12 / 29
第1章
11話
しおりを挟む
ウィリアム王は内心激怒していた。
大切な姫を結婚前に傷者にされたのだ。
その怒りは怒髪天を突く勢いだった。
だがその怒りのやり場がなかった。
当の姫がジョージを許してやってくれと懇願するのだ。
許せるものではなかった。
胎にいるのが可愛い姫の子供とは言え、半分はジョージの血が流れている。
無条件で愛せるものではなかった。
流してしまいたかった。
ジョージを八つ裂きにしたかった。
憤怒の心を和らげてくれたのが、ヴラド大公の助言だった。
人の情愛など移ろいやすいモノ。
姫に愛人が出来たり、ジョージに愛人が出来たりしたら、問答無用で処断すればいいと言うのだ。
もっともだと思った。
貴族が仮面夫婦なのはよくある事だ。
家同士の政略結婚が普通の貴族は、子供さえ作らなければ女性が愛人を作るのも普通だった。
家を継ぐ者が必要な貴族は、男が何人もの側室や妾を置くのが普通だった。
ウィリアム王も多くの側室と妾を置いている。
なんなら姫に相応しい貴族子弟を選んで、仲良くなるようにお膳立てしてもいい。
特にジョージは簡単だろう。
スミス家の娘と婚約する前は、酷い女関係だったと手の者が報告している。
婚約中に姫に手を出すような好色で愚かな男だ。
女を使って誘惑すれば、簡単に浮気するだろう。
それを暴けば、姫の眼も醒めるだろう。
姫が愛想をつかしてくれたら、思う存分処罰することが出来る。
今からその方法を考えることで、ウィリアム王は心の平穏を取り戻した。
助言してくれたヴラド大公に感謝した。
そこでヴラド大公の願いを叶えることにした。
それはスミス伯爵家にも関係する事だった。
「爺。
本当にお受けしていいのかしら」
「大丈夫でございます。
むしろお受けしなければならない事でございます。
ヴラド大公殿下は草花が大変お好きなのです。
お嬢様が育てる花を愉しみにしておられるのです。
だからこそ、広い庭園のある屋敷を斡旋して下さるのです」
「そうね。
あれほど花にこだわっておられたのですものね。
頑張って花を咲かさなければいけないわね。
でも、二種類の花だけでいいのかしら?」
「お嬢様。
ヴラド大公殿下ほどの御方ならば、他の花などいくらでも手に入れる事が出来ます。
今は亡き奥方様とお嬢様しか花を咲かせられない、あの二つの花だけが必要なのでございます。
元の御屋敷で咲く花は奥方様の墓前に供えられて、新しい屋敷で咲いた分を、殿下にお送りされたらいいのです」
「そうね。
そうしないといけないわね。
爺の言う通りにするわ」
ヴラド大公は、ウィリアム王に広大な庭付きの屋敷が欲しいと願い出た。
ビクトリア王女の不義を内々に治めた褒美を要求したのだ。
ヴラド大公の助言に感謝していたウィリアム王はそれを認めた。
ヴラド大公は手に入れた屋敷をスミス伯爵家に貸し与えて、花を作って欲しいと言ってきた。
ヴラド大公に感謝していたアリスは、花作りに専念しようと考えていた。
婚約破棄の憂き目にあい、貴族社会で大恥をかいたアリスだ。
もうまともな結婚は厳しい。
だがヴラド大公のお陰で莫大な慰謝料が手に入った。
スミス伯爵家が財力を手に入れたのだ。
苦手な人付き合いをしてまで、貴族社会で駆け引きする必要がなかった。
アリスは大好きな花作りに専念しようと考えていた。
だがそうはいかなかった。
大切な姫を結婚前に傷者にされたのだ。
その怒りは怒髪天を突く勢いだった。
だがその怒りのやり場がなかった。
当の姫がジョージを許してやってくれと懇願するのだ。
許せるものではなかった。
胎にいるのが可愛い姫の子供とは言え、半分はジョージの血が流れている。
無条件で愛せるものではなかった。
流してしまいたかった。
ジョージを八つ裂きにしたかった。
憤怒の心を和らげてくれたのが、ヴラド大公の助言だった。
人の情愛など移ろいやすいモノ。
姫に愛人が出来たり、ジョージに愛人が出来たりしたら、問答無用で処断すればいいと言うのだ。
もっともだと思った。
貴族が仮面夫婦なのはよくある事だ。
家同士の政略結婚が普通の貴族は、子供さえ作らなければ女性が愛人を作るのも普通だった。
家を継ぐ者が必要な貴族は、男が何人もの側室や妾を置くのが普通だった。
ウィリアム王も多くの側室と妾を置いている。
なんなら姫に相応しい貴族子弟を選んで、仲良くなるようにお膳立てしてもいい。
特にジョージは簡単だろう。
スミス家の娘と婚約する前は、酷い女関係だったと手の者が報告している。
