運よく生まれ変われたので、今度は思いっきり身体を動かします!

克全

文字の大きさ
上 下
32 / 58
第1章

第32話:母親の嫉妬

しおりを挟む
「これは凄い、これなら誰が来ても安心だよ」

「オリビア、これなら大丈夫だよ、何も心配する事ないよ」

 お父さんを含めて戦い役の人たちが口々に大丈夫だと言って、お母さんはなかなか納得してくれなかった。

「もっと人数を増やしてやらないと本当の事は分からないわ!
 行商人と牛を村中の人間で追いかけるの。
 それで誰も村の衆に触られなかったら、今度こそ認めてあげるわ!」

 またお母さんがとんでもない事を言いだした!
 村の衆全員に手伝ってもらうだけでも大変なのに、行商人全員に手伝ってもらうなんて、いくらなんでも無理だと思った。

「オリビア、そこまでやったら、もうどうしようもないぞ。
 村の衆に迷惑かけるだけでも大変な事なのに、行商人全員に迷惑をかけるのだ、ケーンが成功したら快く送り出してやるしかないのだぞ?」

「分かっているわよ、それくらいの覚悟がないと、こんな事は言わないわよ。
 でも、村の衆はともかく、行商人は手伝ってくれないわ」

 お母さんは行商人が手伝わないと思っていたようだ。
 僕には行商人たちが手伝ってくれるのか手伝ってくれないのかは分からなかった。

 ただ、行商人は利益のために働いているとお父さんもフィンリー神官も言っていたから、利益になるなら手伝ってくれると思った。

 この話は、お父さんがフィンリー神官と行商隊代表に話してくれた。
 行商隊に利益が有るのか、50人が50頭の牛を連れて参加してくれた。
 ウィロウも参加していたから、つい、ついやり過ぎてしまった。

 お母さんがウィロウを追いかけだしたのに驚いて、つい鋭いとげのあるサルトリイバラの混じった蔦壁を造ってしまった。
 
 急に蔦壁ができて、お母さんは止まれなかった。
 蔦壁に突っ込んで……身体に傷ができて……血が……

「ウゲェエエエエエ」

「オリビア、ケーン、ああ、もう、いいかげん諦めろ!
 オリビア、お前を傷つけて、ケーンが吐いてしまっているぞ!
 このままじゃケーンがまた寝込んでしまうぞ!」

「ケーン、ケーン、私の可愛いケーン、ごねんね、ごめんね、ごめんね」

 泣き叫ぶお母さんが僕を抱きしめてくれたけれど、お母さんを傷つけてしまい、血まで流させてしまった。

 抱きしめてくれるお母さん顔が傷ついているのを見て、僕は気を失ってしまったようで、気がついたら次の日の朝だった。

「ごめんね、全部お母さんが悪かったわ。
 ケーンが行商人になるのは認めるから、1人で世界中を旅するのだけはやめて。
 それと、できれば毎月帰ってきて」

 気がついたらベッドの脇にお母さんがいた。
 僕が目を覚ますと直ぐに泣きながら謝ってくれた。

 最初はお母さんが何を言っているのか全然わからなかった。
 でも、途中から行商人になるのを認めてくれたのだと分かった。

「僕こそごめんね、お母さんを傷つけちゃった、血が出ていたけど、傷は大丈夫?」

「これくらいの傷、ケガのうちに入らないから大丈夫?
 それよりケーンは大丈夫、吐いてご飯も食べずに気を失ってしまって!
 何か食べる、スモモを持ってこようか、それともワインの方が良い?」

「少しお腹が減っているし、喉も乾いているから、スイカとスモモが欲しい」

「直ぐに持ってくるから待っていて」

 僕はお母さんが持って来てくれたスイカとスモモを食べた。
 食べ終えて直ぐにベッドから出ようとしたけれど、お母さんが許してくれなくて、そのまま寝かされてしまった。

 お母さんが子守唄を歌ってくれるのを聞いていたら、ドアの外にエヴィーたちがいるのに気がついた。
 僕は、また妹たちからお母さんを奪ってしまった!

「僕はもう大丈夫だから!」

 止めるお母さんを押しのけて部屋からでた。

「僕よりもエヴィーたちに優しくしてあげて!
 お兄ちゃんの僕が、妹よりも甘える訳にはいかないよ!
 お母さんなら妹たちの方を優しくしてあげて!」

 僕がそう言うと、お母さんがびっくりしたような顔をした。
 そして寂しそうな、羨ましそうな顔をしたエヴィーたちを見て、急に泣き出してしまった!

