68 / 70
第一章
第68話:求婚
しおりを挟む
「大公殿下、我が国のベンジャミン王子はとても優秀な方でございます」
リンスター王国の特使が必死で王子のいい所をアピールしている。
最初は、以前のわずかな恩を盾に、有利に婚約を進めようとしていた。
だが我が国に対する政略結婚話の多さに危機感を覚えたようで、慌てて全権大使を送ってきたが、もう時すでに遅いのだ。
あの時のリンスター王国は、危険な状況に陥ったこちらから婚約を申し込ませて、あわよくば俺を廃嫡させて、ベンジャミン王子を次期大公にしたかったのだろう。
「特使殿、ベンジャミン王子が優秀なのは私も知っている。
知っているからこそ、あまりに年の離れた王子と我が娘の婚約はお断わりしたい。
オードリーはまだ三歳、サバンナなど一歳に過ぎないのだ。
適齢期になるまで王子に独身でいろとは言えない。
独身生活に耐えられなかったベンジャミン王子が、先に子供を作っていたら、後継者争いが起こるのは目に見ている。
そのような婚約を結ぶことは、我が娘にも王子にも不幸な事だからな」
「その心配はございません、大公殿下。
王子はとても品行方正な方で、結婚前に他の女性を妊娠させるような事は、絶対にありません」
「特使殿、これ以上不毛な会話を続ける訳にはいかないのだ。
大陸中の国々から、王侯貴族が子供たちとの婚約を求めてやって来ている。
貴君だけのために、これ以上時間を創るわけにはいかないのだ。
以前お世話になった事があるから、一番最初に時間を作ったのだが、具体的な条件を提示してくれないと、これ以上の時間は作れない」
「特使殿のお帰りである、次の特使殿に入って頂け」
セバスチャンが冷酷に言い放つが、リンスター王国の特使は逆らわない。
普通なら母国の威を借りて居丈高にするのだが、今の我が国が相手ではできない。
何かあれば俺の従魔従竜が母国に攻め込んで来るのだから。
いや、俺の従魔従竜の侵攻に合わせて、国境を接している全ての国が攻め込んでくるから、わずかでも不平不満を表に出す事はできない。
国力、戦闘力があると言うのはとても大きい事なのだな。
「大公殿下、お久しぶりでございます。
この度は格別のはからいをしていただき、感謝の言葉もございません」
ハミルトン王家の特使か、父上はともかく、よく母上が謁見を認められたな。
もう王都以外は寸土も無くなってしまった、ほぼ亡国となった王家だ。
その王都の住人もほとんどが逃げ去ってしまい、廃墟に近いありさまだと噂されているが、実際には、そこまでは荒廃していない。
王国内に張り巡らされた街道網の中心にあるのが王都だから、商人の出入りが多く、それなりの入城税が入っていると報告を受けている。
「ああ、そうだな、特別な待遇だな、だが貴卿には公爵時代に世話になった。
その世話になった代償に、最後の願いを聞いて謁見を認めてやった。
だが婚約話を受ける事はないぞ、分かっているな」
「はい、これだけ多くの王侯貴族が来られているのに、最も条件の悪いハミルトン王家が政略結婚の相手に認められるとは思っておりません。
正式な使者として公都に入れていただけた事を、大陸中に広められるだけで、私の役目は果たせたものと考えております」
ハミルトン王家にもまだ忠臣がいるのだな。
リンスター王国の特使が必死で王子のいい所をアピールしている。
最初は、以前のわずかな恩を盾に、有利に婚約を進めようとしていた。
だが我が国に対する政略結婚話の多さに危機感を覚えたようで、慌てて全権大使を送ってきたが、もう時すでに遅いのだ。
あの時のリンスター王国は、危険な状況に陥ったこちらから婚約を申し込ませて、あわよくば俺を廃嫡させて、ベンジャミン王子を次期大公にしたかったのだろう。