婚約中に姫に手を出すような好色で愚かな男だ。
女を使って誘惑すれば、簡単に浮気するだろう。
それを暴けば、姫の眼も醒めるだろう。
姫が愛想をつかしてくれたら、思う存分処罰することが出来る。
今からその方法を考えることで、ウィリアム王は心の平穏を取り戻した。
助言してくれたヴラド大公に感謝した。
そこでヴラド大公の願いを叶えることにした。
それはスミス伯爵家にも関係する事だった。
「爺。
本当にお受けしていいのかしら」
「大丈夫でございます。
むしろお受けしなければならない事でございます。
ヴラド大公殿下は草花が大変お好きなのです。
お嬢様が育てる花を愉しみにしておられるのです。
だからこそ、広い庭園のある屋敷を斡旋して下さるのです」
「そうね。
あれほど花にこだわっておられたのですものね。
頑張って花を咲かさなければいけないわね。
でも、二種類の花だけでいいのかしら?」
「お嬢様。
ヴラド大公殿下ほどの御方ならば、他の花などいくらでも手に入れる事が出来ます。
今は亡き奥方様とお嬢様しか花を咲かせられない、あの二つの花だけが必要なのでございます。
元の御屋敷で咲く花は奥方様の墓前に供えられて、新しい屋敷で咲いた分を、殿下にお送りされたらいいのです」
「そうね。
そうしないといけないわね。
爺の言う通りにするわ」
ヴラド大公は、ウィリアム王に広大な庭付きの屋敷が欲しいと願い出た。
ビクトリア王女の不義を内々に治めた褒美を要求したのだ。
ヴラド大公の助言に感謝していたウィリアム王はそれを認めた。
ヴラド大公は手に入れた屋敷をスミス伯爵家に貸し与えて、花を作って欲しいと言ってきた。
ヴラド大公に感謝していたアリスは、花作りに専念しようと考えていた。
婚約破棄の憂き目にあい、貴族社会で大恥をかいたアリスだ。
もうまともな結婚は厳しい。
だがヴラド大公のお陰で莫大な慰謝料が手に入った。
スミス伯爵家が財力を手に入れたのだ。
苦手な人付き合いをしてまで、貴族社会で駆け引きする必要がなかった。
アリスは大好きな花作りに専念しようと考えていた。
だがそうはいかなかった。
0
お気に入りに追加
2,234
あなたにおすすめの小説
【完結】名ばかりの妻を押しつけられた公女は、人生のやり直しを求めます。2度目は絶対に飼殺し妃ルートの回避に全力をつくします。
yukiwa (旧PN 雪花)
恋愛
*タイトル変更しました。(旧題 黄金竜の花嫁~飼殺し妃は遡る~)
パウラ・ヘルムダールは、竜の血を継ぐ名門大公家の跡継ぎ公女。
この世を支配する黄金竜オーディに望まれて側室にされるが、その実態は正室の仕事を丸投げされてこなすだけの、名のみの妻だった。
しかもその名のみの妻、側室なのに選抜試験などと御大層なものがあって。生真面目パウラは手を抜くことを知らず、ついつい頑張ってなりたくもなかった側室に見事当選。
もう一人の側室候補エリーヌは、イケメン試験官と恋をしてさっさと選抜試験から引き揚げていた。
「やられた!」と後悔しても、後の祭り。仕方ないからパウラは丸投げされた仕事をこなし、こなして一生を終える。そしてご褒美にやり直しの転生を願った。
「二度と絶対、飼殺しの妃はごめんです」
そうして始まった2度目の人生、なんだか周りが騒がしい。
竜の血を継ぐ4人の青年(後に試験官になる)たちは、なぜだかみんなパウラに甘い。
後半、シリアス風味のハピエン。
3章からルート分岐します。
小説家になろう、カクヨムにも掲載しています。
表紙画像はwaifulabsで作成していただきました。
https://waifulabs.com/
悪役令嬢に仕立てあげられて婚約破棄の上に処刑までされて破滅しましたが、時間を巻き戻してやり直し、逆転します。
しろいるか
恋愛
王子との許婚で、幸せを約束されていたセシル。だが、没落した貴族の娘で、侍女として引き取ったシェリーの魔の手により悪役令嬢にさせられ、婚約破棄された上に処刑までされてしまう。悲しみと悔しさの中、セシルは自分自身の行いによって救ってきた魂の結晶、天使によって助け出され、時間を巻き戻してもらう。
次々に襲い掛かるシェリーの策略を切り抜け、セシルは自分の幸せを掴んでいく。そして憎しみに囚われたシェリーは……。
破滅させられた不幸な少女のやり直し短編ストーリー。人を呪わば穴二つ。
断罪されて婚約破棄される予定のラスボス公爵令嬢ですけど、先手必勝で目にもの見せて差し上げましょう!
