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第1章
第26話:商店建築
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僕は村の男たちと行商隊の半数を連れて里山まで行った。
里山と言うだけあって、どこもかしこも斜面になっている。
しかも緩やかな斜面は全部畑にしてしまった。
それなりに急な斜面を見て行商隊の面々が苦々しい表情をしている。
確かにこの斜面だ、土の床では住み難い。
ここに来るまでお父さんたちが話すのを聞いていたが、山の斜面を平らにしてしまうと、山が崩れてしまう事があるらしい。
山が崩れるくらいなら、家の床も蔦にすればいい。
それに、靴を履いているのなら、蔦の床でも大丈夫かもしれない。
「プロテクト・ウィズ・ア・ウォール・オブ・アイビー」
最初に床になる蔦を、斜面を無視して這わせた。
下に行くほど山の斜面と床の間が高く広くなる。
家の部屋の広さだが、僕が入院していた病院の個室の広さは考えない。
僕が今住んでいる家の部屋の広さを考えて柔らかな蔦を這わせる。
「床は柔らかい蔦で作ったけど、これで良い?」
僕がそう聞くと、息をするのも忘れたように固まっていた代表が動きだした。
「信じられない、想像はしていたが、実際に目の前で見るのとは大違いだ!
こんな事ができるなんて、いくら神与のスキルでも凄すぎる!」
「信じられなくても良いけど、どうしたいかは言って欲しい。
床の硬さはこれくらいで良い、広さはこれくらいで良い?」
「え、あ、そうだな、寝る部屋はこれくらいで良いだろう。
だが、店にする部屋や商品を保管する部屋はもっと広い方が良い」
「床は丈夫な方が良いの?」
「ああ、重い商品もあるから、できるだけ丈夫な方が良い」
「800リットルの土甕を並べても大丈夫なくらい?」
「そうだな、それくらい丈夫だったらありがたい」
僕は蔦の中でも太くて丈夫な種類を組み合わせて床を造った。
斜面に生えている木を支柱にして蔦を絡ませ、斜面横に広く蔦を伸ばしていく。
広い部屋と言われたが、斜面縦だと高さが激しくなりすぎる。
段差が高くなり過ぎないように、横に広くする。
「ちょうど良い広さになったら言って、上に生やして壁にするから」
「これくらいで良い、横の広さはこれくらいで、あと山を登るように部屋が続くなら最高なのだが……」
「こんな感じで良いの?」
「嘘だろ、こんな事が本当にできるのかよ!」
僕が床にしていた蔦を上に伸ばしていくのを、ついて来た行商人たちが信じられないように見ている。
村の人たちはもう慣れたもので、当たり前のように見ている。
床と違って、壁なら実をつけても潰す事はないので、果実を実らせる蔦にした。
「実をつけさせるから集めて、食料を無駄にしたら罰が当たるよ」
「「「「「はい」」」」」
僕の言葉に村の人たちが返事をしてくれる。
だけど行商人たちは固まったまま動けないでいる。
「行商の人たちも実を集めるのを手伝ってもらえますか?
商品になるか試食してもらって良いですよ。
それに、床の上を歩かないと住み心地が分からないでしょう?」
僕がそう言うと、代表よりも先にウィロウが走って行った。
最初は片足でドンドンして、次には飛んで床が丈夫か確かめた。
それを見た他の行商人も次々と蔦床の丈夫さを確認した。
「うまい、甘くて酸っぱくて美味しいのに、普通よりも大粒だ」
「これも行商の商品になるぞ」
「生で売れれば最高だが、ワインにしたらどんな味になるんだ?」
「ドライフルーツにしたら普通に売れるぞ!」
「スイカ、アケビ、マタタビ、季節に関係なく実るのか?!」
「そんな事より魔力だ、なんでこんなに魔術を使い続けられるんだ?!」
行商人たちが驚いているけれど、まだまだ止めない。
お父さんがやれるだけやった方が良いと言っていた。
その方が裏切らないと言っていたから、魔力が半分になるまで生やし続ける。
「騒ぐな、恥ずかしい、儂たちの安住の地を造ってくださっているのだぞ!」
行商隊代表が怒ったら、うるさいくらい話していた行商人たちが黙った。
「ケーン殿だったな、確かめたいのだが、作ってくれた床は地面の上にしか作れないのか?」
「地面の上にだけ?」
「あ~、早い話しが、2階は作れないか?」
「こんな感じで良いのかな?
