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第2章
18話
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レオはヴラドにもう一度会わなければいけなくなってしまった。
自分の方に落ち度があるから、本当は会いたくないのだ。
だがそれは許されない。
闇の眷属すべてに係わる事だから、詫びて相談しないわけにはいかなかった。
「謝らなければならないことがある」
「ほう。
レオが素直に余に詫びると言うのか?
これは余程のことなのだな。
腹を据えて聞かせてもらおうか」
「実は、月乙女の事なのだが。
恋する相手がいるのだ」
「なるほど。
そう言う事か。
だがそれは絶対に許されない事だぞ。
余りに不覚ではないか」
「すまん。
本当にすまん。
だが恋は思案の外と言うではないか。
家のカイが兄弟の心算で育っていても、月乙女が恋してしまったら、我らにはどうしようもないのだ」
「レオの言う事も分かるが、もう少し気を付けていれば、子供の内に引き離す事も出来たのではないか?」
「ヴラドはそう言うが、俺も大変だったのだ。
先代は若くに亡くなってしまうし、伯爵は腑抜けになってしまう。
当代様に幸せに育って頂かねば、最低限の花も確保出来なかったのだ。
乳母と乳兄妹を引き離したりしたら、お前の所の送る花も確保出来なかったのだ」
「レオがそこまで言うのなら、どうにも出来ない状態だったのだろう。
だがな、我ら闇の眷属と月乙女の間に子は産まれんのだ。
どれほど恋焦がれようと、子が産まれなければ血が絶えてしまうのだ。
その事を忘れるなよ」
「忘れてなどおらん。
おらんから月乙女には反対しておる。
だがな、余りに突き放して、不孝にするわけにはいかんのだ。
月乙女が余りに嘆き悲しんでしまったら、花が咲かないのだぞ」
「そうだな。
本当に厄介だな。
月の加護を得るのに、何と呪われた条件が付いているんだ。
だが、だったらどうする。
ずっと側にいたレオはどう考えているのだ」
「ヴラドの魅了でスミス伯爵を操り、子作りさせられればいいのだが、月乙女の血統には通用しないのだな」
「ああ。
残念だが、スミス伯爵に魅了は通じない。
もちろん月乙女にも通じない。
諦めてくれ」
「ヴラドの家の人間の家臣に、その道に通じた女はいないのか?」
「後宮の事を言っているのか?」
「後宮でもどこでもいい。
いや、家臣ですらなくていい。
娼婦でも乞食でも構わない。
スミス伯爵の子を産んでくれる女はいないか?
それと薬だ。
スミス伯爵をその気にさせる、いい薬はないか?」
「そうだな。
そっちの方も大切だな。
月乙女の血統を増やすには、そっちの方が重要だな。
分かった。
出来る限り女を集めよう。
だがお前の方も女を集めろよ。
せっかく大金を掴ませてやったんだ。
上手く使え」
「分かっているよ」
自分の方に落ち度があるから、本当は会いたくないのだ。
だがそれは許されない。
闇の眷属すべてに係わる事だから、詫びて相談しないわけにはいかなかった。
「謝らなければならないことがある」
「ほう。
レオが素直に余に詫びると言うのか?
これは余程のことなのだな。
腹を据えて聞かせてもらおうか」
「実は、月乙女の事なのだが。
恋する相手がいるのだ」
「なるほど。
そう言う事か。
だがそれは絶対に許されない事だぞ。
余りに不覚ではないか」
「すまん。
本当にすまん。
だが恋は思案の外と言うではないか。
家のカイが兄弟の心算で育っていても、月乙女が恋してしまったら、我らにはどうしようもないのだ」
「レオの言う事も分かるが、もう少し気を付けていれば、子供の内に引き離す事も出来たのではないか?」
「ヴラドはそう言うが、俺も大変だったのだ。
先代は若くに亡くなってしまうし、伯爵は腑抜けになってしまう。
当代様に幸せに育って頂かねば、最低限の花も確保出来なかったのだ。
乳母と乳兄妹を引き離したりしたら、お前の所の送る花も確保出来なかったのだ」
「レオがそこまで言うのなら、どうにも出来ない状態だったのだろう。
だがな、我ら闇の眷属と月乙女の間に子は産まれんのだ。
どれほど恋焦がれようと、子が産まれなければ血が絶えてしまうのだ。
その事を忘れるなよ」
「忘れてなどおらん。
おらんから月乙女には反対しておる。
だがな、余りに突き放して、不孝にするわけにはいかんのだ。
月乙女が余りに嘆き悲しんでしまったら、花が咲かないのだぞ」
「そうだな。
本当に厄介だな。
月の加護を得るのに、何と呪われた条件が付いているんだ。
だが、だったらどうする。
ずっと側にいたレオはどう考えているのだ」
「ヴラドの魅了でスミス伯爵を操り、子作りさせられればいいのだが、月乙女の血統には通用しないのだな」
「ああ。
残念だが、スミス伯爵に魅了は通じない。
もちろん月乙女にも通じない。
諦めてくれ」
「ヴラドの家の人間の家臣に、その道に通じた女はいないのか?」
「後宮の事を言っているのか?」
「後宮でもどこでもいい。
いや、家臣ですらなくていい。
娼婦でも乞食でも構わない。
スミス伯爵の子を産んでくれる女はいないか?
それと薬だ。
スミス伯爵をその気にさせる、いい薬はないか?」
「そうだな。
そっちの方も大切だな。
月乙女の血統を増やすには、そっちの方が重要だな。
分かった。
出来る限り女を集めよう。
だがお前の方も女を集めろよ。
せっかく大金を掴ませてやったんだ。
上手く使え」
「分かっているよ」
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