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野営

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「今日はここで野営しようか」
「はい。ルイ様」
 ガビに人間の汚い部分を見せないように、巡検使先触れ役の魔晶石使い魔が、犯罪者の摘発を行ってくれるまで、森で狩りをしたり料理をしたりして過ごした。
 ガビが不自由しないように、土魔法で圧縮強化岩盤の家を創り出した。
 王城や屋敷のような広大なモノではなく、若い新婚貴族が住むような離れだ。
 貴族が少数の心利いた執事や侍女と住むような離れだから、貴族の屋敷にしては小さい。
 だが庶民の基準で言えば、大庄屋の屋敷よりは大きいかもしれない。
 まあ大庄屋とはいっても、中には醸造業を行っているような家もあるから、そんな家は庶民でもとんでもなく大きな屋敷を構えている。
 農業専業の大庄屋よりは大きいという意味だ。
 執事や侍女、更に言えば警備兵の代わりも魔晶石使い魔がやってくれるから、何も不自由しない。
 だが、誰かに何かしてもらうのではなく、余とガビが助け合って料理をするのがいい。
 狩りも魔法を使わず、弓を使って狩るのがいい。
 本当なら簡単に出来てしまう事も、難しいルールを設けて、厳しい制限の中で競争するのが楽しい。
 魔法ではなく包丁を使って料理をする。
 鹿や猪の皮を剥ぎ、肉を捌いて塩や香辛料をまぶす。
 香辛料も魔法袋の中にある完成品ではなく、狩りに入った森の中に有る物だけを使う。
 流石に塩は手持ちの物を使う事にした。
 制限をかけ過ぎて、不味いモノを食べるのは嫌だからだ。
 魔法を使うのなら、地中の塩分を抽出して塩を生成することは出来るのだが、それは興覚めだ。
 そこまでするくらいなら、素直に魔法袋に中に有る塩を使った方がいい。
 余もガビも、笑顔の絶えない時間を過ごす事が出来た。
 鹿の香草焼きという、野趣あふれる料理で、普段の洗練された料理とは比べ物にならないが、二人で一緒に作った料理を、熱々で食べるというぜいたくは、料理の味を引き立てる最高のスパイスだった。
 食べる物を食べたら、出るモノがある。
 野営で女性が困るのがトイレ問題だ。
 ある意味一番無防備な時間なので、護衛の人間が必要になる。
 絶対に連れションになるのだが、家族や夫婦でなければ、異性では問題がある。
 それもあって、男性は男性、女性は女性だけで冒険者パーティーを組むことになる。
 余やガビに護衛など不要だし、どうしても必要ならば、魔晶石使い魔にやらせればいいが、どうせ家を創り出すのなら、水洗トイレを完備した家を創り出せばいい。
 巡検使先触れ役の魔晶石使い魔が仕事を終えるまで、三日間野営を楽しんだ。
 本当に愉しく幸せな三日間だった。
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