ありあんと
恋愛
ベアトリクスは突然自分が前世は日本人で、もうすぐ婚約破棄されて断罪される予定の悪役令嬢に生まれ変わっていることに気がついた。
気がついてしまったからには、自分の敵になる奴全部酷い目に合わせてやるしか無いでしょう。
悪役令嬢より取り巻き令嬢の方が問題あると思います
蓮
恋愛
両親と死別し、孤児院暮らしの平民だったシャーリーはクリフォード男爵家の養女として引き取られた。丁度その頃市井では男爵家など貴族に引き取られた少女が王子や公爵令息など、高貴な身分の男性と恋に落ちて幸せになる小説が流行っていた。シャーリーは自分もそうなるのではないかとつい夢見てしまう。しかし、夜会でコンプトン侯爵令嬢ベアトリスと出会う。シャーリーはベアトリスにマナーや所作など色々と注意されてしまう。シャーリーは彼女を小説に出て来る悪役令嬢みたいだと思った。しかし、それが違うということにシャーリーはすぐに気付く。ベアトリスはシャーリーが嘲笑の的にならないようマナーや所作を教えてくれていたのだ。
(あれ? ベアトリス様って実はもしかして良い人?)
シャーリーはそう思い、ベアトリスと交流を深めることにしてみた。
しかしそんな中、シャーリーはあるベアトリスの取り巻きであるチェスター伯爵令嬢カレンからネチネチと嫌味を言われるようになる。カレンは平民だったシャーリーを気に入らないらしい。更に、他の令嬢への嫌がらせの罪をベアトリスに着せて彼女を社交界から追放しようともしていた。彼女はベアトリスも気に入らないらしい。それに気付いたシャーリーは怒り狂う。
「私に色々良くしてくださったベアトリス様に冤罪をかけようとするなんて許せない!」
シャーリーは仲良くなったテヴァルー子爵令息ヴィンセント、ベアトリスの婚約者であるモールバラ公爵令息アイザック、ベアトリスの弟であるキースと共に、ベアトリスを救う計画を立て始めた。
小説家になろう、カクヨムにも投稿しています。
ジャンルは恋愛メインではありませんが、アルファポリスでは当てはまるジャンルが恋愛しかありませんでした。
悪役令嬢は、いつでも婚約破棄を受け付けている。
ao_narou
恋愛
自身の愛する婚約者――ソレイル・ディ・ア・ユースリアと平民の美少女ナナリーの密会を知ってしまった悪役令嬢――エリザベス・ディ・カディアスは、自身の思いに蓋をしてソレイルのため「わたくしはいつでも、あなたからの婚約破棄をお受けいたしますわ」と言葉にする。
その度に困惑を隠せないソレイルはエリザベスの真意に気付くのか……また、ナナリーとの浮気の真相は……。
ちょっとだけ変わった悪役令嬢の恋物語です。
農地スローライフ、始めました~婚約破棄された悪役令嬢は、第二王子から溺愛される~
可児 うさこ
恋愛
前世でプレイしていたゲームの悪役令嬢に転生した。公爵に婚約破棄された悪役令嬢は、実家に戻ったら、第二王子と遭遇した。彼は王位継承より農業に夢中で、農地を所有する実家へ見学に来たらしい。悪役令嬢は彼に一目惚れされて、郊外の城で一緒に暮らすことになった。欲しいものを何でも与えてくれて、溺愛してくれる。そんな彼とまったり農業を楽しみながら、快適なスローライフを送ります。
悪役令嬢と言われ冤罪で追放されたけど、実力でざまぁしてしまった。
三谷朱花
恋愛
レナ・フルサールは元公爵令嬢。何もしていないはずなのに、気が付けば悪役令嬢と呼ばれ、公爵家を追放されるはめに。それまで高スペックと魔力の強さから王太子妃として望まれたはずなのに、スペックも低い魔力もほとんどないマリアンヌ・ゴッセ男爵令嬢が、王太子妃になることに。
何度も断罪を回避しようとしたのに!
では、こんな国など出ていきます!
悪役令嬢はざまぁされるその役を放棄したい
みゅー
恋愛
乙女ゲームの悪役令嬢に転生していたルビーは、このままだとずっと好きだった王太子殿下に自分が捨てられ、乙女ゲームの主人公に“ざまぁ”されることに気づき、深い悲しみに襲われながらもなんとかそれを乗り越えようとするお話。
切ない話が書きたくて書きました。
転生したら推しに捨てられる婚約者でした、それでも推しの幸せを祈りますのスピンオフです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる