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第一章

第三者視点

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 国境線は大混乱になっていた。
 大動員されていたベネット王国軍十万が、全員醜い豚に変化させられた。
 何とその中に国王まで含まれていたから、ベネット王国が機能不全となった。
 青い疣豚に変化させられた十万の将兵は、本能丸出しで盛っていた。
 全てが悪名高い最凶最悪魔導師、ルークの仕業だと言うのが瞬く間に広まった。

 噂通りなら、七日七晩変化したままだと言う噂も広まった。
 それを聞いた周辺の住民が、普段の恨みを晴らすべく、豚を殺そうとした。
 周辺国も、人間に戻る前にベネット王国に侵攻しようと準備を急いだ。
 軍隊がいない事をいい事に、盗賊や山賊が暴れ回った。
 山犬の群れや狼の群れも、豚達に襲い掛かった。

 だがルークもお姉ちゃんとの約束は守った。
 ネイサンとエリアスはもちろん、ガルシア公爵家の私兵は殺されないようにした。
 トーレス王国財務省の役人も殺されないようにした。
 トーレス王国の豚はトーレス王国の領内に、ベネット王国軍の豚はベネット王国軍の領内に分けたし、トーレス王国の国境警備隊は豚にしなかった。

 それと七日七晩ではなく、三日三晩で豚から人間に戻った。
 本人達にしたら、悪夢の三日三晩だったろう。
 そして今まで抑えていた欲望が爆発してしまった三日三晩だった。
 多くの者が二度と思い出したくないような、悪夢の行いだった。
 特にエリアスとランドンには、今までの抑えに抑えてきた劣情を現実にしてしまった、聖騎士失格の悪魔の所業だった。

 二人のルークへの恨みは何よりも深く暗いモノだった。
 だがそもそも、庶弟を虐める者が聖騎士に任じられること自体がおかしいのだ。
 トーレス王国の国教と聖騎士制度が、いかに腐敗しているかの証拠だった。
 二人を含めたガルシア公爵家軍は、豚から人間に戻って直ぐに領地を目指した。
 王家との絆が断ち切られていたからだ。

 ガルシア公爵は頭を悩ませていた。
 豚に変えられる前、ベネット王に囚われている時に、王太子の愚かな行動と、それを黙認した王の行動を聞かされていた。
 豚に変えられた事で、ルークに助けられたことも理解していた。
 そして一番の問題が、実子であるルークに殺意を持たれている事を、誰よりも実感している事だった。

 トーレス王家と和解して生きていくにしても、トーレス王家を打倒して戴冠を目論むにも、ルークの力なしには不可能だった。
 正室の機嫌を取るためにルークを虐待した事を、今ほど後悔した時はなかった。
 だが過去に行った事を、なかった事にはできない。
 ルークを思い通りに動かすには、オリビアに取り入るしかなかった。
 
 だがそれこそが最も難しかった!
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