運よく生まれ変われたので、今度は思いっきり身体を動かします!

克全

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第1章

第55話:行商の廃業

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 開拓村は、すぐ隣に行商人村ができた事で、使える人数が増えた。
 特に農作業をしない行商人の家族を見張りに使えるようになった。

 1番外側に造られた里山蔦壁は両村を同時に守っているので、城門は人手が余っている行商人の家族が番をしていた。

 当番以外の時間は、開拓村に雇われて農作業をしたり、里山に入って山の恵みを集めたりしているが、1番の役目は里山蔦壁内に敵を入れない事だった。

 行商人の家族は、以前に滅ぼされた行商人村の悲劇を聞かされている。
 特に行商人の子供に生まれた者は、子守唄と同時に聞かされて育っている。
 自分たちの村を襲って来る者に情け容赦はしない。

 城門前に敵が現れた時点で。襲撃を知らせる太鼓が叩かれる。
 奇襲が失敗したと知った敵は、破城槌で城門を破壊しようとする。
 流石に高く厚く鋭い棘の生えた蔦壁を越えようとする者はいなかった。

 だが、僕が奥山でも1番硬い樹木を成長させて造った城門は簡単に破壊できない。
 何度数十人で勢いをつけて叩きつけようと、ビクともしない。
 普通ならここで諦めるのだが、ここで神与スキルをでてくる。

 硬い物を壊すスキル、剣の切れ味が良くなるスキル、打撃が強くなるスキル、火を放つスキル、水を放つスキル、木を燃えやすくするスキル等々がある。
 敵は複数のスキルを使って里山蔦壁の中に入ろうとした。

 木を燃えやすくするスキルと火を放つスキルを使って、城門と蔦壁を燃やそうとしたのが1つ。

 2つ目は、ジャンプ力が強くなるスキル、身体全部が強化できるスキル、空を飛べるスキル、等を使って蔦壁の中に入って城門を開けさせる。

 3つ目は木属性を使って蔦壁を動かして抜け穴を作る。
 4つ目が土属性を使って蔦壁の下にトンネルを作る。

 どれもこれも良い手のように思えるのだが、全て魔力の量によってできる事が限られてしまうので、一瞬で思い通りにできる訳ではない。
 僕のような無尽蔵の魔力を持つ者など、この世界に1人もいないはずだ。

 1つ目の火を使って燃やす事で、蔦壁や城門を破壊して里山の中に入ろうとしていた者たちは、城門は燃やせたが厚い生きた蔦の壁は1度では燃やせなかった。

 それに、城門を燃やしても直ぐに中に入れなかった。
 城門は外と中と内の3枚もあるのだ、1枚は破壊しても直ぐには入れない。
 2枚目と3枚目を破壊しなければ里山蔦壁は突破できないのだ。

 僕はとても慎重なので、1番弱い城門の場所は、蔦壁のトンネルにしてある。
 外から見ただけでは分からないが、城門左右の蔦壁が内側に続いているのだ。

 2つ目の、何らかのスキルで蔦壁を超える方法は、半数以上が失敗して蔦壁の上に落ちたが、半数弱の4人は成功して中に入った。

 だが、僕のお願いを聞いてくれるロック鶏が直ぐに排除してくれた。
 軽く羽ばたいて即座に里山の外に放り出した。

 3つ目は魔力が足らなくて十分な大きさと長さの穴があけられなかった。
 4つ目も同じで、魔力が足らなくてトンネルの深さと長さが足らなかった。

 それでも時間があれば成功したのだろうが、ロック鶏たち反撃を受けた。
 僕の願い通り殺さない程度の反撃だが、伝説の怪鳥と同じくらい巨大な鶏に襲われるのだから、その恐怖はとてつもない。

 しかも、鳥が相手なら夜は目が見えないから大丈夫と思っていたようで、自分たちを睨むロック鶏の目に、一生忘れられない恐怖を受け付けられたそうだ。
 僕には分からないが、ロック鶏の目が怖いと言う人は多い。

 普通なら開拓村と行商人村が襲われても、行商中の僕たちには分からない。
 でも僕はほぼ毎晩開拓村に帰っているので、半日で知ることができる。

 その日は偶々開拓村にいなかったが、普通は開拓村で寝ている。
 少なくても2日連続で家を空ける事はないので、翌日には知ることができる。

 攻撃を受けたのを知ったのは、信じられないくらい大きくて長い滝の側で泊まった翌日、行商隊に合流する前に両親の顔を寄った時だ。
 急いで事情をジョセフ行商隊代表に話したら……

「分かった、こちらも黙ってやられっぱなしではいられない。
 ケーンのロック鶏という、とんでもない力を利用できるのだ。
 最大限利用して愚かな領主に思い知らせてやる」

 ジョセフ代表はそう言って交渉中の商売を中止した。
 驚き頼む村人には、愚かな領主の行いを説明して、今後行商は辞めると宣言した。
 それはその日商売をする予定の村だけでなく、全ての街や村に対してだった。

 行商隊はもっとも早い行程を選んで開拓村と行商村に戻る事になった。
 途中にある都市、街、村に人をやって、愚かな領主の襲撃を伝え、家族を守るために行商を辞めると伝えた。

 行商人しか生活に必要な物を売りに来てくれる者がいない村は、大騒ぎになった。
 人間は塩がなければ生きていけないのだ。
 どうしても塩が必要になり、1人2人で買い出しに行っても獣に喰われて終りだ。

 それなりに人数がいる街は、住民が集まって塩を買いにでるだろう。
 人数が少ない村の行動は2つに分かれるだろう。

 1つは新しい行商人が来るのを待つ、1つは村を捨てて大きな街に逃げるだろうとジョセフ代表は言っていた。
 
 だが、待っていても他の行商人が来る事はないとも言っていた。
 長年の経験がなければ、何十人いようと行商などできない。
 獣に食べられなくても、商売で利益を上げられない。

 行商隊以上の時間と費用をかければ、品物自体は運べるかもしれないが、利益が上がるほどの値段で売ろうとしたら、小さな村の人たちが買える値段ではなくなる。
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