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第1章
第44話:家族だんらん
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以前は長くても3日だった行商隊の村たいざいが4日目を迎えた。
行商人たちの村にもなったのだから、当然なのだが、ちょっと困る。
僕としては4日目にはまた旅に行けると思っていたから。
ただ、良かった事もある。
長く村にいる事で、西側に造った家がどんどん大きく良くなっていく。
畑にできる場所は少ないけれど、季節ごとに実る果樹を増やした。
西里山に生えている樹木の半数とは言わないけれど、開拓村に生えている果樹林の10倍はあるから、それだけで1000人は生きて行けると思う。
栗の実は直ぐに虫にやられてしまうと思っていたけれど、行商している間に食べ物を保存する方法を色々と教えてもらえた。
今はウィロウがいるから新鮮な食べ物をいくらでも持ち歩けるけれど、以前は売る物と自分たちが食べる物を、どう配分して運ぶかに命がかかっていたそうだ。
行商人としてお金を稼ぐためには、できるだけ売る物を多く運びたいけれど、自分たちが食べる物を粗末にし過ぎると、死ぬ事もあったそうだ。
特に新鮮な食べ物を集め難い冬の行商は、とても辛かったので、色々と食べ物の保存方法を聞き集めたと言っていた。
その1つに、とても我が家に向いた方法が有った。
それが栗の酒漬けで、半年は保存できると言うのだ。
新しく造った東の拠点は畑が少なくて、そこだけで収穫できる穀物は少ないけれど、栗や果物は山のように収穫できる。
焼くか煮るかした栗を、ワインやシードルに漬けておくだけで半年保存できるのなら、主食のパン代わりに栗の酒漬けを食べればいい。
「おいしい、お兄ちゃんの果物もお母さんのお菓子も美味しけれど、この栗とてもおいしい!」
「本当に美味しいな、甘い物は苦手だったが、これなら美味しく食べられる」
「うふぅふふふ、試食した時も美味しいと思ったけれど、こうしてゆっくりと食べると一段と美味しいわね」
栗の酒漬けの試食として、ワインやシードルを始めとした、各種の酒で煮た栗をお母さんに作ってもらったのだ。
最初は自分で作って見たのだが、あまりの手際の悪さに、お母さんに台所から追い出されてしまったのだ。
最初からお母さんに甘えたわけではないぞ!
ちゃんと自分でやれる事は自分でやろうとしたのだ……できなかったけど。
妹たちには、砂糖大根から作った黒砂糖を加えて煮た栗や、果実水で煮た栗も出してあげたが、煮汁も残さずに飲んでいた。
「どうかな、西の里山で暮らす事になって、穀物があまり収穫できなくなったら、この栗を主食にできるかな?」
「う~ん、そうだな、別にこの栗でなくても、ワインやシードルでも主食の代わりにできるから、そんなに心配しなくても大丈夫だぞ」
「そうよ、お母さんたちが傭兵や冒険者をしていた頃は、水と干肉だけで何十日も頑張った事があるし、酒だけで何十日も暮らした事もあるわ」
「いや、お父さんとお母さんなら平気でも、エヴィーたちが苦しむから」
「だいじょうぶだよ、しんぱいいらないよ」
「本当に大丈夫か、ワインやシードルばかりで本当にいのか?」
「ほしたくだものがあるんでしょう?」
「ああそうだな、果物なら山のようにあるから、ドライフルーツはたくさんあるよ」
「だったらだいじょうぶ、わたし、リンゴを干した物もブドウを干した物もイチジクを干した物もだいすきだから!」
「ほらな、だいじょうぶだろ、ケーンが成長させた果物とは比べ物にならないが、それでも果物を干した物は甘くて美味しい、子供たちはみんな大好きだ」
「そうよ、心配ばかりしていないで、ケーンも家にいる時間を楽しみなさい」
お父さんとお母さんにこう言われてしまうと、直ぐに旅に行きたいと思っている自分が親不孝過ぎると思ってしまった。
そんな親不孝だけど、家族の事を心配しているのは本当だ。
だから、家族だんらんが終わってからも蔦壁を造った。
ロック鶏に餌をあげて愛情を注いだ。
不思議なのだが、もっと小さい頃から一緒に暮らし、わずかな期間だが乗馬まで教えてくれた馬よりも、ロック鶏の方が可愛い。
助けてあげた事に恩に感じているのか、常に愛情あふれる表現をしてくれる母牛や子牛よりも、ロック鶏の方を可愛く思ってしまう。
ロック鶏も僕の気持ちがなんとなくわかるようで、何も言わないのに西の里山にある少ない平地の樹木を、啄んだり蹴ったりして倒してくれる。
そのお陰で、直ぐに種蒔きができるくらい深く耕せている。
開拓村の畑よりも効率は悪いけれど、これで穀物も収穫できる。
一家で西の畑に移住する事になっても、妹たちは大好きなドライフルーツを入れたパンやお菓子を食べ続けられる。
翌朝は僕だけ朝遅くまで眠らせてもらった。
1日働く前の食事は肉や卵をたくさん使った物が普通だ。
僕がいたら野菜や果物、良くてチーズやバターを使った物になる。
僕のせいで家族が食べたい物を食べられないなんて我慢できない。
お昼は元々食べられなかったのが、僕のスキルで食べられるようになったから、パンと果物、チーズとバターに決まった。
