月乙女の伯爵令嬢が婚約破棄させられるそうです。

克全

文字の大きさ
上 下
22 / 29
第2章

21話

しおりを挟む
 遂に結納金が届けられました。
 披露宴と結婚式の会場も、普段は王家が使う由緒ある場所に決まりました。
 もう結婚から逃げることは出来ません。
 覚悟は決めました。
 これも貴族家に一人娘として生まれた定めです。

 ですが希望もあります。
 ヴラド大公殿下が送って下さった侍女や侍従が、よく働いてくれています。
 特に侍女達が、期待以上の働きをしてくれています。
 もしかしたら、弟か妹が産まれてくれるかもしれません。
 今のスミス伯爵家なら、どれほど沢山の弟妹が産まれても大丈夫です。

 もし、もし弟が産まれてくれたら、ローガン様と閨を共にしなくてすみます。
 フィリップス公爵家は、御金さえ手に入ればいいのです。
 爺もそう言ってくれています。
 弟さえ生まれれば、ローガン様は見せかけの夫でいいと言ってくれたのです。
 ローガン様には、見目のよい侍女をあてがうと言ってくれました。

 爺が口にしたのなら、ヴラド大公殿下も御承知の事でしょう。
 ならば安心です。
 問題は父上様に子種が残っているのかどうか。
 こればかりは神に祈るしかありません。
 母上様には少し申し訳ない気もしますが、私の為なら我慢してくださると信じています。

 時間稼ぎがしたくて、細かいところに注文を付けようとしましたが、流石にフィリップス公爵家にはよい家臣がいるようで、文句のつけようがありませんでした。
 ヴラド大公殿下も色々と気にかけてくださっています。
 下手な小細工が出来なくなりました。

「今日はこのような立派な婚約披露宴を開催して頂き、感謝の言葉もありません」

「なあに、気にするな。
 余は二人の仲人だ。
 これくらいの事は当然の事だ」

 どんどん結婚が近づきます。
 ヴラド大公殿下が、私とローガン様の為に、結婚式と結婚披露宴以外に、婚約披露宴を開催してくださいました。
 それはそれは立派なモノで、小心な私は足がすくんでしまいました。

「大公殿下。
 今日は家のローガンの為に、このような立派な婚約披露宴を開催して頂き、感謝の言葉もありません」

 フィリップス公爵家当主のヘンリー様が御礼を言っておられます。
 顔色が真っ青です。
 もう借金で青息吐息だと言う噂です。
 それなのに、このような目もくらむように立派な婚約披露宴を、ヴラド大公殿下が開催してくださいました。

 費用は全てヴラド大公殿下が払って下さっていますが、後で掛かった費用以上の御礼をしなければなりません。
 ヘンリー公爵様の顔色が悪くなるのも当然でしょう。

「ところでフィリップス公爵。
 本日の主役はどこにいるのだ?」

「はぁ。
 私も探しているのですが……
 あの馬鹿者が!」

「きゃぁぁぁぁ!」
しおりを挟む
感想 27

あなたにおすすめの小説

平和的に婚約破棄したい悪役令嬢 vs 絶対に婚約破棄したくない攻略対象王子

深見アキ
恋愛
乙女ゲームの悪役令嬢・シェリルに転生した主人公は平和的に婚約破棄しようと目論むものの、何故かお相手の王子はすんなり婚約破棄してくれそうになくて……? タイトルそのままのお話。 (4/1おまけSS追加しました) ※小説家になろうにも掲載してます。 ※表紙素材お借りしてます。

悪役令嬢は攻略対象者を早く卒業させたい

砂山一座
恋愛
公爵令嬢イザベラは学園の風紀委員として君臨している。 風紀委員の隠された役割とは、生徒の共通の敵として立ちふさがること。 イザベラの敵は男爵令嬢、王子、宰相の息子、騎士に、魔術師。 一人で立ち向かうには荷が重いと国から貸し出された魔族とともに、悪役令嬢を務めあげる。 強欲悪役令嬢ストーリー(笑) 二万字くらいで六話完結。完結まで毎日更新です。

悪役令嬢ってこれでよかったかしら?

