運よく生まれ変われたので、今度は思いっきり身体を動かします!

克全

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第1章

第40話:集結

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「あまい、おいしい!」
「あまい、おいしい、こんな美味しいスモモ初めて食べた!」
「ぼくも、ぼくもこんな美味しいスモモはじめてたべた!」
「本当だわ、信じられないほど甘くて美味しいわ!」
「これほど美味しい果物は生まれて初めてよ!」

 僕が実らせたスモモを食べた女子供が歓声をあげている。
 道の途中にたまたまスモモの木が有ったので、代表に許可をもらってやった。
 他の果樹なら見逃すのだが、得意なスモモだけは見逃せない。

「うん、相変わらず別格の美味しさだな」
「ああ、本当に美味いな、前の街の貴族が大金を払った気持ちが分かる」
「こんな美味いスモモを普通に喰えるのが信じられないぜ」

 食べ慣れたはずの行商人たちも毎回美味しいと言ってくれる。
 スモモは商品として特別だが、俺が同行している間は何時でも食べられる。
 とはいえ、実らせられるのは移動の途中だけだが。

「ケーン、金は払うから3度実らせてくれ。
 ウィロウ、女子供に見られないようにアイテムボックスに入れろ」

「「はい!」」

 他の果物はまだたくさんあるのだが、特別美味しいスモモだけは売り切れた。
 試食させると、他の果物よりもかなり高くしているのにスモモだけが売れるのだ。

 だから移動中にスモモがあると僕が実らせる。
 女子供には季節外れの狂ったスモモの木が有ると言って、僕の木属性魔術は秘密にしている。

 ウィロウの話では、大人の女は誰かの神与スキルだと分かっているそうだ。
 知らない振りをして子供たちに伝えないのが掟らしい。

 1度村を襲われて妻子を失った行商人たちは、大金を持っている事も特別な神与スキルを持っている事も、一族以外には教えないらしい。
 一族でも秘密を守れない子供には教えないと言う。

 僕たちがウィロウの神与スキルを教えられたのは、とんでもない特別待遇だったのだと、今頃になって分かった。

 1度の巡回で行商人全ての家族を集める事はできない。
 50人50頭の行商隊も1つではなく4つもあるそうだ。
 今回はその内の1つだけが、家族を集めて家の村に集結する

 エリクサー薬草はこの行商隊が持っているが、今回は例の貴族家には行かず、売らずに保有しておくだけにするそうだ。

 1度密偵を逮捕させる強硬策を使ったので、貴族側がこちらの見つける能力を上回る凄い密偵を使っているのを警戒しているらしい。

 ロック鶏が夜の間に探してくれたが、この行商隊をつけている密偵はいなかった。
 だがその事を代表に信じてもらうにはロック鶏を見せないといけない。
 そんな事はできないので黙っている。

 それに、黙っていれば、代表は密偵を警戒して多くの国の村や街を回る。
 お父さんとお母さんには悪いが、できるだけ多くの国を旅したい。
 できるだけ長く旅したい、1カ月に1度も村に戻るなんて嫌だ。

 それと、エリクサー薬草を材料に伝説の回復薬を作った貴族は、それをできるだけ高い値段で売ろうとしているらしく、売った数は少ないそうだ。

 売った数が少ないと、残っている伝説級回復薬が多く、手元にあるお金も少ないので、エリクサー薬草を無理に買う事も無いそうだ。

 だからその貴族にいる国に入っても呼び出しがなく、領地に寄らなかった。
 その国にいる行商人の家族を加えて、家の村の有る国に戻る。
 それも、間に別の国を挟む安全策をとってだ。

 家の村に近づくほど人数も頭数も多くなる。
 50人50頭だった行商隊が、307人894頭にまで増えている。
 僕が買った駄獣も多いが、行商人が買った家畜も多い。

 僕たちの真似をして、良く慣れた牛は自由に歩かせて、新しく買ったロバやラバの手綱を取る行商人もいた。

 自分の資金で買った商品は、売れば全部自分の利益になる行商人が、家族を運んだとで、家の村や他の村に売れば良いと考えたのだ。

 他にも、行商人村に残る家族が乳を飲めるように、ヨーグルトやチーズが食べられるように、山羊や羊を買う行商人もいた。
 鶏を買った行商人は、籠に入れて牛やロバの背に括り付けている。

 みんな僕が造った行商人村を自分の目で見て知っているので、多めの家畜を連れて帰っても餌に困らないと分かっている。

 何と言っても、家の中も外も家畜の大好きな葉っぱと茎で出来ている。
 とは言っても、外側は家畜に食べられないように棘の多い蔦植物だ。
 人間が家の中に繁る葉を集めて餌にしてあげないといけない。

 中に入れて勝手に食べさせる方法もあるが、僕はお勧めしない。
 家畜は自由に糞をするの、家の中が糞まみれになってしまう。

「村が見えてきたぞ!」

 先頭を歩く行商人が大声で教えてくれる。
 ウィロウと僕は行商隊の中央にいるので、その前後には女子供が多い。

 行商などした事のない女子供は疲れた顔をしていたが、いよいよ自分たちが永住する村が見えてきたと聞いてうれしそうにしている。
 蔦壁の家をよろこんでくれたらいいのだが、ちょっと心配だ。

 思っていた以上に先頭の行商人の目が良かったので、畑東門につくまで時間がかかってしまったが、そのお陰でお父さんとお母さんが待っていてくれた!

「ああ、私の可愛いケーン、無事に帰って来てくれてありがとう!」

 涙を流して抱きしめてくれるお母さん、僕も泣きながら抱きしめ返した。

「よく無事に帰って来た、男らしい顔になったぞ!」

 お父さんがそう言って僕の頭をくしゃくしゃにしてくれる。
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