プロテクト・ウィズ・ア・ウォール・オブ・アイビー」
僕は新しく種を蒔いて蔦を生やしていく。
実のらせた果実の多くは食用にしているけれど、少しは種用にしている。
成長させては種を集めているので、次々蔦を生やしても全く困らない。
「ああ、凄いな、床だけでなく2階まで作れるのか、本当に凄すぎるな!」
「この広さだと、3階までだよ。
もっと高くしたいのなら、狭くしないと葉の数が足らなくなる」
「葉の数?」
「この蔦を生かし続けるのに葉っぱが必要なんだ。
1階や2階ならどれだけ広くても大丈夫だけど、あまり広すぎると壁の葉っぱが少なくて蔦が死んでしまうんだ」
「なるほど、だがこの広さなら3階まで作れるのだね?」
「うん、こっちの住むように部屋で、住むのが10人くらいまで良いのなら、3階まで作れるよ」
「ありがとう、それで十分だ、それで作ってくれ。
魔力が少なくなっているなら、続きは明日でも大丈夫だが?」
「ああ、これくらいなら何ともないよ。
斜面によって奥行きの広さが変わるけれど、同じくらいの家でよければ、続けて100軒は建てられるけど、どうします?」
「……続けて建てられるのなら、そうしてもらえるとありがたい。
おい、お前ら、何時まで呆けている!
村に残っている連中と交代してこい、そしてこの光景を絶対に忘れるな!
これが儂たちの大切な家族を守ってくれるのだ!」
「「「「「はい!」」」」」
行商隊代表の言葉に、行商人たちが大きな返事をして走り出した。
「ああ、そうだ、行商隊は牛が大切なのですよね?
牛が住む厩はどうします?」
里山と言うだけあって、どこもかしこも斜面になっている。
しかも緩やかな斜面は全部畑にしてしまった。
それなりに急な斜面を見て行商隊の面々が苦々しい表情をしている。
確かにこの斜面だ、土の床では住み難い。
ここに来るまでお父さんたちが話すのを聞いていたが、山の斜面を平らにしてしまうと、山が崩れてしまう事があるらしい。
山が崩れるくらいなら、家の床も蔦にすればいい。
それに、靴を履いているのなら、蔦の床でも大丈夫かもしれない。
「プロテクト・ウィズ・ア・ウォール・オブ・アイビー」
最初に床になる蔦を、斜面を無視して這わせた。
下に行くほど山の斜面と床の間が高く広くなる。
家の部屋の広さだが、僕が入院していた病院の個室の広さは考えない。
僕が今住んでいる家の部屋の広さを考えて柔らかな蔦を這わせる。
「床は柔らかい蔦で作ったけど、これで良い?」
僕がそう聞くと、息をするのも忘れたように固まっていた代表が動きだした。
「信じられない、想像はしていたが、実際に目の前で見るのとは大違いだ!
