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第一章
第23話:惰弱・皇太子視点
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眼の前には怯えた表情を浮かべて震えているニルラル公爵がいる。
地位に相応しいと言うべきか、それとも相応しくないと言うべきか。
惰弱としか言いようのない、腑抜けた男だ。
先程からこいつが口にしているのは「全部妻がやった事です」と「妻が王妹だったので逆らえなかったんです」の二つだけだ。
このような卑怯者は直ちに首を刎ねたいのだが、真聖女を大魔境に捨てさせた罪に相応しい罰が分からないので、今直ぐ殺すことができないでいる。
「城内を徹底的に調べさせておりますが、現在の所は公爵が自供した抜け道と隠し部屋以外発見されていません。
ジーガン卿が城の従僕と侍女の協力させたいと申されておりますが、許可していただけるでしょうか?」
なるほど、この城の事をよく知っている非戦闘員に協力させるのだな。
戦闘力のある従僕や侍女もいるだろうが、そんな連中を自由にさせるジーガン卿ではないからな。
それにしても、抜け道と隠し部屋か、公爵も色々用心していたのだな。
まあ、当代とは限らないが。
「許可しよう、それで、拷問役はどうなっている?」
「ひぃいいい、お許しください、お許しください。
本当に妻が全部やったのです、私は関係ないのです。
公爵の私には、王妹に逆らうことができなかったのです」
もう何度も同じことを聞かされて、いい加減腹も立たなくなってきた。
こいつが良識的な先妻を疎んじて、積極的に殺害に走った事は、心ある従僕や侍女の証言で明らかになっている。
真聖女を捨てることに関しても、既にビエンナビエンナが妊娠していたので、何の躊躇いもなしに捨てたという証言が集まっている。
まあ、従僕や侍女が保身に走ってこちらが喜ぶ証言をしている可能性もあるがな。
「こいつを黙らせろ、耳が腐る。
こいつを閉じ込めておく場所はまだ決まらないのか?」
「捜索に従僕や侍女が加わりましたら、監視の騎士を都合できるとジーガン卿が申されていましたから、今しばらくお待ちください」
護衛の騎士がそう言うなり公爵を殴りつけて黙らせた。
鍛え抜かれた騎士が本気で殴ると簡単に死ぬから、随分と手加減したようだ。
ピクピクと痙攣しているが、死んでいないのは胸が上下しているのでわかる。
だが、顎の骨は粉砕されているようで、みるみる下顎が血袋のようになっている。
これくらい痛めつけたら拷問の代わりになるかもしれない。
いっそ両足の骨を砕いてやろうか?
骨を砕いて塔に放り込んでおけば、逃げる事はできないだろう。
地位に相応しいと言うべきか、それとも相応しくないと言うべきか。
惰弱としか言いようのない、腑抜けた男だ。
先程からこいつが口にしているのは「全部妻がやった事です」と「妻が王妹だったので逆らえなかったんです」の二つだけだ。
このような卑怯者は直ちに首を刎ねたいのだが、真聖女を大魔境に捨てさせた罪に相応しい罰が分からないので、今直ぐ殺すことができないでいる。
「城内を徹底的に調べさせておりますが、現在の所は公爵が自供した抜け道と隠し部屋以外発見されていません。
ジーガン卿が城の従僕と侍女の協力させたいと申されておりますが、許可していただけるでしょうか?」
なるほど、この城の事をよく知っている非戦闘員に協力させるのだな。
戦闘力のある従僕や侍女もいるだろうが、そんな連中を自由にさせるジーガン卿ではないからな。
それにしても、抜け道と隠し部屋か、公爵も色々用心していたのだな。
まあ、当代とは限らないが。
「許可しよう、それで、拷問役はどうなっている?」
「ひぃいいい、お許しください、お許しください。
本当に妻が全部やったのです、私は関係ないのです。
公爵の私には、王妹に逆らうことができなかったのです」
もう何度も同じことを聞かされて、いい加減腹も立たなくなってきた。
こいつが良識的な先妻を疎んじて、積極的に殺害に走った事は、心ある従僕や侍女の証言で明らかになっている。
真聖女を捨てることに関しても、既にビエンナビエンナが妊娠していたので、何の躊躇いもなしに捨てたという証言が集まっている。
まあ、従僕や侍女が保身に走ってこちらが喜ぶ証言をしている可能性もあるがな。
「こいつを黙らせろ、耳が腐る。
こいつを閉じ込めておく場所はまだ決まらないのか?」
「捜索に従僕や侍女が加わりましたら、監視の騎士を都合できるとジーガン卿が申されていましたから、今しばらくお待ちください」
護衛の騎士がそう言うなり公爵を殴りつけて黙らせた。
鍛え抜かれた騎士が本気で殴ると簡単に死ぬから、随分と手加減したようだ。
ピクピクと痙攣しているが、死んでいないのは胸が上下しているのでわかる。
だが、顎の骨は粉砕されているようで、みるみる下顎が血袋のようになっている。
これくらい痛めつけたら拷問の代わりになるかもしれない。
いっそ両足の骨を砕いてやろうか?
骨を砕いて塔に放り込んでおけば、逃げる事はできないだろう。
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