運よく生まれ変われたので、今度は思いっきり身体を動かします!

克全

文字の大きさ
上 下
34 / 58
第1章

第34話:旅立ち

しおりを挟む
 僕は行商隊と一緒に村を出た。
 お父さんとお母さん、妹たちだけでなく、村の衆総出で見送ってくれた。
 だけど1人で村を出たわけではない。

 僕が買った牛の母子が一緒だった。
 母上は僕の家で作った小麦とドライフルーツを背負っている。
 子牛は母牛の後を歩いている。

 残念なのは僕に乗馬を教えてくれていた馬を連れて行けなかった事だ。
 お父さんとお母さんが行商隊に頼んでいた、若い軍馬が届いたので、お父さんは僕が連れて行っても良いと言ってくれたけれど、ジョセフ代表に断られた。

 それでなくても牛に乗せている荷物が少なくて目立つのに、軍馬など連れていたらら更に目立ってしまい、盗賊や王侯貴族に狙われると言われた。

 それを聞いたお父さんとお母さんが軍馬を連れて行くのを反対したのだ。
 僕もどうしても取れて行きたい訳ではないので、素直に言う事を聞いた。

 ここで文句を言って『やっぱり行商人にはさせない』とお母さんが言い出したら困ると思ったのだ。

 だけど家を連れて出たのは牛の母子だけではない。
 毎日魔力で成長させた鶏10羽も連れて出た。

 ロック鳥やルフと呼ばれる、巨大な魔鳥と同じくらい大きくなった鶏を置いて行けるはずがない。

 彼らが満足するくらいの食糧を毎日用意できるのは、僕の木属性魔術だけなので、一緒に連れて行くしかないし、可愛くて離れられない。

 ただ、ロック鶏の存在だけは誰にも教えられない。
 お父さんとお母さんにも、大鷹よりも大きくなった時に逃げたと言ってあった。
 それ以降は僕が奥山まで言って果樹を生長させて餌にしていた。

 だからこれからも、適度に果樹を成長させてロック鶏に餌にする。
 ロック鶏は動物も食べられるようなのだが、僕が嫌がるから食べないようにしてくれているので、絶対に美味しい果物や穀物を作ってあげないといけない。

 奥山の一角に広大な果樹林を作ってあげたから、10日くらいは何かあっても餌に困らないと思うけれど、できれば毎日新鮮な果物を食べさせてあげたい。

「行商人はぼおっと歩いたら駄目、周囲から襲われないか常に注意して歩く!」

 僕の指導役になったウィロウが側にいて教えてくれる。
 牛に荷籠をつける方法も、崩れないように荷を積む方法も教えてくれた。

 荷が崩れない牛の歩かせる方も教えてくれたけど、これはまだよく分からない。
 僕の牛は既に覚えているし、僕を困らせようとして悪い歩き方もしない。
 だから僕は周りの危険がないか気をつけるだけでいい。

 初めて村から出る行商をとても驚きに満ちていると言いたいけれど、そんな事はなかった。

 ただゆっくりと歩いているだけだし、周りの風景も村の周りと変わらない。
 でも、ウィロウと一緒に歩ける周囲は輝いて見えた。
 同じ風景なのに、とても光り輝いていた。

「野営の準備をするぞ!」

 ジョセフ代表がそういう前からウィロウたちは野営の準備をしていた。
 牛の横を歩きながら荷崩れの心配がいらない軽い道具を手に持っていた。

 周りの木々が切り倒されて少し広くなった場所、家の村に来る時は何時もここで野営するのだろう。

 行商人は常に2人以上で組んで仕事をする。
 特に森の中に入って焚火に使う落ち葉や枯れ枝を拾う時は人数が多い。
 それだけ村から離れた森の中は危険なのだろう。

「果物を作らなくても良いですか?」

 僕はウィロウに聞いてみた。
 ウィロウの役に立ちたい、ウィロウに美味し果物を食べさせてあげたい!