それに、後でお父さんとお母さんに合流して畑仕事だ。
約束通り、できるだけ一緒にいるようにする。
行商人たちの村にもなったのだから、当然なのだが、ちょっと困る。
僕としては4日目にはまた旅に行けると思っていたから。
ただ、良かった事もある。
長く村にいる事で、西側に造った家がどんどん大きく良くなっていく。
畑にできる場所は少ないけれど、季節ごとに実る果樹を増やした。
西里山に生えている樹木の半数とは言わないけれど、開拓村に生えている果樹林の10倍はあるから、それだけで1000人は生きて行けると思う。
栗の実は直ぐに虫にやられてしまうと思っていたけれど、行商している間に食べ物を保存する方法を色々と教えてもらえた。
今はウィロウがいるから新鮮な食べ物をいくらでも持ち歩けるけれど、以前は売る物と自分たちが食べる物を、どう配分して運ぶかに命がかかっていたそうだ。
行商人としてお金を稼ぐためには、できるだけ売る物を多く運びたいけれど、自分たちが食べる物を粗末にし過ぎると、死ぬ事もあったそうだ。
特に新鮮な食べ物を集め難い冬の行商は、とても辛かったので、色々と食べ物の保存方法を聞き集めたと言っていた。
その1つに、とても我が家に向いた方法が有った。
それが栗の酒漬けで、半年は保存できると言うのだ。
新しく造った東の拠点は畑が少なくて、そこだけで収穫できる穀物は少ないけれど、栗や果物は山のように収穫できる。
焼くか煮るかした栗を、ワインやシードルに漬けておくだけで半年保存できるのなら、主食のパン代わりに栗の酒漬けを食べればいい。
「おいしい、お兄ちゃんの果物もお母さんのお菓子も美味しけれど、この栗とてもおいしい!」
「本当に美味しいな、甘い物は苦手だったが、これなら美味しく食べられる」
「うふぅふふふ、試食した時も美味しいと思ったけれど、こうしてゆっくりと食べると一段と美味しいわね」
栗の酒漬けの試食として、ワインやシードルを始めとした、各種の酒で煮た栗をお母さんに作ってもらったのだ。
最初は自分で作って見たのだが、あまりの手際の悪さに、お母さんに台所から追い出されてしまったのだ。
最初からお母さんに甘えたわけではないぞ!
ちゃんと自分でやれる事は自分でやろうとしたのだ……できなかったけど。
妹たちには、砂糖大根から作った黒砂糖を加えて煮た栗や、果実水で煮た栗も出してあげたが、煮汁も残さずに飲んでいた。
「どうかな、西の里山で暮らす事になって、穀物があまり収穫できなくなったら、この栗を主食にできるかな?」
「う~ん、そうだな、別にこの栗でなくても、ワインやシードルでも主食の代わりにできるから、そんなに心配しなくても大丈夫だぞ」
「そうよ、お母さんたちが傭兵や冒険者をしていた頃は、水と干肉だけで何十日も頑張った事があるし、酒だけで何十日も暮らした事もあるわ」
「いや、お父さんとお母さんなら平気でも、エヴィーたちが苦しむから」
「だいじょうぶだよ、しんぱいいらないよ」
「本当に大丈夫か、ワインやシードルばかりで本当にいのか?」
「ほしたくだものがあるんでしょう?」
「ああそうだな、果物なら山のようにあるから、ドライフルーツはたくさんあるよ」
「だったらだいじょうぶ、わたし、リンゴを干した物もブドウを干した物もイチジクを干した物もだいすきだから!」
「ほらな、だいじょうぶだろ、ケーンが成長させた果物とは比べ物にならないが、それでも果物を干した物は甘くて美味しい、子供たちはみんな大好きだ」
「そうよ、心配ばかりしていないで、ケーンも家にいる時間を楽しみなさい」
お父さんとお母さんにこう言われてしまうと、直ぐに旅に行きたいと思っている自分が親不孝過ぎると思ってしまった。
そんな親不孝だけど、家族の事を心配しているのは本当だ。
だから、家族だんらんが終わってからも蔦壁を造った。
ロック鶏に餌をあげて愛情を注いだ。
不思議なのだが、もっと小さい頃から一緒に暮らし、わずかな期間だが乗馬まで教えてくれた馬よりも、ロック鶏の方が可愛い。
助けてあげた事に恩に感じているのか、常に愛情あふれる表現をしてくれる母牛や子牛よりも、ロック鶏の方を可愛く思ってしまう。
ロック鶏も僕の気持ちがなんとなくわかるようで、何も言わないのに西の里山にある少ない平地の樹木を、啄んだり蹴ったりして倒してくれる。
そのお陰で、直ぐに種蒔きができるくらい深く耕せている。
開拓村の畑よりも効率は悪いけれど、これで穀物も収穫できる。
一家で西の畑に移住する事になっても、妹たちは大好きなドライフルーツを入れたパンやお菓子を食べ続けられる。
翌朝は僕だけ朝遅くまで眠らせてもらった。
1日働く前の食事は肉や卵をたくさん使った物が普通だ。
僕がいたら野菜や果物、良くてチーズやバターを使った物になる。
僕のせいで家族が食べたい物を食べられないなんて我慢できない。
お昼は元々食べられなかったのが、僕のスキルで食べられるようになったから、パンと果物、チーズとバターに決まった。
それに、後でお父さんとお母さんに合流して畑仕事だ。
約束通り、できるだけ一緒にいるようにする。
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