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第1章
第27話:信義
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その日は、陽のある間は行商人たちの家づくりに専念した。
僕が聞いた牛の厩はとても大切だったようで、1つ目の商店も直ぐに造り直して、店の中からも厩に行けるようにした。
その日の夜、行商隊代表の提案で村の主だった人と行商隊の主だった人で話し合いをする事になった。
僕もお父さんと一緒に行くことになった。
神与のスキルが凄いからだろうけど、村を出て行く気だから気が重い。
ウィロウがいた、よほど優秀で期待されているのだと思った。
「急に集まってもらって申しわけない」
最初に行商隊代表が全員に頭を下げた。
「今日、村の人たちが心からの信用を示してくれた。
余所者には絶対に知られたくない、ケーンの神与スキルを見せてくれた。
信用には信用、秘密の公開には秘密の公開で応えないといけない」
ここで1度言葉を止めた行商隊代表が全員の顔を見ていく。
僕の顔を長く見るのは分かるが、ウィロウの顔も長く見るのは何故だ?
「儂ら行商隊の秘密、切り札は、アイテムボックスのスキルだ。
それも時間が止められて、入れた物を腐らせずに保管できる。
この村の果物や酒を買って儲けられるのも、アイテムボックスがあるからだ」
お父さんとお母さんが言っていた通りだった。
だがそんな事はフィンリー神官も知っているとお父さんが言っていた。
それを言う事が信用を返す事になるのか?
「そしてアイテムボックスのスキルを持つのは、そこにいるウィロウだ。
この子がアイテムボックス持ちだと話すのが、儂らの礼と覚悟だ」
そうか、ウィロウが期待されていたのは、特別なスキルがあるからか。
そういう意味では、僕と一緒なのだな。
行商人と村の主だった者たちで酒を飲む事になった。
僕もウィロウも飲んだが、他の者たちとは違ってワインだ。
それも果汁で薄めてから飲んだ。
大人の男たちは、何故か苦いエールを飲む。
あんな不味い酒を飲む気持ちが分からない。
お父さんたちは長く飲むのが分かっているので、僕は先に家に戻った。
だがウィロウはずっとその場にいたようだ。
翌日家造りで会った時に青い顔をしていた。
「最後に、家の外壁は棘のあるサルトリイバラで一面を覆います。
これで敵は直接外壁を触れられなくなります。
窓は内壁にしか作れませんが、安全には変えられないとお父さんが言っていた」
「お父さんの言う通りだ、安全こそが1番大事だ」
行商隊全員分以上の家を2日で建て終えた。
村に来ている行商人は50人だが、全員で200家族以上いるらしい。
全てがここに来るわけではないが、何かあった時のために建てておいて欲しいと言われたので、建ててあげた。
2日で213軒建てられた。
礎に石を使ったり壁に石を積んだりしたら、もっと時間がかかった。
だが、全て蔦で良いのならそれほど時間はかからない。
全て同じ様な家で良いのなら、それこそ魔力に任せて建てられる。
里山の尾根に覆うように、段々に建てれば簡単だ。
下は3階建てだが、1段上がれば2階建て、次の段は平屋になる。
下の家の屋根を丈夫にしたので、庭のように使う事もできる。
でも、葉っぱを潰し過ぎたら下の家が枯れてしまう。
その点は気をつけた欲しいと言っておいた。
問題は飲み水だが、これは尾根の下にある沢を使ってもらうしかない。
僕がいればスイカを水代わりにできるが、そこまでする気はない。
それに、井戸を掘れば水が湧くかもしれない。
「ここまでしてもらったのだ、秘密を打ち明けただけでは恩が大き過ぎる。
直ぐには返せないが、受けた利益分は必ず返す。
先ずは店番と商品を置いて行くから、買い物の練習をしてくれ」
行商隊代表はそう言って村を出てった。
50人いた行商人の47人を連れて出て行った。
3人の行商人が残って店を開いてくれるのだろう。
だがその3人の中にウィロウはいなかった。
アイテムボックスを持つウィロウは、行商隊から離れられないのだろう。
僕はお父さんに付き添われて毎日買い物の練習をした。
買い物だけでなく、行商人村をもっと良くするためにも行った。
213軒の家は、家の蔦壁しか護りがないから心配なのだ。
里山は猛獣や魔獣のいる内山に近い。
村の中央部なら安全かもしれないが、尾根の高い所や外側は心配だ。
だから村の外側にも蔦壁を造った。
行商人村は沢ギリギリに造っていない。
大雨の時に沢水に沈まないようにと、お父さんが場所を決めてくれたのだ。
だから村の1番端と沢までにはそれなりの距離がある。
その距離の間にもう1つ蔦壁を造ろうとしたのだが……
「沢にまで水を汲みに行かなくてはいけないのに、途中に蔦壁があったら不便だから、沢を越えた所に蔦壁を造ってあげなさい」
お母さんにそう言われてしまった。
むかし水汲みで苦労したことがあるのだそうだ。
しかたがないので、2つ目の蔦壁を造る心算だった場所に1つ目の蔦壁を造った。
思っていたよりもかなり外側に造る事になった2つ目の蔦壁。
何所にするか迷ったが、行商人村のある尾根の両側にある、別に尾根にした。
かなり長い蔦壁になってしまったので、収穫しなければいけない実が多くなった。
とても生で食べ切れる量じゃなかったので、全部フルーツワインかドライフルーツにする事になった。
店番に残っている3人も収穫と酒造りを手伝ってくれた。
しかもフルーツワインもドライフルーツも全部買い取ると約束してくれた。
僕が聞いた牛の厩はとても大切だったようで、1つ目の商店も直ぐに造り直して、店の中からも厩に行けるようにした。
その日の夜、行商隊代表の提案で村の主だった人と行商隊の主だった人で話し合いをする事になった。
僕もお父さんと一緒に行くことになった。
神与のスキルが凄いからだろうけど、村を出て行く気だから気が重い。
ウィロウがいた、よほど優秀で期待されているのだと思った。
「急に集まってもらって申しわけない」
最初に行商隊代表が全員に頭を下げた。
「今日、村の人たちが心からの信用を示してくれた。
余所者には絶対に知られたくない、ケーンの神与スキルを見せてくれた。
信用には信用、秘密の公開には秘密の公開で応えないといけない」
ここで1度言葉を止めた行商隊代表が全員の顔を見ていく。
僕の顔を長く見るのは分かるが、ウィロウの顔も長く見るのは何故だ?
