浮気夫に怒りの鉄拳

克全

文字の大きさ
上 下
4 / 7
第一章

第4話:報復・スルト視点

しおりを挟む
「ラメリア王妃殿下、どうかウラント公爵家をお救いください。
 もし兵を差し向けてくださるのなら、ウラント公爵家は全てをなげうって、ミズン王国のために尽くします。
 ミズン王国軍を迎え入れ、ロワード王家の貴族士族を調略いたします」

「ほっほっほっほっ、それは頼もしい事です。
 ですが、今のウラント公爵家にそれほどの力がありますか?
 キレル卿も愚かな事、貴男の事など見捨てて、我らと手を組んでいれば、今頃大公か属国王に成れたものを、おっほっほっほっほっ!」

 屈辱で顔が真っ赤になっているのが自分でもわかる。
 ラメリア王妃は俺の事を嬲って楽しんでいるのだ。
 私の悔しがる姿を、ブドウ王との性交のアクセントにして楽しむつもりだ。
 その程度の事は、色事を極めた私はお見通しだ。
 それでも、分かっていても、この屈辱感はどうしようもない。
 ノヴァの鉄拳を喰らって歪み陥没した鼻のように、取り返しのつかない事だ。

「確かにウラント公爵家は多くの領地と軍資金を失いましたが、まだ大魔境を持っています、大魔境に隠してある魔物軍を使えば、王家王国に一泡吹かせられます。
 どうかロワード王国の乗っ取りに手をお貸しください」

「おっほっほっほっほっ、先ほどとは言っている事が違いますね。
 先程は先兵となると言っていたのに、今は王国簒奪に手を貸せと言う。
 今言った王国簒奪がお前の本音でしょう。
 私の力を利用しようと思ったのでしょうが、そうはいきません。
 私を甘く見た報い、受けてもらいましょうか」

「え、いや、それは、違うのです、言葉を間違えただけで……」

 ラメリア王妃の目が、まるで血の色のように真っ赤になっている。
 その眼に見つめられるだけで、全身の力は抜けていく。
 このままではいけない、逃げるべきだと分かっているのに、身体が全く動かない。
 このままここにいたら、自分が自分でなくなってしまうのが分かる。
 この国に送られてから聞いた噂、ラメリア王妃は悪魔に魂を売っているという。
 悪魔に力を得ているからこそ、ブドウ王を籠絡することができたという。

 もしその噂が本当なら、私もラメリア王妃の操り人形にされてしまう。
 そんな事に成ったら、私のためにウラント公爵家を傾けてくださった、愛情豊かな父上に申し訳ない。
 それに、私には譲れない絶対の願いがある。
 私を陥れた元妻のノヴァに復讐する事、これだけは絶対に成し遂げたい。
 私の愛を受け入れないばかりか、顔に青あざをつけて大恥をかかせた女。

 その所為で使用人にも馬鹿にされ、父上にも叱責された。
 私が気に喰わなければ愛人を作ればいいものを、誰にも相手にされず、私の寝室を覗いては嫉妬の炎を燃え上がらせていた卑しい女。
 夫が不能で困っている貴婦人を助けていただけなのに、自分の性的不満を貴族のマナー違反だとすり替え騒ぎ立て、ウラント公爵家を追い込んだ極悪人。
 ノヴァに復讐するまでは、絶対に死ぬわけにはいかないのだ!
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

襲ってきた王太子と、私を売った婚約者を殴ったら、不敬罪で国外追放されました。

克全
恋愛
「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。

【完結】従姉妹と婚約者と叔父さんがグルになり私を当主の座から追放し婚約破棄されましたが密かに嬉しいのは内緒です!

ジャン・幸田
恋愛
 私マリーは伯爵当主の臨時代理をしていたけど、欲に駆られた叔父さんが、娘を使い婚約者を奪い婚約破棄と伯爵家からの追放を決行した!     でも私はそれでよかったのよ! なぜなら・・・家を守るよりも彼との愛を選んだから。

妹に傷物と言いふらされ、父に勘当された伯爵令嬢は男子寮の寮母となる~そしたら上位貴族のイケメンに囲まれた!?~

サイコちゃん
恋愛
伯爵令嬢ヴィオレットは魔女の剣によって下腹部に傷を受けた。すると妹ルージュが“姉は子供を産めない体になった”と嘘を言いふらす。その所為でヴィオレットは婚約者から婚約破棄され、父からは娼館行きを言い渡される。あまりの仕打ちに父と妹の秘密を暴露すると、彼女は勘当されてしまう。そしてヴィオレットは母から託された古い屋敷へ行くのだが、そこで出会った美貌の双子からここを男子寮とするように頼まれる。寮母となったヴィオレットが上位貴族の令息達と暮らしていると、ルージュが現れてこう言った。「私のために家柄の良い美青年を集めて下さいましたのね、お姉様?」しかし令息達が性悪妹を歓迎するはずがなかった――

【完結】不貞三昧の夫が、『妻売り』すると聞いたので

との
恋愛
神も国法も夫の不貞如きでは離婚を認めない『離婚、暗黒時代』に、庶民の間では『妻売り』が行われていた。 妻を縄で縛り、公開の場で競りを行う『妻売り』は悪習か、やむにやまれぬ者達が捻り出した奇策か⋯⋯。 結婚前から愛人を作り、2度としないと言う約束で結婚したはずなのに⋯⋯愛人を作り続ける夫と離婚できない主人公アイラ。 夫が『妻売り』すると言いながら、競りの参加者を募っている場に遭遇したアイラは⋯⋯何を考え、どんな行動に出るのか。 『妻売り』自体は本当にあったお話ですが、このお話は⋯⋯もちろん、フィクション。 ーーーーーー ゆるふわの中世ヨーロッパ、幻の国の設定です。 8話で完結、公開予約設定済み。 R15は念の為・・

完結 お貴族様、彼方の家の非常識など知りません。

音爽(ネソウ)
恋愛
身分を笠に好き勝手する貴族たち、そんな状況を民が許すわけがなかった。 時代が変わりかけたそんな時の話。 アンブラ男爵家はとにかく見栄を張りたがる、そうして膨れ上がった借金を押し付けようと、最近頭角を現したソランズ商会に目を付けた。 「そうはいきません、貴方方の作った負債はご自分で!」 気の強いエミリアは大人しく嫁に行くものかと抗うのだ。

モラハラ王子の真実を知った時

こことっと
恋愛
私……レーネが事故で両親を亡くしたのは8歳の頃。 父母と仲良しだった国王夫婦は、私を娘として迎えると約束し、そして息子マルクル王太子殿下の妻としてくださいました。 王宮に出入りする多くの方々が愛情を与えて下さいます。 王宮に出入りする多くの幸せを与えて下さいます。 いえ……幸せでした。 王太子マルクル様はこうおっしゃったのです。 「実は、何時までも幼稚で愚かな子供のままの貴方は正室に相応しくないと、側室にするべきではないかと言う話があがっているのです。 理解……できますよね?」

義母の秘密、ばらしてしまいます!

四季
恋愛
私の母は、私がまだ小さい頃に、病気によって亡くなってしまった。 それによって落ち込んでいた父の前に現れた一人の女性は、父を励まし、いつしか親しくなっていて。気づけば彼女は、私の義母になっていた。 けれど、彼女には、秘密があって……?

父が再婚してから酷い目に遭いましたが、最終的に皆罪人にして差し上げました

四季
恋愛
母親が亡くなり、父親に新しい妻が来てからというもの、私はいじめられ続けた。 だが、ただいじめられただけで終わる私ではない……!

処理中です...