運よく生まれ変われたので、今度は思いっきり身体を動かします!

克全

文字の大きさ
上 下
27 / 58
第1章

第27話:信義

しおりを挟む
 その日は、陽のある間は行商人たちの家づくりに専念した。
 僕が聞いた牛の厩はとても大切だったようで、1つ目の商店も直ぐに造り直して、店の中からも厩に行けるようにした。

 その日の夜、行商隊代表の提案で村の主だった人と行商隊の主だった人で話し合いをする事になった。

 僕もお父さんと一緒に行くことになった。
 神与のスキルが凄いからだろうけど、村を出て行く気だから気が重い。
 ウィロウがいた、よほど優秀で期待されているのだと思った。

「急に集まってもらって申しわけない」

 最初に行商隊代表が全員に頭を下げた。

「今日、村の人たちが心からの信用を示してくれた。
 余所者には絶対に知られたくない、ケーンの神与スキルを見せてくれた。
 信用には信用、秘密の公開には秘密の公開で応えないといけない」

 ここで1度言葉を止めた行商隊代表が全員の顔を見ていく。
 僕の顔を長く見るのは分かるが、ウィロウの顔も長く見るのは何故だ?

「儂ら行商隊の秘密、切り札は、アイテムボックスのスキルだ。
 それも時間が止められて、入れた物を腐らせずに保管できる。
 この村の果物や酒を買って儲けられるのも、アイテムボックスがあるからだ」

 お父さんとお母さんが言っていた通りだった。
 だがそんな事はフィンリー神官も知っているとお父さんが言っていた。
 それを言う事が信用を返す事になるのか?

「そしてアイテムボックスのスキルを持つのは、そこにいるウィロウだ。
 この子がアイテムボックス持ちだと話すのが、儂らの礼と覚悟だ」

 そうか、ウィロウが期待されていたのは、特別なスキルがあるからか。
 そういう意味では、僕と一緒なのだな。

 行商人と村の主だった者たちで酒を飲む事になった。
 僕もウィロウも飲んだが、他の者たちとは違ってワインだ。
 それも果汁で薄めてから飲んだ。

 大人の男たちは、何故か苦いエールを飲む。
 あんな不味い酒を飲む気持ちが分からない。

 お父さんたちは長く飲むのが分かっているので、僕は先に家に戻った。
 だがウィロウはずっとその場にいたようだ。
 翌日家造りで会った時に青い顔をしていた。

「最後に、家の外壁は棘のあるサルトリイバラで一面を覆います。
 これで敵は直接外壁を触れられなくなります。
 窓は内壁にしか作れませんが、安全には変えられないとお父さんが言っていた」

「お父さんの言う通りだ、安全こそが1番大事だ」

 行商隊全員分以上の家を2日で建て終えた。
 村に来ている行商人は50人だが、全員で200家族以上いるらしい。

 全てがここに来るわけではないが、何かあった時のために建てておいて欲しいと言われたので、建ててあげた。

 2日で213軒建てられた。
 礎に石を使ったり壁に石を積んだりしたら、もっと時間がかかった。
 だが、全て蔦で良いのならそれほど時間はかからない。

 全て同じ様な家で良いのなら、それこそ魔力に任せて建てられる。
 里山の尾根に覆うように、段々に建てれば簡単だ。
 下は3階建てだが、1段上がれば2階建て、次の段は平屋になる。

 下の家の屋根を丈夫にしたので、庭のように使う事もできる。
 でも、葉っぱを潰し過ぎたら下の家が枯れてしまう。
 その点は気をつけた欲しいと言っておいた。

 問題は飲み水だが、これは尾根の下にある沢を使ってもらうしかない。
 僕がいればスイカを水代わりにできるが、そこまでする気はない。
 それに、井戸を掘れば水が湧くかもしれない。

「ここまでしてもらったのだ、秘密を打ち明けただけでは恩が大き過ぎる。
 直ぐには返せないが、受けた利益分は必ず返す。
 先ずは店番と商品を置いて行くから、買い物の練習をしてくれ」