「特使殿、ベンジャミン王子が優秀なのは私も知っている。
知っているからこそ、あまりに年の離れた王子と我が娘の婚約はお断わりしたい。
オードリーはまだ三歳、サバンナなど一歳に過ぎないのだ。
適齢期になるまで王子に独身でいろとは言えない。
独身生活に耐えられなかったベンジャミン王子が、先に子供を作っていたら、後継者争いが起こるのは目に見ている。
そのような婚約を結ぶことは、我が娘にも王子にも不幸な事だからな」
「その心配はございません、大公殿下。
王子はとても品行方正な方で、結婚前に他の女性を妊娠させるような事は、絶対にありません」
「特使殿、これ以上不毛な会話を続ける訳にはいかないのだ。
大陸中の国々から、王侯貴族が子供たちとの婚約を求めてやって来ている。
貴君だけのために、これ以上時間を創るわけにはいかないのだ。
以前お世話になった事があるから、一番最初に時間を作ったのだが、具体的な条件を提示してくれないと、これ以上の時間は作れない」
「特使殿のお帰りである、次の特使殿に入って頂け」
セバスチャンが冷酷に言い放つが、リンスター王国の特使は逆らわない。
普通なら母国の威を借りて居丈高にするのだが、今の我が国が相手ではできない。
何かあれば俺の従魔従竜が母国に攻め込んで来るのだから。
いや、俺の従魔従竜の侵攻に合わせて、国境を接している全ての国が攻め込んでくるから、わずかでも不平不満を表に出す事はできない。
国力、戦闘力があると言うのはとても大きい事なのだな。
「大公殿下、お久しぶりでございます。
この度は格別のはからいをしていただき、感謝の言葉もございません」
ハミルトン王家の特使か、父上はともかく、よく母上が謁見を認められたな。
もう王都以外は寸土も無くなってしまった、ほぼ亡国となった王家だ。
その王都の住人もほとんどが逃げ去ってしまい、廃墟に近いありさまだと噂されているが、実際には、そこまでは荒廃していない。
王国内に張り巡らされた街道網の中心にあるのが王都だから、商人の出入りが多く、それなりの入城税が入っていると報告を受けている。
「ああ、そうだな、特別な待遇だな、だが貴卿には公爵時代に世話になった。
その世話になった代償に、最後の願いを聞いて謁見を認めてやった。
だが婚約話を受ける事はないぞ、分かっているな」
「はい、これだけ多くの王侯貴族が来られているのに、最も条件の悪いハミルトン王家が政略結婚の相手に認められるとは思っておりません。
正式な使者として公都に入れていただけた事を、大陸中に広められるだけで、私の役目は果たせたものと考えております」
ハミルトン王家にもまだ忠臣がいるのだな。
0
お気に入りに追加
293
あなたにおすすめの小説
異世界転生はどん底人生の始まり~一時停止とステータス強奪で快適な人生を掴み取る!
夢・風魔
ファンタジー
若くして死んだ男は、異世界に転生した。恵まれた環境とは程遠い、ダンジョンの上層部に作られた居住区画で孤児として暮らしていた。
ある日、ダンジョンモンスターが暴走するスタンピードが発生し、彼──リヴァは死の縁に立たされていた。
そこで前世の記憶を思い出し、同時に転生特典のスキルに目覚める。
視界に映る者全ての動きを停止させる『一時停止』。任意のステータスを一日に1だけ奪い取れる『ステータス強奪』。
二つのスキルを駆使し、リヴァは地上での暮らしを夢見て今日もダンジョンへと潜る。
*カクヨムでも先行更新しております。
【書籍化】パーティー追放から始まる収納無双!~姪っ子パーティといく最強ハーレム成り上がり~
くーねるでぶる(戒め)
ファンタジー
【24年11月5日発売】
その攻撃、収納する――――ッ!
