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第一章

第45話:魔獣の進化

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 俺は従魔たちを連れて、王の軍に狙われている貴族家に急いで向かった。
 今回の件はセバスチャンにとっても予定外だったのだろう。
 もしセバスチャンが予測していたなら、事前に貴族領に行かせていたはずだ。
 そうしていれば、今回も転移魔術を使って即座に移動できた。
 だが、今回は行った事のない場初なので、転移魔術が使えない。 
 仕方がないので縮地魔術と駆足魔術を使って移動した。

 今回はセバスチャンがついて来なかった。
 恐らくだが、俺よりも父上の事が心配だったのだろう。
 そのせいで、俺はただ独りで貴族家の支援に行くことになってしまった。
 今回はとても急いでいるので、護衛騎士の移動速度に合わせていられないのだ。
 それを聞いた父上が貴族支援の方針を変えようとされたので、俺とセバスチャンで無言の圧力をかけて、黙っていてもらった。

 子煩悩で愛情深いのはとてもうれしいのだが、父上は大公に成られたのだ。
 自分の子供よりも、臣従を誓ってくれた家臣を大切にしなければいけない。
 それに、俺を見殺しにして家臣を助けると言っているわけではない。
 安全な移動を俺が一人で行うだけの話しなのだ。
 それに、一人とは言っても、それは人間の護衛がいないと言うだけの事だ。
 人間よりも遥かに信頼できて強力な、魔狼たちがついてくれているのだ。

「「「「「ウァオオオオオン」」」」」

 俺と高速で移動できる事を喜んで、魔狼たちが雄叫びをあげている。
 少し大きくなった白銀魔狼が一番俺に近い所にいる。
 以前より強く大きくなった青木魔狼と黄土魔狼も駆けている。
 今では青樹魔狼と黄岩魔狼に進化している。
 大砂漠で歩行種亜竜を狩らせてその肉を食べさせたことで、従魔たちは進化した。
 最低でもワンランクは強く大きくなってくれていた。

 だからこそ、手加減しているとはいえ、俺の駆足についてこれるのだ。
 それでも疲れてしまうので、交代で休憩してもらっている。
 俺の空間魔術も日に日に進化しているので、広大な亜空間が創れるようになった。
 生きた従魔や従竜を生きたまま亜空間に住ませる事ができるのだ。
 唯一の短所は、亜空間に住ませている従魔や従竜が必要とする魔力を、俺が供給してあげなければいけない事だ。

 まあ、今の俺の総魔力生産量を考えれば、万の従魔や従竜を住まわしても平気だ。
 だがそれは俺が生きている間だけの話しで、俺が死んだら亜空間も消滅する。
 それが分かっていて、亜空間を従魔従竜の定住先にはできない。
 一時的な休憩場所にするのが精々だが、将来は違う。
 魔術を研究して、魔力を消費しない亜空間を創り出せばいいのだ。
 魔力を必要としない安定した亜空間を創り出すことができれば、定住先にできる。

 それまでは、大砂漠を従魔従竜の仮の住処にすればいい。
 草食の従魔従竜には、魔力を含んだ魔境の草木を与えればいい。
 肉食の従魔従竜には、魔獣や魔蟲の肉を与えればいい。
 それでも魔力が足りないのなら、俺の魔力を直接与えればいいだけだ。
 その方が亜空間を創り出して定住させるよりも遥かに少ない魔力ですむ。
 そんな事を考えているうちに、俺の探知魔術に王の軍が引っかかった。

「さあ、全員出ておいで、お前達の出番だよ」

 俺は亜空間で休んでもらっていた全ての従魔に出てきてもらった。
 家臣や子供たちが従魔にできなかった、強い魔獣が全頭出てきてくれた。
 魔狼、魔犬、魔狗、魔虎、魔獅子、魔豹、魔犀、魔象、魔牛、魔鹿などなど。
 肉食も草食も雑食も関係なく、俺を慕ってくれる可愛い奴ら。
 群れを作る習性のある奴には、軍団として働いてもらう。
 群れを作る習性のない奴には、俺の護衛として側近くにいてもらう。

 もっとも、群れを作る習性の奴でも例外はいる。
 例外中の例外は白銀魔狼で、こいつは絶対に俺の側を離れない。
 青樹魔狼や黄岩魔狼よりも強いようで、二頭も逆らわない。
 当然だが青樹魔狼と黄岩魔狼も俺の側を譲らない。
 単独で強い魔虎や魔熊も、彼らに遠慮して少し離れた場所にいる。

「さあ、敵味方に死傷者を出さないように、しっかりと脅してきてくれ」
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