上 下
54 / 70
第一章

第54話:イーライ城

しおりを挟む
「イーライ様には大公城とは別に、イーライ様個人の城を築城していただきます」

 セバスチャンが俺にやれと言ったのは、大砂漠の領民を護るための築城だった。
 今は数は少ないが、オアシス周辺には孤児たち元奴隷たちがいる。
 従魔の護りはあるが、城と言う護りの拠点がない。
 用水路を防衛の為の堀に利用しているし、城壁と同じ役割をする岩壁もある。
 だが民を収容して護る拠点、中核となり城がないのだ。
 普通に人力を利用して築城すれば十年くらいかかるのを、俺か短期で築城する。

「分かった、魔力にはいくらでも余裕があるから大丈夫だ。
 だが何人くらいを収容する予定の城を造ればいいのだ」

 今大砂漠にいる領民の数はとても少ないのだ。
 俺も大砂漠と言っているが、できれば全て耕作地にしたいし、いつかはできる。
 いつかはオアシスの水が縦横に広がり、大砂漠ではなくなるのだが、今直ぐは全ての砂漠を耕作地にする事は不可能だ。
 公爵家だった時代の大公領にいた奴隷を全てを集めても、大砂漠の万分の一も耕作地として利用できていない状態なのだ。

「左様でございますね、百万人を収容できる城を造って頂きたいですね」

「いくらなんでも百万人は多過ぎるんじゃないか。
 そんな城を一つ造るくらいなら、一万人を収容できる城を百造った方がいいんじゃないか、セバスチャン」

「心配は必要ありませんよ、イーライ様。
 城の内側を並の城以上に防御力のある区画で分けますから」

「それは、以前セバスチャンが教えてくれた、中国の城塞都市の条坊制か」

「中国だけではありませんよ。
 日本も朝鮮半島も、宮城都市はそうゆう建築様式になっております」

「へえ、そうなんだ、それは知らなかったよ。
 前世では城を見に行くどころか学校以外は家から出してももらえなかったからな。 
 日本の城の話しは、セバスチャンが教えてくれた江戸城とか大阪城とかくらいしか知らないよ」

「武士が、いえ、大名が造った城と、王や皇帝が宮城に住む全ての民を護る前提で都市計画した城では違うのです。
 日本では京都と奈良に造られた平安京と平城京くらいです」

「それもセバスチャンから教わったけれど、実感ないな」

「実感がなくても大丈夫でございますよ、イーライ様。
 これからご自身の手で城をお造り頂くので嫌でも実感していただけます」

 セバスチャンがとてもにこやかに話してくれるが、いつも以上にうれしそうだ。
 どうやら条坊制の城を造るのが楽しくて仕方がないようだ。
 もしかしたら、前世から城や建築が好きだったのかもしれない。
 そうだとしたら、少しはセバスチャンの役に立てるかもしれない。
 今までずっとセバスチャンに助けてもらってばかりだったから、何か少しでも助けられる事がるのなら、いや、よろこんでもらえることがあるのならうれしいな。

「イーライ様、セバスチャン様、もういいですか」

 ベラが孤児たちを代表して声をかけてきた。
 セバスチャンとの話が長くなって、孤児たちが愉しみにしている自由時間に食い込んでいて、俺と一緒に遊べなくなっているのだ。
 孤児たちをみてあらためて思う、彼らを護りたいと。
 そのためなら、全ての魔力を使ってでも堅固な城を造りたいと思う。
 もっとも、彼らを護るためにも、魔力を全部使ったりはしないけどな。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【書籍化】パーティー追放から始まる収納無双!~姪っ子パーティといく最強ハーレム成り上がり~

くーねるでぶる(戒め)
ファンタジー
【24年11月5日発売】 その攻撃、収納する――――ッ!  【収納】のギフトを賜り、冒険者として活躍していたアベルは、ある日、一方的にパーティから追放されてしまう。  理由は、マジックバッグを手に入れたから。  マジックバッグの性能は、全てにおいてアベルの【収納】のギフトを上回っていたのだ。  これは、3度にも及ぶパーティ追放で、すっかり自信を見失った男の再生譚である。

魔力値1の私が大賢者(仮)を目指すまで

ひーにゃん
ファンタジー
 誰もが魔力をもち魔法が使える世界で、アンナリーナはその力を持たず皆に厭われていた。  運命の【ギフト授与式】がやってきて、これでまともな暮らしが出来るかと思ったのだが……  与えられたギフトは【ギフト】というよくわからないもの。  だが、そのとき思い出した前世の記憶で【ギフト】の使い方を閃いて。  これは少し歪んだ考え方の持ち主、アンナリーナの一風変わった仲間たちとの日常のお話。  冒険を始めるに至って、第1章はアンナリーナのこれからを書くのに外せません。  よろしくお願いします。  この作品は小説家になろう様にも掲載しています。