「儂ら行商隊の秘密、切り札は、アイテムボックスのスキルだ。
それも時間が止められて、入れた物を腐らせずに保管できる。
この村の果物や酒を買って儲けられるのも、アイテムボックスがあるからだ」
お父さんとお母さんが言っていた通りだった。
だがそんな事はフィンリー神官も知っているとお父さんが言っていた。
それを言う事が信用を返す事になるのか?
「そしてアイテムボックスのスキルを持つのは、そこにいるウィロウだ。
この子がアイテムボックス持ちだと話すのが、儂らの礼と覚悟だ」
そうか、ウィロウが期待されていたのは、特別なスキルがあるからか。
そういう意味では、僕と一緒なのだな。
行商人と村の主だった者たちで酒を飲む事になった。
僕もウィロウも飲んだが、他の者たちとは違ってワインだ。
それも果汁で薄めてから飲んだ。
大人の男たちは、何故か苦いエールを飲む。
あんな不味い酒を飲む気持ちが分からない。
お父さんたちは長く飲むのが分かっているので、僕は先に家に戻った。
だがウィロウはずっとその場にいたようだ。
翌日家造りで会った時に青い顔をしていた。
「最後に、家の外壁は棘のあるサルトリイバラで一面を覆います。
これで敵は直接外壁を触れられなくなります。
窓は内壁にしか作れませんが、安全には変えられないとお父さんが言っていた」
「お父さんの言う通りだ、安全こそが1番大事だ」
行商隊全員分以上の家を2日で建て終えた。
村に来ている行商人は50人だが、全員で200家族以上いるらしい。
全てがここに来るわけではないが、何かあった時のために建てておいて欲しいと言われたので、建ててあげた。
2日で213軒建てられた。
礎に石を使ったり壁に石を積んだりしたら、もっと時間がかかった。
だが、全て蔦で良いのならそれほど時間はかからない。
全て同じ様な家で良いのなら、それこそ魔力に任せて建てられる。
里山の尾根に覆うように、段々に建てれば簡単だ。
下は3階建てだが、1段上がれば2階建て、次の段は平屋になる。
下の家の屋根を丈夫にしたので、庭のように使う事もできる。
でも、葉っぱを潰し過ぎたら下の家が枯れてしまう。
その点は気をつけた欲しいと言っておいた。
問題は飲み水だが、これは尾根の下にある沢を使ってもらうしかない。
僕がいればスイカを水代わりにできるが、そこまでする気はない。
それに、井戸を掘れば水が湧くかもしれない。
「ここまでしてもらったのだ、秘密を打ち明けただけでは恩が大き過ぎる。
直ぐには返せないが、受けた利益分は必ず返す。
先ずは店番と商品を置いて行くから、買い物の練習をしてくれ」
行商隊代表はそう言って村を出てった。
50人いた行商人の47人を連れて出て行った。
3人の行商人が残って店を開いてくれるのだろう。
だがその3人の中にウィロウはいなかった。
アイテムボックスを持つウィロウは、行商隊から離れられないのだろう。
僕はお父さんに付き添われて毎日買い物の練習をした。
買い物だけでなく、行商人村をもっと良くするためにも行った。
213軒の家は、家の蔦壁しか護りがないから心配なのだ。
里山は猛獣や魔獣のいる内山に近い。
村の中央部なら安全かもしれないが、尾根の高い所や外側は心配だ。
だから村の外側にも蔦壁を造った。
行商人村は沢ギリギリに造っていない。
大雨の時に沢水に沈まないようにと、お父さんが場所を決めてくれたのだ。
だから村の1番端と沢までにはそれなりの距離がある。
その距離の間にもう1つ蔦壁を造ろうとしたのだが……
「沢にまで水を汲みに行かなくてはいけないのに、途中に蔦壁があったら不便だから、沢を越えた所に蔦壁を造ってあげなさい」
お母さんにそう言われてしまった。
むかし水汲みで苦労したことがあるのだそうだ。
しかたがないので、2つ目の蔦壁を造る心算だった場所に1つ目の蔦壁を造った。
思っていたよりもかなり外側に造る事になった2つ目の蔦壁。
何所にするか迷ったが、行商人村のある尾根の両側にある、別に尾根にした。
かなり長い蔦壁になってしまったので、収穫しなければいけない実が多くなった。
とても生で食べ切れる量じゃなかったので、全部フルーツワインかドライフルーツにする事になった。
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