【収納】のギフトを賜り、冒険者として活躍していたアベルは、ある日、一方的にパーティから追放されてしまう。
理由は、マジックバッグを手に入れたから。
マジックバッグの性能は、全てにおいてアベルの【収納】のギフトを上回っていたのだ。
これは、3度にも及ぶパーティ追放で、すっかり自信を見失った男の再生譚である。
異世界に転移した僕、外れスキルだと思っていた【互換】と【HP100】の組み合わせで最強になる
名無し
ファンタジー
突如、異世界へと召喚された来栖海翔。自分以外にも転移してきた者たちが数百人おり、神父と召喚士から並ぶように指示されてスキルを付与されるが、それはいずれもパッとしなさそうな【互換】と【HP100】という二つのスキルだった。召喚士から外れ認定され、当たりスキル持ちの右列ではなく、外れスキル持ちの左列のほうに並ばされる来栖。だが、それらは組み合わせることによって最強のスキルとなるものであり、来栖は何もない状態から見る見る成り上がっていくことになる。
転生者は力を隠して荷役をしていたが、勇者パーティーに裏切られて生贄にされる。
克全
ファンタジー
第6回カクヨムWeb小説コンテスト中間選考通過作
「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。
2020年11月4日「カクヨム」異世界ファンタジー部門日間ランキング51位
2020年11月4日「カクヨム」異世界ファンタジー部門週間ランキング52位
ギルドから追放された実は究極の治癒魔法使い。それに気付いたギルドが崩壊仕掛かってるが、もう知らん。僕は美少女エルフと旅することにしたから。
yonechanish
ファンタジー
僕は治癒魔法使い。
子供の頃、僕は奴隷として売られていた。
そんな僕をギルドマスターが拾ってくれた。
だから、僕は自分に誓ったんだ。
ギルドのメンバーのために、生きるんだって。
でも、僕は皆の役に立てなかったみたい。
「クビ」
その言葉で、僕はギルドから追放された。
一人。
その日からギルドの崩壊が始まった。
僕の治癒魔法は地味だから、皆、僕がどれだけ役に立ったか知らなかったみたい。
だけど、もう遅いよ。
僕は僕なりの旅を始めたから。
恋人の父親に「嫁にはやれん!」と云われたオレは・・・
もっちり道明寺♪
ファンタジー
恋人の父親に呼び出されたオレ!
長女が音信不通で、跡取りの可能性が高くなった彼女!
周りからは「結婚をして跡継ぎを!」と云われているのを知っていた。
そろそろ潮時だと思っていた・・・
マジ初投稿の、チョー初心者です!
一人称というか、独白(モノローグ)風にしか書けないので、少々判りにくいかもしれません。
お手柔らかにお願い致します! 2018/9/16
m(__)m
魔力値1の私が大賢者(仮)を目指すまで
ひーにゃん
ファンタジー
誰もが魔力をもち魔法が使える世界で、アンナリーナはその力を持たず皆に厭われていた。
運命の【ギフト授与式】がやってきて、これでまともな暮らしが出来るかと思ったのだが……
与えられたギフトは【ギフト】というよくわからないもの。
だが、そのとき思い出した前世の記憶で【ギフト】の使い方を閃いて。
これは少し歪んだ考え方の持ち主、アンナリーナの一風変わった仲間たちとの日常のお話。
冒険を始めるに至って、第1章はアンナリーナのこれからを書くのに外せません。
よろしくお願いします。
この作品は小説家になろう様にも掲載しています。
復讐完遂者は吸収スキルを駆使して成り上がる 〜さあ、自分を裏切った初恋の相手へ復讐を始めよう〜
サイダーボウイ
ファンタジー
「気安く私の名前を呼ばないで! そうやってこれまでも私に付きまとって……ずっと鬱陶しかったのよ!」
孤児院出身のナードは、初恋の相手セシリアからそう吐き捨てられ、パーティーを追放されてしまう。
淡い恋心を粉々に打ち砕かれたナードは失意のどん底に。
だが、ナードには、病弱な妹ノエルの生活費を稼ぐために、冒険者を続けなければならないという理由があった。
1人決死の覚悟でダンジョンに挑むナード。
スライム相手に死にかけるも、その最中、ユニークスキル【アブソープション】が覚醒する。
それは、敵のLPを吸収できるという世界の掟すらも変えてしまうスキルだった。
それからナードは毎日ダンジョンへ入り、敵のLPを吸収し続けた。
増やしたLPを消費して、魔法やスキルを習得しつつ、ナードはどんどん強くなっていく。
一方その頃、セシリアのパーティーでは仲間割れが起こっていた。
冒険者ギルドでの評判も地に落ち、セシリアは徐々に追いつめられていくことに……。
これは、やがて勇者と呼ばれる青年が、チートスキルを駆使して最強へと成り上がり、自分を裏切った初恋の相手に復讐を果たすまでの物語である。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる