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第一章

第3話・転生でも夢でも、イーライ三歳

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 最初はセバスチャンの話しを信じることができなかった。
 いや、今でも信じているわけではない。
 転生でも夢でも構わないと割り切っただけだ。
 母と母の愛人に暴力を振るわれなければそれでいい。
 夢ならこのままずっと覚めないでいて欲しいと願うだけだ。
 もしかしたら、気絶したまま死にかけているのかもしれないしな。

「イーライ様、魔術を鍛錬しておられる間は集中されてください」

 初めてセバスチャンが日本語で話しかけてきた時には驚いた。
 それまでは、金髪碧眼の母上の話しが分かる事に何の疑いも浮かばなかった。
 だけど、セバスチャンに説明してもらってようやく分かった。
 転生した者はこちらの言葉が最初から分かるそうだ。
 地球の神様とこちらの神様の取り決めでそうなっているらしい。
 もしかしたら俺が夢の中でそう想像しているだけかもしれないが。

「分かりました、気をつけます」

 セバスチャンの話しでは、俺には莫大な魔力があると言う事だった。
 前世の虐待を克服して気持ちを抑えなければ、周りの者を傷つけるという。
 それだけは絶対に嫌だ、母や母の愛人と同じ人間にはなりたくないと思った。
 だからセバスチャンの言う通りにした。
 誰かを傷つけないように、頑張って魔力を使った。
 そのお陰で、最初に鼻血を出させた女性以外は傷つけないですんでいる。

 その点ではセバスチャンにはとても感謝している。
 だが、感謝はしているが、文句を言いたい事もある。
 セバスチャンののせいで。話し方が年より臭くなってしまった。
 特に日本語が、思いっきり年寄り臭い。
 頭に思い浮かぶのも若者言葉ではないし、書かされる文章も年寄り言葉だ。
 母や母の愛人は俺が恥ずかしくなるくらい若者言葉だったのに。

 嫌、駄目だ、母や母の愛人と同じような言葉を使うなんて絶対に嫌だ。
 それくらいなら年寄り臭い言葉遣いになった方がいい。
 それに、年寄り臭くなるのは日本語だけだ。
 この世界の言葉使いや文章は、教育係が公爵家に相応し使い方教えてくれている。
 長く学べば学ぶほど、セバスチャンの影響はなくなるはずだ。
 それにしても、なんでセバスチャンは俺に日本語を教えるんだろう。

「イーライ様、本当に集中して下さっていますか。
 これからお教えするのは、それでなくても多いイーライ様の魔力を、この世界を破壊しかねないくらい莫大な量に増やす方法です。
 覚悟がないようでしたら、お教えできませんよ」

「いや、もう大丈夫です。
 セバスチャンが言ってくれたように、殴られたら殴り返せる力を手に入れます。
 大切な人を護れる力が欲しいです」

「では、私がお教えした経絡経穴に添って魔力を流してください。
 それができたら、同じようにお教えしたチャクラに、魔力をいくらでも蓄えられると思ってください。
 そうですね、漫画やアニメにでてくる、何でも幾らでも入れられるポケットをイメージして頂ければ、簡単にできると思いますよ」

 ほとんど本もテレビも見た事のない俺だが、その漫画だけは知っている。
 いつも俺の事を心配してくれた奴が、学校に休み時間に本を貸してくれた。
 担任の先生にまで目をつけられた俺と話しをしてくれるのは、あいつだけだった。
 新聞社やテレビ局に俺の事を知らせてくれたのも、あいつだった。
 結局は握り潰されて余計に殴る蹴るされただけだったけど、感謝はしている。
 あいつを護れるくらいの力は欲しいからな。
 
「分かりました、やってみます」
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