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第1章
第5話:お供え
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僕の魔力量は、この世界の常識では考えられない莫大な量のようです。
ほんの少ししか減っていない感覚の柿の促成でさえ、村中の人たちから物凄く驚かれてしまいました。
季節外れの柿が大量に手に入ったのは、我が家だけでなく、村にとっても予定外のできごとでした。
これから春の実りが得られますが、秋の実りに比べれば微々たるものです。
セリ、ナズナ、フキノトウ、ノビルなどは美味しいですが、甘味がありません。
ミカンは柿に負けない甘味があるのですが、激しい酸味もあるのです。
僕を含めた子供や女性は、これから取れるミカンよりも柿の方が好きなのです。
特に甘みが増す干した柿が大好きなのです。
少々の不利な交換になっても、村の人たちは柿を欲しがります。
ですが、それ以上に欲しがるのがシードル、リンゴ酒です。
お父さんを含めた男性はエールが好きなのですが、女子供は香りがフルーティなのに苦みが強く味の濃いエールよりも、甘いシードルの方が好きなのです。
常温で造るエールは4日ほどで飲めるようになります。
シードルは、泡を作らなくて良いのなら、2日もあれば造れるのです。
ただ、寒い時期でないと失敗する事があるのがシードル造りです。
「ケーン、悪いがリンゴを実らせてくれ。
お母さんたちがリンゴ酒を飲みたいと言っている。
その代わり、ケーンが欲しがっていた大豆と乳を多めにくれるそうだ」
開拓村には、村共有の果樹と、家所有の果樹があります。
畑も同じで、共有の畑と家の畑があります。
村全体で必要な物は、共有の畑で作った果物や穀物を売って買うのです。
家単位で作っている果物や穀物が個人の物になります。
他所の家の物が欲しければ、自分の家の何かと交換してもらうのです。
今回は、僕の魔力でリンゴを実らせるので、欲しい人は自分の家で果物か穀物と交換する事になります。
僕はそれほど物が欲しいと思わない性格なのですが、妹たちが欲しがっている物を手に入れてあげたいとは思います。
前世では、僕がずっと入院しているから、お父さんとお母さん、布施のお爺ちゃんとお婆ちゃん、長瀬のお爺ちゃんとお婆ちゃんも僕ばかりをかまってくれました。
その分、妹たちは寂しい思いをしていたのだと、今なら分かります。
入院していた僕が、家族の愛情を独り占めしていました。
健康になった今は、僕も妹たちに愛情を注ぎたいと思っているのです。
本当は、前世の美味しいお菓子や料理を作ってあげたいのです。
でも、動画やアニメ、マンガやラノベばかりだった僕は、お菓子も料理も作り方を知らないのです。
僕にできるのは、ジョイ神から授かった神与のスキルで果物を実らせてあげる事くらいです。
果物さえあれば、料理上手のお母さんが何か作ってくれます。
珍しい果物さえあれば、他の欲し物と交換してもらえます。
この世界にはビニールハウスも品種改良もないので、野菜や果物は決まった季節にしか食べられないのです。
季節外れに食べようと思ったら、干すか塩漬けにするしかありません。
神与のスキルの中には、長く食べ物を保存できるスキルがあるとフィンリー神官が言っていましたが、開拓村の誰もそんなスキルは持っていません。
「分かった、お父さん、家の前のリンゴを実らせたら良いの?」
「ああ、そうだ、家のリンゴを実らせてくれ。
魔力が余っているのなら、山クリも実らせてくれてもいいぞ。
オリビアもエヴィーたちも焼いた山クリが大好きだからな、ワッハハハハ」
お父さんは冗談のように言いましたが、山クリを一緒に実らせるくらい簡単です。
でも、余りやり過ぎるといけないような気がします。
柿を実らせただけでも、嫌な目で見る人がいました。
もし1日でリンゴと山クリを実らせたら、もっと多くの人が僕を嫌な目で見るかもしれません。
お母さんとエヴィーたちが山クリを食べたいと言うのなら、明日実らせれば良いのです。
1日に1つの果樹を実らせるのなら、もう驚かれません。
嫌な目で見る人も増えないと思います。
それに、今日は甘くて美味しいリンゴが食べられるから、お母さんもエヴィーたちも山クリまで欲しいとは言わないと思います。
「そんな無理を言わないでよ、リンゴを実らせるだけで魔力がなくなっちゃうよ」
「ワッハハハハ、分かっている、分かっている、冗談だ、冗談。
俺がリンゴを取るから、ケーンは実らせたら横になって休んでいなさい。
魔力を1度に使い過ぎたら、倒れる事もあるからな」
「うん、分かったよ、実らせたら直ぐに横になるよ。
メイク・アップル・ベア・フルーツ・クイックリー」
不思議な事に、魔術でやりたいことを考えると、自然と呪文が頭に思い浮かんでくるのです。
ジョイ神の加護だと思うのですが、凄くありがたいです。
ジョイ神に頼んでくださったイワナガヒメ神にも感謝しています。
心の中で感謝しているだけでは、本当に感謝しているのを分かってもらえせん。
「お父さん、神与のスキルを下さったジョイ神に感謝を捧げたいんだ。
今日収穫したリンゴだけでなく、昨日収穫した柿もお供えしたいんだ。
昨日の柿、まだ残っているかな?」
