浮気夫に怒りの鉄拳

克全

文字の大きさ
上 下
7 / 7
第一章

第7話:罠

しおりを挟む
「うぉおおおおお、死ねぇえええ!」

 私は渾身の一撃を魔人の胸に突き入れました。
 ここまで来るのに、苦手な駆け引きをしなければいけなかった。
 配下の騎士が突撃すると言い、私がハンドサインで指示すると言い放った。
 これにより、魔獣の指揮官は私たちの動きを知ることができなくなった。
 魔獣に指揮官が智謀の士なら、何か予測するなり、自分なりの策を施すのでしょうが、単に人間の言葉を聞いて指示をしていたのなら、これで動きを封じられる。

 そう思っていましたら、案の定指揮に迷いが見られました。
 配下の騎士が軽く前進しただけで、魔獣の群れを必要以上の後退させたのです。
 その後私が配下を一斉に後退させたら、魔獣の連携が崩れるのを無視して、私たちを逃がさないように、慌てて追撃させてきました。
 ですがこれは私が仕掛けた罠です、魔獣が追撃する事を計算の上で、十分に体制を整えた状態で誘ったのです。

 なので、連携の取れなくなった魔獣を、各個撃破に斃していきました。
 不意を突かれて奇襲され、こちらの体制が整わない状態で、考えられない連携を取る魔獣が相手で苦戦していましたが、個々に戦うのなら、我が配下の騎士と徒士は、魔獣に後れを取るような弱兵ではありません。
 瞬く間に多くの魔獣を斃してくれました。

 その間に私は、背後を護ってくれる側近だけを連れて、敵指揮官を急襲しました。
 敵に指揮官がいると考えた上で魔獣の動きを見れば、攻防の動きで指揮官のいる場所を推測する事は可能です。
 百パーセントの確率ではないが、自分を信じて一気に前進したら、案の定魔獣の指揮官がいましたが、なんと相手は魔人でした。

 本物魔人など初めて見ましたが、いつかで会う事もあるだろうと、過去の文献や古参の家臣や父上から魔人の話は聞いていました。
 時間をかけて魔術や魔力で攻撃されては厄介ですから、躊躇うことなく一気に距離を詰め、突きの一手で心臓を刺し貫いてやりました。
 たわいない結末のようですが、慎重に時間をかけていたら、遠方から強力な魔術攻撃を受けていたかもしれないですし、決断力の勝利だと思います。

「ウギャアアアアアア」

 断末魔の叫びをあげて、それでも最後のあがきで、魔人が鋭い爪で攻撃してきますが、私は魔人の胸を貫く槍を捨てて、後方に逃げながら腰の長剣を抜きました。
 破魔の魔力を帯びた槍が胸に突き刺さったままの方が、確実に魔人を斃せると思ったのですが、その考えは正解だったようです。
 二メートルを軽く超える巨漢だった身体が、見る見る小さく萎んでいきました。
 そしてなんと、スルトの姿になったのです!

「スルト、スルト、これはどういう事です!
 お前が何故魔人に変化しているのです?!
 答えなさい、スルト!」

 私は激しくスルトに質問しましたが、もうスルトは絶命してしまっていました。
しおりを挟む
感想 0

この作品の感想を投稿する

あなたにおすすめの小説

モラハラ王子の真実を知った時

こことっと
恋愛
私……レーネが事故で両親を亡くしたのは8歳の頃。 父母と仲良しだった国王夫婦は、私を娘として迎えると約束し、そして息子マルクル王太子殿下の妻としてくださいました。 王宮に出入りする多くの方々が愛情を与えて下さいます。 王宮に出入りする多くの幸せを与えて下さいます。 いえ……幸せでした。 王太子マルクル様はこうおっしゃったのです。 「実は、何時までも幼稚で愚かな子供のままの貴方は正室に相応しくないと、側室にするべきではないかと言う話があがっているのです。 理解……できますよね?」

【完結】お父様、こんな男を婚約者として紹介するなんて、恨みますわよ?物理的に…

BBやっこ
恋愛
貴族令嬢の婚約ちは、家同士の繋がりを強化する事。 幸せを勝ち取ってみせる! そんな気合いと反比例に、碌な男を紹介してくれない父親に 薔薇の花びらのような…を贈ろうか。 キレた。

いちゃつきを見せつけて楽しいですか?

四季
恋愛
それなりに大きな力を持つ王国に第一王女として生まれた私ーーリルリナ・グランシェには婚約者がいた。 だが、婚約者に寄ってくる女性がいて……。

妻の遺品を整理していたら

家紋武範
恋愛
妻の遺品整理。 片づけていくとそこには彼女の名前が記入済みの離婚届があった。

白い結婚は無理でした(涙)

詩森さよ(さよ吉)
恋愛
わたくし、フィリシアは没落しかけの伯爵家の娘でございます。 明らかに邪な結婚話しかない中で、公爵令息の愛人から契約結婚の話を持ち掛けられました。 白い結婚が認められるまでの3年間、お世話になるのでよい妻であろうと頑張ります。 小説家になろう様、カクヨム様にも掲載しております。 現在、筆者は時間的かつ体力的にコメントなどの返信ができないため受け付けない設定にしています。 どうぞよろしくお願いいたします。

【完結】真実の愛はおいしいですか?

ゆうぎり
恋愛
とある国では初代王が妖精の女王と作り上げたのが国の成り立ちだと言い伝えられてきました。 稀に幼い貴族の娘は妖精を見ることができるといいます。 王族の婚約者には妖精たちが見えている者がなる決まりがありました。 お姉様は幼い頃妖精たちが見えていたので王子様の婚約者でした。 でも、今は大きくなったので見えません。 ―――そんな国の妖精たちと貴族の女の子と家族の物語 ※童話として書いています。 ※「婚約破棄」の内容が入るとカテゴリーエラーになってしまう為童話→恋愛に変更しています。

婚約破棄の破棄は了承しましたが、彼女と別れる必要はありませんよ

青葉めいこ
恋愛
私が欲しいのは、あなたの○○なので。 小説家になろうにも投稿しています。

もういいです、離婚しましょう。

うみか
恋愛
そうですか、あなたはその人を愛しているのですね。 もういいです、離婚しましょう。

処理中です...