運よく生まれ変われたので、今度は思いっきり身体を動かします!

克全

文字の大きさ
上 下
3 / 58
第1章

第3話:神与スキル

しおりを挟む
 痛い、苦しい、心臓が破裂しそうだ!
 でも、うれしい、この痛みと苦しさが心地良い!
 思いっきり畑を駆け回れる喜び、転生して8年経っても変わらない!

「ケーン、早く教会に行く準備をしなさい」

 何時までも畑を走り回っている僕をお母さんが叱ります。
 少しでも時間があると、つい身体を動かしてしまいます。
 特に走る事が止められません。

「はーい、直ぐに用意します」

 僕の住む村は辺境の小さな村だそうですが、それでも教会があります。
 この世界はとても信心深いとお父さんとお母さんが言っていました。

 最初は新しいお父さんとお母さんに戸惑っていましたが、転生してから8年間も愛情を注いでもらうと、素直に親だと思えるようになりました。

 前世のお父さんとお母さんを忘れたわけではありませんが、布施のお爺ちゃんとお婆ちゃん、長瀬のお爺ちゃんとお婆ちゃんが同じくらい好きだったのと同じです。

 前世のお父さんとお母さんも、今のお父さんとお母さんも同じくらい好きです。
 前世のお父さんとお母さんに親孝行できなかった分、今のお父さんとお母さんに親孝行したいと思っています。

 お父さんとお母さんは自由民だそうです。
 自由民の両親から生まれた僕も自由民だそうです。
 王侯貴族の所有する奴隷でなくて本当に良かったです。

 せっかく生まれ変わったのに、奴隷では自由に生きられません。
 だからといって、奴隷を持つ王侯貴族になるのも嫌でした。
 自由民に生まれ変わらせてくれた神様と仏様に感謝です。

 僕はお母さんに連れられて教会に来ました。
 お父さんは今日も朝早くから畑で農作業をしています。

 この村は教会を中心に造られています。
 教会の周囲は、辺境を開拓するのに集まった自由民の家が囲んでいます。

 辺境には恐ろしい猛獣や魔獣が住んでいます。
 人間を頭からバリバリと食べてしまう強い猛獣と魔獣だそうです。

 そんな猛獣や魔獣が入って来ないように家をつなげて、家の壁を城壁の代わりにしているのだそうです。

 丸く固まった家の外には畑が広がっています。
 僕が駆け回っていた畑は、今年は休ませるので何も植えていないのです。
 家畜が食べるクローバーしか生えていないので、好きに駆けまわれます。

 他に春に大麦や豆をまく畑と、秋に小麦やライ麦をまく畑があります。
 以前は秋に小麦をまく畑と休ませる畑の2つしかありませんでしたが、教会の偉い司教様が、畑を3つに分ける方法を考えてくださったそうです。

「この世界は多くの神様が力を合わせてお創りになられたのです。
 人は、多くの神様の1柱から愛され、加護を授かるのです。
 その証拠に、授かる神与のスキルは1つしかありません。
 ケーン、これからスキルを授けてくださる神様を生涯敬い続けるのです」

 教会のフィンリー神官が優しく話をしてくれました。

「はい、ずっと感謝して、神様の教えに従います」

「よく言いました、今から神与の儀式を始めます」

 教会のフィンリー神官はお父さんと同い年くらい男の人です。
 手伝いをしているのは神官さんの奥さんです。
 僕よりも1歳年上に女の子と1歳年下の女の子がいます。

 彼女たちも同じように神官になるのではないそうです。
 神与のスキルによってなれる仕事となれない仕事があるそうです。

 神官になるには神官スキルが必要だと教えてもらいました。
 1歳上の女の子、ライラは土の属性を持つ魔術を授かったそうです。

『ケーン、妾はジョイ、そなたの氏神だったイワナガヒメに頼まれて神与のスキル、木属性の魔術を授けます。
 特別に使い方も授けてあげますから、森に行って確かめなさい』

「フィンリー神官、ジョイ神から木属性の魔術を授かりました。
 森に行って確かめなさいと言われました」

「おお、それは良かったですね。
 木属性の魔術を授かったのなら、開拓村では重宝しますよ」

「直ぐにお父さんとお母さんに報告してきます」

「村の外は危険ですから、お父さんが畑仕事を終えて帰って来るまで、大人しく家で待っていなさい」

「僕は大丈夫です、ジョイ神が特別に魔術の使い方を教えてくださいました」

「ほう、ケーンは特に神様から愛されているようですね。
 普通は自分で色々と試してみるか、同じ神様から同じスキルを授かった人に教わるか、賢者スキルを持つ人に教わるしかないのですが……」

「フィンリー神官、僕もう行くよ」

「しかたありませんね、本当に気をつけるのですよ。
 ケーンのお父さんとお母さんはとても強い方々ですが、それでも勝てない猛獣や魔獣が沢山いるのが、畑に接している魔境なのです」

「はい、お父さんとお母さんから聞いています。
 でもジョイ神から授かった魔術なら大丈夫です。
 ジョイ神がそう教えてくださいました」

 僕はそう言うと教会から駆け出しました。
 少しでも早く畑に行って授かった魔術を試してみたいのです!

