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第一章

4話

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 私は精霊に持ち上げられて落とし穴から出ました。
 精霊も興が乗ったのか、土を竜の姿を似せたので、私は竜の頭に乗っているような形に成りました。
 ですが私と竜像を見て悲鳴を上げている訳ではなかったです。
 精霊が悪戯をしていたのです。

 精霊は悪戯好きな所もあります。
 普段は私が悪質な悪戯を止めているのですが、私を傷つけようとした者達になら、少々悪質な悪戯しても大丈夫と考えたようです。
 土が手の形に変化して、王太子と取り巻きの足を掴んでいます。
 これは恐ろしいでしょうね。

 何だか臭いです!
 恐怖のあまり脱糞してしまったようです。
 悲鳴を上げて土の手から逃げ回る王太子や取り巻きの股間が、ぐっしょりと濡れています。
 失禁もしてしまっています。

「精霊様が御怒りですよ。
 これで私が大地の乙女だと理解していただきましたか?
 ちゃんと謝って頂かないと、精霊様の怒りは収まりませんよ。
 王太子殿下!」

 王太子には、ちゃんと謝って頂きましょう。
 いい機会です。
 私の代で大地の乙女と王家の上下関係を正しておかないと、次代の大地の乙女が嫌な思いをする事になります。

「余ではない。
 この者共が上奏したから、仕方なくやったのだ!
 余の責任でない事を、謝る事などできん!
 だからやめさせろ!」

「何を無責任な事を言っている!
 さっきお前がその口で言ったであろう!
 偉そうに王太子風吹かしたのなら、責任とって謝れ!」

 クロエが全身を怒りで震わせながら王太子を罵っています。
 正義感が強いから、卑怯な王太子が許せないのでしょうね。
 ですが剣に手をかけているのはいけません。
 不敬罪どころか、反逆罪をでっちあげられてしまします。
 それに万が一殺していまうと問題です。

 せっかく馬鹿が次世代の王なのですから、徹底的に恐怖を与えて、絶対に大地の乙女に逆らわないようにした方が得策です。
 第二王子が後継者になって、下手に神殿との融和を図られたりしたら、今神殿にいる王家派を追放できなくなってしまいます。

「クロエ、殺しちゃ駄目ですよ。
 ちゃんと謝らせないと、王家との関係を正せないのですよ」

「は、申し訳ありません」

 クロエが一瞬直立不動になって我に返ってくれました。

「殿下、助けてください」
「殿下、謝ってください。
 御願いします」

 王太子の側近達が恐怖で泣き喚いています。

「馬鹿を申すな!
 余が大地の乙女ごときに謝れるか!
 謝りたいのならお前らが謝れ。
 余は絶対に謝らんぞ!」

 あら、あら、なんて強情なんでしょう。
 この程度では反省する気にならないのですね。
 では仕方ありません。
 私がやられたのと同じ事を、キッチリとやりかえさせていただきます。
 
 ですが私がやらせたと思われては迷惑ですね。
 この場では逃がして差し上げましょう。
 どこでどうやって仕返しするかは、精霊に任せましょう。
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