「エヴィー、ロージー、クロエ、ごめんね、ごめんね、お母さんが悪かったわ!」

「「「おかあさん」」」」

 お母さんが泣きながら3人の妹たちを抱きしめている。
 普段忙しいお母さんには、3人も甘えないようにしていた。
 その3人が泣きながら抱き着いている。

 僕はもう神与のスキルをもらった1人前の男だ!
 お母さんに甘えるような歳じゃない!
 お父さんとお母さんが何を言っても、自分の仕事は自分で決める!

 それに昨日、お母さんが無茶を言って始めた試験に合格した。
 お母さんも行商人になって良いと言っていた。
 だから、今日から僕は開拓村の農民じゃなくて行商人だ!

 だけど、僕はずっと村で暮らしていたから、行商人の仕事が分からない。
 1から行商人の仕事を覚えないといけない。

 行商隊の代表は、僕が行商人になる事に利益があると思ったから、お母さんが言いだした昨日の無茶なお願いを聞いてくれたんだ。
 だったら、僕を1人前の行商人にしてくれるはずだ!

「ジョセフさん、僕を行商人にしてください!」
しおりを挟む
感想 11

あなたにおすすめの小説

村から追い出された変わり者の僕は、なぜかみんなの人気者になりました~異種族わちゃわちゃ冒険ものがたり~

めーぷる
児童書・童話
グラム村で変わり者扱いされていた少年フィロは村長の家で小間使いとして、生まれてから10年間馬小屋で暮らしてきた。フィロには生き物たちの言葉が分かるという不思議な力があった。そのせいで同年代の子どもたちにも仲良くしてもらえず、友達は森で助けた赤い鳥のポイと馬小屋の馬と村で飼われている鶏くらいだ。 いつもと変わらない日々を送っていたフィロだったが、ある日村に黒くて大きなドラゴンがやってくる。ドラゴンは怒り村人たちでは歯が立たない。石を投げつけて何とか追い返そうとするが、必死に何かを訴えている. 気になったフィロが村長に申し出てドラゴンの話を聞くと、ドラゴンの巣を荒らした者が村にいることが分かる。ドラゴンは知らぬふりをする村人たちの態度に怒り、炎を噴いて暴れまわる。フィロの必死の説得に漸く耳を傾けて大人しくなるドラゴンだったが、フィロとドラゴンを見た村人たちは、フィロこそドラゴンを招き入れた張本人であり実は魔物の生まれ変わりだったのだと決めつけてフィロを村を追い出してしまう。 途方に暮れるフィロを見たドラゴンは、フィロに謝ってくるのだがその姿がみるみる美しい黒髪の女性へと変化して……。 「ドラゴンがお姉さんになった?」 「フィロ、これから私と一緒に旅をしよう」 変わり者の少年フィロと異種族の仲間たちが繰り広げる、自分探しと人助けの冒険ものがたり。 ・毎日7時投稿予定です。間に合わない場合は別の時間や次の日になる場合もあります。

少年騎士

克全
児童書・童話
「第1回きずな児童書大賞参加作」ポーウィス王国という辺境の小国には、12歳になるとダンジョンか魔境で一定の強さになるまで自分を鍛えなければいけないと言う全国民に対する法律があった。周囲の小国群の中で生き残るため、小国を狙う大国から自国を守るために作られた法律、義務だった。領地持ち騎士家の嫡男ハリー・グリフィスも、その義務に従い1人王都にあるダンジョンに向かって村をでた。だが、両親祖父母の計らいで平民の幼馴染2人も一緒に12歳の義務に同行する事になった。将来救国の英雄となるハリーの物語が始まった。

【奨励賞】おとぎの店の白雪姫

ゆちば
児童書・童話
【第15回絵本・児童書大賞 奨励賞】 母親を亡くした小学生、白雪ましろは、おとぎ商店街でレストランを経営する叔父、白雪凛悟(りんごおじさん)に引き取られる。 ぎこちない二人の生活が始まるが、ひょんなことからりんごおじさんのお店――ファミリーレストラン《りんごの木》のお手伝いをすることになったましろ。パティシエ高校生、最速のパート主婦、そしてイケメンだけど料理脳のりんごおじさんと共に、一癖も二癖もあるお客さんをおもてなし! そしてめくるめく日常の中で、ましろはりんごおじさんとの『家族』の形を見出していく――。 小さな白雪姫が『家族』のために奔走する、おいしいほっこり物語。はじまりはじまり! 他のサイトにも掲載しています。 表紙イラストは今市阿寒様です。 絵本児童書大賞で奨励賞をいただきました。

冒険者ではない、世界一のトレジャーハンターになる!