「できるのか?」

「簡単にできます」

「族長、ケーンが果物を作ろうかと言っています!」

「そうか、直ぐに集められるくらいの数を作ってもらえ。
 暗くなると食事はともかく野営の準備ができなくなる。
 果物を全部集めない、臭いにつられて魔獣が集まってくるかもしれない」

「ジョセフ代表、果物の臭いよりも人間の臭いに集まってくると思います」

 僕がそう言うと。

「人間の臭いに集まる魔獣もいれば、美味しい果物の香りに集まる魔獣もいる。
 街や村の外にいる時は、わずかでも危険のある事は避けるのだ。
 とはいえ、美味しい果物を食べられる機会は逃せない。
 特に水代わりになるみずみずしい果物はだ、スイカを作ってくれ」

「はい、スイカをみんなで集められるくらい作ります」

 僕はそう言うと種を蒔いて木属性魔術を使った。
 直ぐに芽を出し成長したスイカが大きな実をつけた。

 ジョセフ代表が生まれて初めて食べたと言うくらい、甘くてみずみずしくて大きなスイカだから、1人1個でも食べ切れない。
 でも直ぐに収穫できる数と言われたら、1人3個は必要だと思ってしまった。

「代表、とても食べ切れる量じゃないですが、これは間違いですか?」

 そうジョセフ代表に聞くウィロウは、間違いだったら叱ってやるという表情をしていた。

「間違いじゃないぞ、食べ切れない分はアイテムボックスに入れておけ。
 ケーンのスイカは間違いなく高値で売れる。
 それに、牛も食べたそうにしている、食べさせてやれ」

 牛は草でも葉っぱでも、何でも食べるけれど、甘い物が大好きだ。
 みずみずしくて甘いスイカは大好きだ。
 牛にもあげるならもっとたくさん実らせてあげればよかった。
しおりを挟む
感想 11

あなたにおすすめの小説

村から追い出された変わり者の僕は、なぜかみんなの人気者になりました~異種族わちゃわちゃ冒険ものがたり~

めーぷる
児童書・童話
グラム村で変わり者扱いされていた少年フィロは村長の家で小間使いとして、生まれてから10年間馬小屋で暮らしてきた。フィロには生き物たちの言葉が分かるという不思議な力があった。そのせいで同年代の子どもたちにも仲良くしてもらえず、友達は森で助けた赤い鳥のポイと馬小屋の馬と村で飼われている鶏くらいだ。 いつもと変わらない日々を送っていたフィロだったが、ある日村に黒くて大きなドラゴンがやってくる。ドラゴンは怒り村人たちでは歯が立たない。石を投げつけて何とか追い返そうとするが、必死に何かを訴えている. 気になったフィロが村長に申し出てドラゴンの話を聞くと、ドラゴンの巣を荒らした者が村にいることが分かる。ドラゴンは知らぬふりをする村人たちの態度に怒り、炎を噴いて暴れまわる。フィロの必死の説得に漸く耳を傾けて大人しくなるドラゴンだったが、フィロとドラゴンを見た村人たちは、フィロこそドラゴンを招き入れた張本人であり実は魔物の生まれ変わりだったのだと決めつけてフィロを村を追い出してしまう。 途方に暮れるフィロを見たドラゴンは、フィロに謝ってくるのだがその姿がみるみる美しい黒髪の女性へと変化して……。 「ドラゴンがお姉さんになった?」 「フィロ、これから私と一緒に旅をしよう」 変わり者の少年フィロと異種族の仲間たちが繰り広げる、自分探しと人助けの冒険ものがたり。 ・毎日7時投稿予定です。間に合わない場合は別の時間や次の日になる場合もあります。

【奨励賞】おとぎの店の白雪姫

ゆちば
児童書・童話
【第15回絵本・児童書大賞 奨励賞】 母親を亡くした小学生、白雪ましろは、おとぎ商店街でレストランを経営する叔父、白雪凛悟(りんごおじさん)に引き取られる。 ぎこちない二人の生活が始まるが、ひょんなことからりんごおじさんのお店――ファミリーレストラン《りんごの木》のお手伝いをすることになったましろ。パティシエ高校生、最速のパート主婦、そしてイケメンだけど料理脳のりんごおじさんと共に、一癖も二癖もあるお客さんをおもてなし! そしてめくるめく日常の中で、ましろはりんごおじさんとの『家族』の形を見出していく――。 小さな白雪姫が『家族』のために奔走する、おいしいほっこり物語。はじまりはじまり! 他のサイトにも掲載しています。 表紙イラストは今市阿寒様です。 絵本児童書大賞で奨励賞をいただきました。

少年騎士

克全
児童書・童話
「第1回きずな児童書大賞参加作」ポーウィス王国という辺境の小国には、12歳になるとダンジョンか魔境で一定の強さになるまで自分を鍛えなければいけないと言う全国民に対する法律があった。周囲の小国群の中で生き残るため、小国を狙う大国から自国を守るために作られた法律、義務だった。領地持ち騎士家の嫡男ハリー・グリフィスも、その義務に従い1人王都にあるダンジョンに向かって村をでた。だが、両親祖父母の計らいで平民の幼馴染2人も一緒に12歳の義務に同行する事になった。将来救国の英雄となるハリーの物語が始まった。

冒険者ではない、世界一のトレジャーハンターになる!

