
 庭に小判が散乱していたのだ。
 この地区は、大昔には金山があった。
 だからと言って、小判が庭に散乱している訳がない。
 昨日まではそんな物なかったのだから。
 万が一あるとしても、少し離れた廃鉱山に隠されているか、山に埋められているはずだ。
「やっぱり、桃と緑だろうな」
 男は馬鹿ではない。
 桃と緑が急に激しく鳴いた事と、自分が小判の事を口にしたことから、魔法か何かで小判を創り出した事に気が付いていた。
 誰が見ている訳ではないが、男は慌てて小判を回収した。
 見つかったら大変なことになるのは分かっていた。
「ありがとう。桃、緑」
「「クォーン。クォーン。クォーン」」
 桃と緑は、甘えるような、自慢するような鳴き声をあげた。
 男は小判に困惑していたが、桃と緑にちゃんと御礼を言った。
 どれほど小判の扱いに困惑していても、男の為に桃と緑が小判を作ってくれたことは確かだ。
 それに対して御礼を口にしないなど、男にはありえない事だった。
 心から御礼を言うとともに、桃と緑を優しく撫でてあげた。
 桃と緑は、男の愛撫にうっとりとした表情を浮かべている。
 自分達がしたことを、男が喜んでいる。
 その事に満足している表情でもあり、単純に愛撫が気持ちい事でもある。
「せっかく桃と緑が創り出してくれたものだから、大切に使わないといけないな」
 男は和机の上に置いているパソコンを使う為に、別の部屋に移動した。
 以前は専用の机の上にパソコンを置いていたのだが、パソコンを使っている間も桃と緑が寂しい思いをしないように、パソコンを炬燵としても使える和机の上に移動させたのだ。
 ここならば、桃と緑を膝の上に乗せながらネットサーフィンをする事が出来る。
 動画の編集や投稿に時間をとられても、桃と緑に寂しい思いをさせないで済む。
 もう男には、桃と緑のいない生活は考えられないようになっていた。
 その生活を続けるためにも、せっかく創り出してくれた小判を、出来るだけ高値で売ろうとしていた。
 ネットで色々検索して、信頼出来そうなオークションサイトを探した。
 今住んでいる場所は僻地ではあるが、神戸と大阪なら日帰りで往復する事が出来る。
 直接足を運ぶことで、交通費と移動による時間浪費以上に利益が出るのなら、現地に行ってオークションに参加する事も考えていた。
 男は片手で桃と緑を愛撫しながら、時間をかけてオークション会場とオークションサイトを吟味していた。
 そしてようやく、一つのオークション会場を見つけた。
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