 行商隊代表はそう言って村を出てった。
 50人いた行商人の47人を連れて出て行った。

 3人の行商人が残って店を開いてくれるのだろう。
 だがその3人の中にウィロウはいなかった。
 アイテムボックスを持つウィロウは、行商隊から離れられないのだろう。

 僕はお父さんに付き添われて毎日買い物の練習をした。
 買い物だけでなく、行商人村をもっと良くするためにも行った。
 213軒の家は、家の蔦壁しか護りがないから心配なのだ。

 里山は猛獣や魔獣のいる内山に近い。
 村の中央部なら安全かもしれないが、尾根の高い所や外側は心配だ。
 だから村の外側にも蔦壁を造った。

 行商人村は沢ギリギリに造っていない。
 大雨の時に沢水に沈まないようにと、お父さんが場所を決めてくれたのだ。

 だから村の1番端と沢までにはそれなりの距離がある。
 その距離の間にもう1つ蔦壁を造ろうとしたのだが……

「沢にまで水を汲みに行かなくてはいけないのに、途中に蔦壁があったら不便だから、沢を越えた所に蔦壁を造ってあげなさい」

 お母さんにそう言われてしまった。
 むかし水汲みで苦労したことがあるのだそうだ。
 しかたがないので、2つ目の蔦壁を造る心算だった場所に1つ目の蔦壁を造った。

 思っていたよりもかなり外側に造る事になった2つ目の蔦壁。
 何所にするか迷ったが、行商人村のある尾根の両側にある、別に尾根にした。

 かなり長い蔦壁になってしまったので、収穫しなければいけない実が多くなった。
 とても生で食べ切れる量じゃなかったので、全部フルーツワインかドライフルーツにする事になった。

 店番に残っている3人も収穫と酒造りを手伝ってくれた。
 しかもフルーツワインもドライフルーツも全部買い取ると約束してくれた。
しおりを挟む
感想 11

あなたにおすすめの小説

村から追い出された変わり者の僕は、なぜかみんなの人気者になりました~異種族わちゃわちゃ冒険ものがたり~

めーぷる
児童書・童話
グラム村で変わり者扱いされていた少年フィロは村長の家で小間使いとして、生まれてから10年間馬小屋で暮らしてきた。フィロには生き物たちの言葉が分かるという不思議な力があった。そのせいで同年代の子どもたちにも仲良くしてもらえず、友達は森で助けた赤い鳥のポイと馬小屋の馬と村で飼われている鶏くらいだ。 いつもと変わらない日々を送っていたフィロだったが、ある日村に黒くて大きなドラゴンがやってくる。ドラゴンは怒り村人たちでは歯が立たない。石を投げつけて何とか追い返そうとするが、必死に何かを訴えている. 気になったフィロが村長に申し出てドラゴンの話を聞くと、ドラゴンの巣を荒らした者が村にいることが分かる。ドラゴンは知らぬふりをする村人たちの態度に怒り、炎を噴いて暴れまわる。フィロの必死の説得に漸く耳を傾けて大人しくなるドラゴンだったが、フィロとドラゴンを見た村人たちは、フィロこそドラゴンを招き入れた張本人であり実は魔物の生まれ変わりだったのだと決めつけてフィロを村を追い出してしまう。 途方に暮れるフィロを見たドラゴンは、フィロに謝ってくるのだがその姿がみるみる美しい黒髪の女性へと変化して……。 「ドラゴンがお姉さんになった?」 「フィロ、これから私と一緒に旅をしよう」 変わり者の少年フィロと異種族の仲間たちが繰り広げる、自分探しと人助けの冒険ものがたり。 ・毎日7時投稿予定です。間に合わない場合は別の時間や次の日になる場合もあります。

転生チートがマヨビームってなんなのっ?!

児童書・童話
14歳の平凡な看板娘にいきなり“世界を救え”とか無茶ブリすぎない??しかも職業が≪聖女≫で、能力が……≪マヨビーム≫?!神託を受け、連行された神殿で≪マヨビーム≫の文字を見た途端、エマは思い出した。前世の記憶を。そして同時にブチ切れた。「マヨビームでどうやって世界を救えっていうのよ?!!」これはなんだかんだでマヨビーム(マヨビームとか言いつつ、他の調味料もだせる)を大活用しつつ、“世界を救う”旅に出たエマたちの物語。3月中は毎日更新予定!