ユニークスキルの名前が禍々しいという理由で国外追放になった侯爵家の嫡男は世界を破壊して創り直します

かにくくり
ファンタジー
エバートン侯爵家の嫡男として生まれたルシフェルトは王国の守護神から【破壊の後の創造】という禍々しい名前のスキルを授かったという理由で王国から危険視され国外追放を言い渡されてしまう。 追放された先は王国と魔界との境にある魔獣の谷。 恐ろしい魔獣が闊歩するこの地に足を踏み入れて無事に帰った者はおらず、事実上の危険分子の排除であった。 それでもルシフェルトはスキル【破壊の後の創造】を駆使して生き延び、その過程で救った魔族の親子に誘われて小さな集落で暮らす事になる。 やがて彼の持つ力に気付いた魔王やエルフ、そして王国の思惑が複雑に絡み大戦乱へと発展していく。 鬱陶しいのでみんなぶっ壊して創り直してやります。 ※小説家になろうにも投稿しています。

転生者は力を隠して荷役をしていたが、勇者パーティーに裏切られて生贄にされる。

克全
ファンタジー
第6回カクヨムWeb小説コンテスト中間選考通過作 「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。 2020年11月4日「カクヨム」異世界ファンタジー部門日間ランキング51位 2020年11月4日「カクヨム」異世界ファンタジー部門週間ランキング52位

異世界に転移した僕、外れスキルだと思っていた【互換】と【HP100】の組み合わせで最強になる

名無し
ファンタジー
突如、異世界へと召喚された来栖海翔。自分以外にも転移してきた者たちが数百人おり、神父と召喚士から並ぶように指示されてスキルを付与されるが、それはいずれもパッとしなさそうな【互換】と【HP100】という二つのスキルだった。召喚士から外れ認定され、当たりスキル持ちの右列ではなく、外れスキル持ちの左列のほうに並ばされる来栖。だが、それらは組み合わせることによって最強のスキルとなるものであり、来栖は何もない状態から見る見る成り上がっていくことになる。

ギルドから追放された実は究極の治癒魔法使い。それに気付いたギルドが崩壊仕掛かってるが、もう知らん。僕は美少女エルフと旅することにしたから。

yonechanish
ファンタジー
僕は治癒魔法使い。 子供の頃、僕は奴隷として売られていた。 そんな僕をギルドマスターが拾ってくれた。 だから、僕は自分に誓ったんだ。 ギルドのメンバーのために、生きるんだって。 でも、僕は皆の役に立てなかったみたい。 「クビ」 その言葉で、僕はギルドから追放された。 一人。 その日からギルドの崩壊が始まった。 僕の治癒魔法は地味だから、皆、僕がどれだけ役に立ったか知らなかったみたい。 だけど、もう遅いよ。 僕は僕なりの旅を始めたから。

どうも、命中率0%の最弱村人です 〜隠しダンジョンを周回してたらレベル∞になったので、種族進化して『半神』目指そうと思います〜

サイダーボウイ
ファンタジー
この世界では15歳になって成人を迎えると『天恵の儀式』でジョブを授かる。 〈村人〉のジョブを授かったティムは、勇者一行が訪れるのを待つ村で妹とともに仲良く暮らしていた。 だがちょっとした出来事をきっかけにティムは村から追放を言い渡され、モンスターが棲息する森へと放り出されてしまう。 〈村人〉の固有スキルは【命中率0%】というデメリットしかない最弱スキルのため、ティムはスライムすらまともに倒せない。 危うく死にかけたティムは森の中をさまよっているうちにある隠しダンジョンを発見する。 『【煌世主の意志】を感知しました。EXスキル【オートスキップ】が覚醒します』 いきなり現れたウィンドウに驚きつつもティムは試しに【オートスキップ】を使ってみることに。 すると、いつの間にか自分のレベルが∞になって……。 これは、やがて【種族の支配者(キング・オブ・オーバーロード)】と呼ばれる男が、最弱の村人から最強種族の『半神』へと至り、世界を救ってしまうお話である。

ゴミアイテムを変換して無限レベルアップ!

桜井正宗
ファンタジー
 辺境の村出身のレイジは文字通り、ゴミ製造スキルしか持っておらず馬鹿にされていた。少しでも強くなろうと帝国兵に志願。お前のような無能は雑兵なら雇ってやると言われ、レイジは日々努力した。  そんな努力もついに報われる日が。  ゴミ製造スキルが【経験値製造スキル】となっていたのだ。  日々、優秀な帝国兵が倒したモンスターのドロップアイテムを廃棄所に捨てていく。それを拾って【経験値クリスタル】へ変換して経験値を獲得。レベルアップ出来る事を知ったレイジは、この漁夫の利を使い、一気にレベルアップしていく。  仲間に加えた聖女とメイドと共にレベルを上げていくと、経験値テーブルすら操れるようになっていた。その力を使い、やがてレイジは帝国最強の皇剣となり、王の座につく――。 ※HOTランキング1位ありがとうございます! ※ファンタジー7位ありがとうございます!

処理中です...