克全
児童書・童話
「第1回きずな児童書大賞参加作」宝船竜也は先祖代々宝探しに人生を賭けるトレジャーハンターの家に生まれた。竜也の夢は両親や祖父母のような世界1番のトレジャーハンターになる事だ。だが41年前、曾祖父が現役の時代に、世界に突然ダンジョンが現れた。ダンジョンの中でだけレベルアップしたり魔術が使えたりする上に、現れるモンスターを倒すと金銀財宝貴金属を落とす分かって、世は大ダンジョン時代となった。その時代に流行っていたアニメやラノベの影響で、ダンジョンで一攫千金を狙う人たちは冒険者と呼ばれるようになった。だが、宝船家の人たちは頑なに自分たちはトレジャーハンターだと名乗っていた。

盲目魔女さんに拾われた双子姉妹は恩返しをするそうです。

桐山一茶
児童書・童話
雨が降り注ぐ夜の山に、捨てられてしまった双子の姉妹が居ました。 山の中には恐ろしい魔物が出るので、幼い少女の力では山の中で生きていく事なんか出来ません。 そんな中、双子姉妹の目の前に全身黒ずくめの女の人が現れました。 するとその人は優しい声で言いました。 「私は目が見えません。だから手を繋ぎましょう」 その言葉をきっかけに、3人は仲良く暮らし始めたそうなのですが――。 (この作品はほぼ毎日更新です)

四尾がつむぐえにし、そこかしこ

月芝
児童書・童話
その日、小学校に激震が走った。 憧れのキラキラ王子さまが転校する。 女子たちの嘆きはひとしお。 彼に淡い想いを抱いていたユイもまた動揺を隠せない。 だからとてどうこうする勇気もない。 うつむき複雑な気持ちを抱えたままの帰り道。 家の近所に見覚えのない小路を見つけたユイは、少し寄り道してみることにする。 まさかそんな小さな冒険が、あんなに大ごとになるなんて……。 ひょんなことから石の祠に祀られた三尾の稲荷にコンコン見込まれて、 三つのお仕事を手伝うことになったユイ。 達成すれば、なんと一つだけ何でも願い事を叶えてくれるという。 もしかしたら、もしかしちゃうかも? そこかしこにて泡沫のごとくあらわれては消えてゆく、えにしたち。 結んで、切って、ほどいて、繋いで、笑って、泣いて。 いろんな不思議を知り、数多のえにしを目にし、触れた先にて、 はたしてユイは何を求め願うのか。 少女のちょっと不思議な冒険譚。 ここに開幕。

転生チートがマヨビームってなんなのっ?!

児童書・童話
14歳の平凡な看板娘にいきなり“世界を救え”とか無茶ブリすぎない??しかも職業が≪聖女≫で、能力が……≪マヨビーム≫?!神託を受け、連行された神殿で≪マヨビーム≫の文字を見た途端、エマは思い出した。前世の記憶を。そして同時にブチ切れた。「マヨビームでどうやって世界を救えっていうのよ?!!」これはなんだかんだでマヨビーム(マヨビームとか言いつつ、他の調味料もだせる)を大活用しつつ、“世界を救う”旅に出たエマたちの物語。3月中は毎日更新予定!

魔法が使えない女の子

咲間 咲良
児童書・童話
カナリア島に住む九歳の女の子エマは、自分だけ魔法が使えないことを悩んでいた。 友だちのエドガーにからかわれてつい「明日魔法を見せる」と約束してしまったエマは、大魔法使いの祖母マリアのお使いで魔法が書かれた本を返しに行く。 貸本屋ティンカーベル書房の書庫で出会ったのは、エマそっくりの顔と同じエメラルドの瞳をもつ男の子、アレン。冷たい態度に反発するが、上から降ってきた本に飲み込まれてしまう。

処理中です...