盲目魔女さんに拾われた双子姉妹は恩返しをするそうです。

桐山一茶
児童書・童話
雨が降り注ぐ夜の山に、捨てられてしまった双子の姉妹が居ました。 山の中には恐ろしい魔物が出るので、幼い少女の力では山の中で生きていく事なんか出来ません。 そんな中、双子姉妹の目の前に全身黒ずくめの女の人が現れました。 するとその人は優しい声で言いました。 「私は目が見えません。だから手を繋ぎましょう」 その言葉をきっかけに、3人は仲良く暮らし始めたそうなのですが――。 (この作品はほぼ毎日更新です)

【奨励賞】おとぎの店の白雪姫

ゆちば
児童書・童話
【第15回絵本・児童書大賞 奨励賞】 母親を亡くした小学生、白雪ましろは、おとぎ商店街でレストランを経営する叔父、白雪凛悟(りんごおじさん)に引き取られる。 ぎこちない二人の生活が始まるが、ひょんなことからりんごおじさんのお店――ファミリーレストラン《りんごの木》のお手伝いをすることになったましろ。パティシエ高校生、最速のパート主婦、そしてイケメンだけど料理脳のりんごおじさんと共に、一癖も二癖もあるお客さんをおもてなし! そしてめくるめく日常の中で、ましろはりんごおじさんとの『家族』の形を見出していく――。 小さな白雪姫が『家族』のために奔走する、おいしいほっこり物語。はじまりはじまり! 他のサイトにも掲載しています。 表紙イラストは今市阿寒様です。 絵本児童書大賞で奨励賞をいただきました。

昨日の敵は今日のパパ!

波湖 真
児童書・童話
アンジュは、途方に暮れていた。 画家のママは行方不明で、慣れない街に一人になってしまったのだ。 迷子になって助けてくれたのは騎士団のおじさんだった。 親切なおじさんに面倒を見てもらっているうちに、何故かこの国の公爵様の娘にされてしまった。 私、そんなの困ります!! アンジュの気持ちを取り残したまま、公爵家に引き取られ、そこで会ったのは超不機嫌で冷たく、意地悪な人だったのだ。 家にも帰れず、公爵様には嫌われて、泣きたいのをグッと我慢する。 そう、画家のママが戻って来るまでは、ここで頑張るしかない! アンジュは、なんとか公爵家で生きていけるのか? どうせなら楽しく過ごしたい! そんな元気でちゃっかりした女の子の物語が始まります。

魔法使いアルル

かのん
児童書・童話
 今年で10歳になるアルルは、月夜の晩、自分の誕生日に納屋の中でこっそりとパンを食べながら歌を歌っていた。  これまで自分以外に誰にも祝われる事のなかった日。  だが、偉大な大魔法使いに出会うことでアルルの世界は色を変えていく。  孤独な少女アルルが、魔法使いになって奮闘する物語。  ありがたいことに書籍化が進行中です!ありがとうございます。

突然、お隣さんと暮らすことになりました~実は推しの配信者だったなんて!?~

ミズメ
児童書・童話
 動画配信を視聴するのが大好きな市山ひなは、みんなより背が高すぎることがコンプレックスの小学生。  周りの目を気にしていたひなは、ある日突然お隣さんに預けられることになってしまった。  そこは幼なじみでもある志水蒼太(しみずそうた)くんのおうちだった。  どうやら蒼太くんには秘密があって……!?  身長コンプレックスもちの優しい女の子✖️好きな子の前では背伸びをしたい男の子…を見守る愉快なメンバーで繰り広げるドタバタラブコメ!  

生まれたばかりですが、早速赤ちゃんセラピー?始めます!

mabu
児童書・童話
超ラッキーな環境での転生と思っていたのにママさんの体調が危ないんじゃぁないの? ママさんが大好きそうなパパさんを闇落ちさせない様に赤ちゃんセラピーで頑張ります。 力を使って魔力を増やして大きくなったらチートになる! ちょっと赤ちゃん系に挑戦してみたくてチャレンジしてみました。 読みにくいかもしれませんが宜しくお願いします。 誤字や意味がわからない時は皆様の感性で受け捉えてもらえると助かります。 流れでどうなるかは未定なので一応R15にしております。 現在投稿中の作品と共に地道にマイペースで進めていきますので宜しくお願いします🙇 此方でも感想やご指摘等への返答は致しませんので宜しくお願いします。

処理中です...