 前世はベッドに寝ているだけの人生でしたが、生まれ変わって思いっきり駆け回れるようになれました。

 でも、危険だからと家の近くしか出してもらえませんでした。
 ジョイ神の魔術を授かったら、森の中まで行けるのです!
 もっと遠く、この世界の果てまで行くことができるのです!

注★★★★★★この世界を日本の季節に当てはめると

春上月:3月
春中月:4月
春下月:5月
夏上月:6月
夏中月:7月
夏下月:8月
秋上月:9月
秋中月:10月
秋下月:11月
冬上月:12月
冬中月:1月
冬下月:2月
しおりを挟む
感想 11

あなたにおすすめの小説

村から追い出された変わり者の僕は、なぜかみんなの人気者になりました~異種族わちゃわちゃ冒険ものがたり~

めーぷる
児童書・童話
グラム村で変わり者扱いされていた少年フィロは村長の家で小間使いとして、生まれてから10年間馬小屋で暮らしてきた。フィロには生き物たちの言葉が分かるという不思議な力があった。そのせいで同年代の子どもたちにも仲良くしてもらえず、友達は森で助けた赤い鳥のポイと馬小屋の馬と村で飼われている鶏くらいだ。 いつもと変わらない日々を送っていたフィロだったが、ある日村に黒くて大きなドラゴンがやってくる。ドラゴンは怒り村人たちでは歯が立たない。石を投げつけて何とか追い返そうとするが、必死に何かを訴えている. 気になったフィロが村長に申し出てドラゴンの話を聞くと、ドラゴンの巣を荒らした者が村にいることが分かる。ドラゴンは知らぬふりをする村人たちの態度に怒り、炎を噴いて暴れまわる。フィロの必死の説得に漸く耳を傾けて大人しくなるドラゴンだったが、フィロとドラゴンを見た村人たちは、フィロこそドラゴンを招き入れた張本人であり実は魔物の生まれ変わりだったのだと決めつけてフィロを村を追い出してしまう。 途方に暮れるフィロを見たドラゴンは、フィロに謝ってくるのだがその姿がみるみる美しい黒髪の女性へと変化して……。 「ドラゴンがお姉さんになった?」 「フィロ、これから私と一緒に旅をしよう」 変わり者の少年フィロと異種族の仲間たちが繰り広げる、自分探しと人助けの冒険ものがたり。 ・毎日7時投稿予定です。間に合わない場合は別の時間や次の日になる場合もあります。

【奨励賞】おとぎの店の白雪姫

ゆちば
児童書・童話
【第15回絵本・児童書大賞 奨励賞】 母親を亡くした小学生、白雪ましろは、おとぎ商店街でレストランを経営する叔父、白雪凛悟(りんごおじさん)に引き取られる。 ぎこちない二人の生活が始まるが、ひょんなことからりんごおじさんのお店――ファミリーレストラン《りんごの木》のお手伝いをすることになったましろ。パティシエ高校生、最速のパート主婦、そしてイケメンだけど料理脳のりんごおじさんと共に、一癖も二癖もあるお客さんをおもてなし! そしてめくるめく日常の中で、ましろはりんごおじさんとの『家族』の形を見出していく――。 小さな白雪姫が『家族』のために奔走する、おいしいほっこり物語。はじまりはじまり! 他のサイトにも掲載しています。 表紙イラストは今市阿寒様です。 絵本児童書大賞で奨励賞をいただきました。

少年騎士

克全
児童書・童話
「第1回きずな児童書大賞参加作」ポーウィス王国という辺境の小国には、12歳になるとダンジョンか魔境で一定の強さになるまで自分を鍛えなければいけないと言う全国民に対する法律があった。周囲の小国群の中で生き残るため、小国を狙う大国から自国を守るために作られた法律、義務だった。領地持ち騎士家の嫡男ハリー・グリフィスも、その義務に従い1人王都にあるダンジョンに向かって村をでた。だが、両親祖父母の計らいで平民の幼馴染2人も一緒に12歳の義務に同行する事になった。将来救国の英雄となるハリーの物語が始まった。

冒険者ではない、世界一のトレジャーハンターになる!