「昨日柿は村中の家から欲しいと言われたから、あまり多く残っていないと思うが、お母さんが必ず残していると思うから、それをお供えしてもらおう」
「うん!」
ほんの少ししか減っていない感覚の柿の促成でさえ、村中の人たちから物凄く驚かれてしまいました。
季節外れの柿が大量に手に入ったのは、我が家だけでなく、村にとっても予定外のできごとでした。
これから春の実りが得られますが、秋の実りに比べれば微々たるものです。
セリ、ナズナ、フキノトウ、ノビルなどは美味しいですが、甘味がありません。
ミカンは柿に負けない甘味があるのですが、激しい酸味もあるのです。
僕を含めた子供や女性は、これから取れるミカンよりも柿の方が好きなのです。
特に甘みが増す干した柿が大好きなのです。
少々の不利な交換になっても、村の人たちは柿を欲しがります。
ですが、それ以上に欲しがるのがシードル、リンゴ酒です。
お父さんを含めた男性はエールが好きなのですが、女子供は香りがフルーティなのに苦みが強く味の濃いエールよりも、甘いシードルの方が好きなのです。
常温で造るエールは4日ほどで飲めるようになります。
シードルは、泡を作らなくて良いのなら、2日もあれば造れるのです。
ただ、寒い時期でないと失敗する事があるのがシードル造りです。
「ケーン、悪いがリンゴを実らせてくれ。
お母さんたちがリンゴ酒を飲みたいと言っている。
その代わり、ケーンが欲しがっていた大豆と乳を多めにくれるそうだ」
開拓村には、村共有の果樹と、家所有の果樹があります。
畑も同じで、共有の畑と家の畑があります。
村全体で必要な物は、共有の畑で作った果物や穀物を売って買うのです。
家単位で作っている果物や穀物が個人の物になります。
他所の家の物が欲しければ、自分の家の何かと交換してもらうのです。
今回は、僕の魔力でリンゴを実らせるので、欲しい人は自分の家で果物か穀物と交換する事になります。
僕はそれほど物が欲しいと思わない性格なのですが、妹たちが欲しがっている物を手に入れてあげたいとは思います。
前世では、僕がずっと入院しているから、お父さんとお母さん、布施のお爺ちゃんとお婆ちゃん、長瀬のお爺ちゃんとお婆ちゃんも僕ばかりをかまってくれました。
その分、妹たちは寂しい思いをしていたのだと、今なら分かります。
入院していた僕が、家族の愛情を独り占めしていました。
健康になった今は、僕も妹たちに愛情を注ぎたいと思っているのです。
本当は、前世の美味しいお菓子や料理を作ってあげたいのです。
でも、動画やアニメ、マンガやラノベばかりだった僕は、お菓子も料理も作り方を知らないのです。
僕にできるのは、ジョイ神から授かった神与のスキルで果物を実らせてあげる事くらいです。
果物さえあれば、料理上手のお母さんが何か作ってくれます。
珍しい果物さえあれば、他の欲し物と交換してもらえます。
この世界にはビニールハウスも品種改良もないので、野菜や果物は決まった季節にしか食べられないのです。
季節外れに食べようと思ったら、干すか塩漬けにするしかありません。
神与のスキルの中には、長く食べ物を保存できるスキルがあるとフィンリー神官が言っていましたが、開拓村の誰もそんなスキルは持っていません。
「分かった、お父さん、家の前のリンゴを実らせたら良いの?」
「ああ、そうだ、家のリンゴを実らせてくれ。
魔力が余っているのなら、山クリも実らせてくれてもいいぞ。
オリビアもエヴィーたちも焼いた山クリが大好きだからな、ワッハハハハ」
お父さんは冗談のように言いましたが、山クリを一緒に実らせるくらい簡単です。
でも、余りやり過ぎるといけないような気がします。
柿を実らせただけでも、嫌な目で見る人がいました。
もし1日でリンゴと山クリを実らせたら、もっと多くの人が僕を嫌な目で見るかもしれません。
お母さんとエヴィーたちが山クリを食べたいと言うのなら、明日実らせれば良いのです。
1日に1つの果樹を実らせるのなら、もう驚かれません。
嫌な目で見る人も増えないと思います。
それに、今日は甘くて美味しいリンゴが食べられるから、お母さんもエヴィーたちも山クリまで欲しいとは言わないと思います。
「そんな無理を言わないでよ、リンゴを実らせるだけで魔力がなくなっちゃうよ」
「ワッハハハハ、分かっている、分かっている、冗談だ、冗談。
俺がリンゴを取るから、ケーンは実らせたら横になって休んでいなさい。
魔力を1度に使い過ぎたら、倒れる事もあるからな」
「うん、分かったよ、実らせたら直ぐに横になるよ。
メイク・アップル・ベア・フルーツ・クイックリー」
不思議な事に、魔術でやりたいことを考えると、自然と呪文が頭に思い浮かんでくるのです。
ジョイ神の加護だと思うのですが、凄くありがたいです。
ジョイ神に頼んでくださったイワナガヒメ神にも感謝しています。
心の中で感謝しているだけでは、本当に感謝しているのを分かってもらえせん。
「お父さん、神与のスキルを下さったジョイ神に感謝を捧げたいんだ。
今日収穫したリンゴだけでなく、昨日収穫した柿もお供えしたいんだ。
昨日の柿、まだ残っているかな?」
「昨日柿は村中の家から欲しいと言われたから、あまり多く残っていないと思うが、お母さんが必ず残していると思うから、それをお供えしてもらおう」
「うん!」
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