砂山一座
恋愛
第二王子の婚約者、テレジアは、悪役令嬢役を任されたようだ。 場に合わせるのが得意な令嬢は、婚約者の王子に、場の流れに、ヒロインの要求に、流されまくっていく。 全11部 完結しました。 サクッと読める悪役令嬢(役)。

悪役令嬢の私が婚約破棄?いいでしょう。どうなるか見ていなさい!

有賀冬馬
恋愛
マリアンヌは悪役令嬢として名高い侯爵家の娘だった。 そんな彼女が婚約者のシレクサ子爵から婚約破棄を言い渡される。 しかし彼女はまったくショックを受ける様子もなく……

どうやらお前、死んだらしいぞ? ~変わり者令嬢は父親に報復する~

野菜ばたけ@既刊5冊📚好評発売中!
ファンタジー
「ビクティー・シークランドは、どうやら死んでしまったらしいぞ?」 「はぁ? 殿下、アンタついに頭沸いた?」  私は思わずそう言った。  だって仕方がないじゃない、普通にビックリしたんだから。  ***  私、ビクティー・シークランドは少し変わった令嬢だ。  お世辞にも淑女然としているとは言えず、男が好む政治事に興味を持ってる。  だから父からも煙たがられているのは自覚があった。  しかしある日、殺されそうになった事で彼女は決める。  「必ず仕返ししてやろう」って。  そんな令嬢の人望と理性に支えられた大勝負をご覧あれ。

婚約破棄された悪役令嬢が聖女になってもおかしくはないでしょう?~えーと?誰が聖女に間違いないんでしたっけ?にやにや~

荷居人(にいと)
恋愛
「お前みたいなのが聖女なはずがない!お前とは婚約破棄だ!聖女は神の声を聞いたリアンに違いない!」 自信満々に言ってのけたこの国の王子様はまだ聖女が決まる一週間前に私と婚約破棄されました。リアンとやらをいじめたからと。 私は正しいことをしただけですから罪を認めるものですか。そう言っていたら檻に入れられて聖女が決まる神様からの認定式の日が過ぎれば処刑だなんて随分陛下が外交で不在だからとやりたい放題。 でもね、残念。私聖女に選ばれちゃいました。復縁なんてバカなこと許しませんからね? 最近の聖女婚約破棄ブームにのっかりました。 婚約破棄シリーズ記念すべき第一段!只今第五弾まで完結!婚約破棄シリーズは荷居人タグでまとめておりますので荷居人ファン様、荷居人ファンなりかけ様、荷居人ファン……かもしれない?様は是非シリーズ全て読んでいただければと思います!

【完結】悪役令嬢、ヒロインはいじめない

荷居人(にいと)
恋愛
「君とは婚約破棄だ!」 きっと睨み付けて私にそんなことを言い放ったのは、私の婚約者。婚約者の隣には私とは別のご令嬢を肩に抱き、大勢の前でざまぁみろとばかりに指をこちらに差して叫ぶ。 「人に指を差してはいけませんと習いませんでした?」 周囲がざわつく中で私はただ冷静に注意した。何故かって?元々この未来を私は知っていたから。だから趣旨を変えてみたけどゲームの強制力には抗えないみたい。 でもまあ、本番はここからよね。

【完結】悪役令嬢の誤算~この展開は望んでません~

荷居人(にいと)
恋愛
悪役令嬢のざまあ劇が私は前世から好きだった。だからか、死んで生まれ変わったのが前世でいう悪役令嬢そのものの人物だと自覚したとき私は周りに医者を呼ばれるほどに喜んだものだ。 私に冷たい婚約者の王子に、電波ヒロイン、私に殿下は相応しくないという攻略対象たち。 これはもう悪役令嬢によるざまあ待ったなしでは?と思うわけですよ。 るんるんの断罪劇でまさかあんなことになるとは…………誰が思います?

処理中です...