克全
児童書・童話
「第1回きずな児童書大賞参加作」宝船竜也は先祖代々宝探しに人生を賭けるトレジャーハンターの家に生まれた。竜也の夢は両親や祖父母のような世界1番のトレジャーハンターになる事だ。だが41年前、曾祖父が現役の時代に、世界に突然ダンジョンが現れた。ダンジョンの中でだけレベルアップしたり魔術が使えたりする上に、現れるモンスターを倒すと金銀財宝貴金属を落とす分かって、世は大ダンジョン時代となった。その時代に流行っていたアニメやラノベの影響で、ダンジョンで一攫千金を狙う人たちは冒険者と呼ばれるようになった。だが、宝船家の人たちは頑なに自分たちはトレジャーハンターだと名乗っていた。

四尾がつむぐえにし、そこかしこ

月芝
児童書・童話
その日、小学校に激震が走った。 憧れのキラキラ王子さまが転校する。 女子たちの嘆きはひとしお。 彼に淡い想いを抱いていたユイもまた動揺を隠せない。 だからとてどうこうする勇気もない。 うつむき複雑な気持ちを抱えたままの帰り道。 家の近所に見覚えのない小路を見つけたユイは、少し寄り道してみることにする。 まさかそんな小さな冒険が、あんなに大ごとになるなんて……。 ひょんなことから石の祠に祀られた三尾の稲荷にコンコン見込まれて、 三つのお仕事を手伝うことになったユイ。 達成すれば、なんと一つだけ何でも願い事を叶えてくれるという。 もしかしたら、もしかしちゃうかも? そこかしこにて泡沫のごとくあらわれては消えてゆく、えにしたち。 結んで、切って、ほどいて、繋いで、笑って、泣いて。 いろんな不思議を知り、数多のえにしを目にし、触れた先にて、 はたしてユイは何を求め願うのか。 少女のちょっと不思議な冒険譚。 ここに開幕。

昨日の敵は今日のパパ!

波湖 真
児童書・童話
アンジュは、途方に暮れていた。 画家のママは行方不明で、慣れない街に一人になってしまったのだ。 迷子になって助けてくれたのは騎士団のおじさんだった。 親切なおじさんに面倒を見てもらっているうちに、何故かこの国の公爵様の娘にされてしまった。 私、そんなの困ります!! アンジュの気持ちを取り残したまま、公爵家に引き取られ、そこで会ったのは超不機嫌で冷たく、意地悪な人だったのだ。 家にも帰れず、公爵様には嫌われて、泣きたいのをグッと我慢する。 そう、画家のママが戻って来るまでは、ここで頑張るしかない! アンジュは、なんとか公爵家で生きていけるのか? どうせなら楽しく過ごしたい! そんな元気でちゃっかりした女の子の物語が始まります。

生まれたばかりですが、早速赤ちゃんセラピー?始めます!

mabu
児童書・童話
超ラッキーな環境での転生と思っていたのにママさんの体調が危ないんじゃぁないの? ママさんが大好きそうなパパさんを闇落ちさせない様に赤ちゃんセラピーで頑張ります。 力を使って魔力を増やして大きくなったらチートになる! ちょっと赤ちゃん系に挑戦してみたくてチャレンジしてみました。 読みにくいかもしれませんが宜しくお願いします。 誤字や意味がわからない時は皆様の感性で受け捉えてもらえると助かります。 流れでどうなるかは未定なので一応R15にしております。 現在投稿中の作品と共に地道にマイペースで進めていきますので宜しくお願いします🙇 此方でも感想やご指摘等への返答は致しませんので宜しくお願いします。

転生チートがマヨビームってなんなのっ?!

児童書・童話
14歳の平凡な看板娘にいきなり“世界を救え”とか無茶ブリすぎない??しかも職業が≪聖女≫で、能力が……≪マヨビーム≫?!神託を受け、連行された神殿で≪マヨビーム≫の文字を見た途端、エマは思い出した。前世の記憶を。そして同時にブチ切れた。「マヨビームでどうやって世界を救えっていうのよ?!!」これはなんだかんだでマヨビーム(マヨビームとか言いつつ、他の調味料もだせる)を大活用しつつ、“世界を救う”旅に出たエマたちの物語。3月中は毎日更新予定!

処理中です...