こんな事ができるなんて、いくら神与のスキルでも凄すぎる!」
「信じられなくても良いけど、どうしたいかは言って欲しい。
床の硬さはこれくらいで良い、広さはこれくらいで良い?」
「え、あ、そうだな、寝る部屋はこれくらいで良いだろう。
だが、店にする部屋や商品を保管する部屋はもっと広い方が良い」
「床は丈夫な方が良いの?」
「ああ、重い商品もあるから、できるだけ丈夫な方が良い」
「800リットルの土甕を並べても大丈夫なくらい?」
「そうだな、それくらい丈夫だったらありがたい」
僕は蔦の中でも太くて丈夫な種類を組み合わせて床を造った。
斜面に生えている木を支柱にして蔦を絡ませ、斜面横に広く蔦を伸ばしていく。
広い部屋と言われたが、斜面縦だと高さが激しくなりすぎる。
段差が高くなり過ぎないように、横に広くする。
「ちょうど良い広さになったら言って、上に生やして壁にするから」
「これくらいで良い、横の広さはこれくらいで、あと山を登るように部屋が続くなら最高なのだが……」
「こんな感じで良いの?」
「嘘だろ、こんな事が本当にできるのかよ!」
僕が床にしていた蔦を上に伸ばしていくのを、ついて来た行商人たちが信じられないように見ている。
村の人たちはもう慣れたもので、当たり前のように見ている。
床と違って、壁なら実をつけても潰す事はないので、果実を実らせる蔦にした。
「実をつけさせるから集めて、食料を無駄にしたら罰が当たるよ」
「「「「「はい」」」」」
僕の言葉に村の人たちが返事をしてくれる。
だけど行商人たちは固まったまま動けないでいる。
「行商の人たちも実を集めるのを手伝ってもらえますか?
商品になるか試食してもらって良いですよ。
それに、床の上を歩かないと住み心地が分からないでしょう?」
僕がそう言うと、代表よりも先にウィロウが走って行った。
最初は片足でドンドンして、次には飛んで床が丈夫か確かめた。
それを見た他の行商人も次々と蔦床の丈夫さを確認した。
「うまい、甘くて酸っぱくて美味しいのに、普通よりも大粒だ」
「これも行商の商品になるぞ」
「生で売れれば最高だが、ワインにしたらどんな味になるんだ?」
「ドライフルーツにしたら普通に売れるぞ!」
「スイカ、アケビ、マタタビ、季節に関係なく実るのか?!」
「そんな事より魔力だ、なんでこんなに魔術を使い続けられるんだ?!」
行商人たちが驚いているけれど、まだまだ止めない。
お父さんがやれるだけやった方が良いと言っていた。
その方が裏切らないと言っていたから、魔力が半分になるまで生やし続ける。
「騒ぐな、恥ずかしい、儂たちの安住の地を造ってくださっているのだぞ!」
行商隊代表が怒ったら、うるさいくらい話していた行商人たちが黙った。
「ケーン殿だったな、確かめたいのだが、作ってくれた床は地面の上にしか作れないのか?」
「地面の上にだけ?」
「あ~、早い話しが、2階は作れないか?」
「こんな感じで良いのかな?
プロテクト・ウィズ・ア・ウォール・オブ・アイビー」
僕は新しく種を蒔いて蔦を生やしていく。
実のらせた果実の多くは食用にしているけれど、少しは種用にしている。
成長させては種を集めているので、次々蔦を生やしても全く困らない。
「ああ、凄いな、床だけでなく2階まで作れるのか、本当に凄すぎるな!」
「この広さだと、3階までだよ。
もっと高くしたいのなら、狭くしないと葉の数が足らなくなる」
「葉の数?」
「この蔦を生かし続けるのに葉っぱが必要なんだ。
1階や2階ならどれだけ広くても大丈夫だけど、あまり広すぎると壁の葉っぱが少なくて蔦が死んでしまうんだ」
「なるほど、だがこの広さなら3階まで作れるのだね?」
「うん、こっちの住むように部屋で、住むのが10人くらいまで良いのなら、3階まで作れるよ」
「ありがとう、それで十分だ、それで作ってくれ。
魔力が少なくなっているなら、続きは明日でも大丈夫だが?」
「ああ、これくらいなら何ともないよ。
斜面によって奥行きの広さが変わるけれど、同じくらいの家でよければ、続けて100軒は建てられるけど、どうします?」
「……続けて建てられるのなら、そうしてもらえるとありがたい。
おい、お前ら、何時まで呆けている!
村に残っている連中と交代してこい、そしてこの光景を絶対に忘れるな!
これが儂たちの大切な家族を守ってくれるのだ!」
「「「「「はい!」」」」」
行商隊代表の言葉に、行商人たちが大きな返事をして走り出した。
「ああ、そうだ、行商隊は牛が大切なのですよね?
牛が住む厩はどうします?」
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