克全
児童書・童話
「第1回きずな児童書大賞参加作」宝船竜也は先祖代々宝探しに人生を賭けるトレジャーハンターの家に生まれた。竜也の夢は両親や祖父母のような世界1番のトレジャーハンターになる事だ。だが41年前、曾祖父が現役の時代に、世界に突然ダンジョンが現れた。ダンジョンの中でだけレベルアップしたり魔術が使えたりする上に、現れるモンスターを倒すと金銀財宝貴金属を落とす分かって、世は大ダンジョン時代となった。その時代に流行っていたアニメやラノベの影響で、ダンジョンで一攫千金を狙う人たちは冒険者と呼ばれるようになった。だが、宝船家の人たちは頑なに自分たちはトレジャーハンターだと名乗っていた。

四尾がつむぐえにし、そこかしこ

月芝
児童書・童話
その日、小学校に激震が走った。 憧れのキラキラ王子さまが転校する。 女子たちの嘆きはひとしお。 彼に淡い想いを抱いていたユイもまた動揺を隠せない。 だからとてどうこうする勇気もない。 うつむき複雑な気持ちを抱えたままの帰り道。 家の近所に見覚えのない小路を見つけたユイは、少し寄り道してみることにする。 まさかそんな小さな冒険が、あんなに大ごとになるなんて……。 ひょんなことから石の祠に祀られた三尾の稲荷にコンコン見込まれて、 三つのお仕事を手伝うことになったユイ。 達成すれば、なんと一つだけ何でも願い事を叶えてくれるという。 もしかしたら、もしかしちゃうかも? そこかしこにて泡沫のごとくあらわれては消えてゆく、えにしたち。 結んで、切って、ほどいて、繋いで、笑って、泣いて。 いろんな不思議を知り、数多のえにしを目にし、触れた先にて、 はたしてユイは何を求め願うのか。 少女のちょっと不思議な冒険譚。 ここに開幕。

昨日の敵は今日のパパ!

波湖 真
児童書・童話
アンジュは、途方に暮れていた。 画家のママは行方不明で、慣れない街に一人になってしまったのだ。 迷子になって助けてくれたのは騎士団のおじさんだった。 親切なおじさんに面倒を見てもらっているうちに、何故かこの国の公爵様の娘にされてしまった。 私、そんなの困ります!! アンジュの気持ちを取り残したまま、公爵家に引き取られ、そこで会ったのは超不機嫌で冷たく、意地悪な人だったのだ。 家にも帰れず、公爵様には嫌われて、泣きたいのをグッと我慢する。 そう、画家のママが戻って来るまでは、ここで頑張るしかない! アンジュは、なんとか公爵家で生きていけるのか? どうせなら楽しく過ごしたい! そんな元気でちゃっかりした女の子の物語が始まります。

生まれたばかりですが、早速赤ちゃんセラピー?始めます!

mabu
児童書・童話
超ラッキーな環境での転生と思っていたのにママさんの体調が危ないんじゃぁないの? ママさんが大好きそうなパパさんを闇落ちさせない様に赤ちゃんセラピーで頑張ります。 力を使って魔力を増やして大きくなったらチートになる! ちょっと赤ちゃん系に挑戦してみたくてチャレンジしてみました。 読みにくいかもしれませんが宜しくお願いします。 誤字や意味がわからない時は皆様の感性で受け捉えてもらえると助かります。 流れでどうなるかは未定なので一応R15にしております。 現在投稿中の作品と共に地道にマイペースで進めていきますので宜しくお願いします🙇 此方でも感想やご指摘等への返答は致しませんので宜しくお願いします。

生贄姫の末路 【完結】

松林ナオ
児童書・童話
水の豊かな国の王様と魔物は、はるか昔にある契約を交わしました。 それは、姫を生贄に捧げる代わりに国へ繁栄をもたらすというものです。 水の豊かな国には双子のお姫様がいます。 ひとりは金色の髪をもつ、活発で愛らしい金のお姫様。 もうひとりは銀色の髪をもつ、表情が乏しく物静かな銀のお姫様。 王様が生贄に選んだのは、銀のお姫様でした。

処理中です...