7 / 11
第一章
第7話:呪殺・アイリス視点
しおりを挟む
重いです、自分が何とも想っていない人からの溺愛は重すぎます。
領地で病気療養したいと言ってから三カ月経ちました。
ですが私を溺愛する父が一向に領地の戻る許可を出してくれません。
母も兄も私に味方してくれましたが、駄目でした。
まあ、私の病気療養はあからさまな嘘なので、仕方ないですね。
「うっ、う、う、う、う」
むねが、胸が痛いです。
焼けつくような痛みが、胃から心臓、心臓から食道に駆けのぼります。
これほどの痛みは、先の呪殺の時以来です。
これは、また呪殺なのでしょうか。
それとも心筋梗塞か何かを起こしているのでしょうか。
「お嬢様、アイリスお嬢様!
閣下、公爵閣下、お嬢様が、アイリスお嬢様が!
魔術長、呪術長、何をやっているのですか。
お前達も一味なのですか」
マイラ、マイラが半狂乱になっています。
普段あれほど冷静な淑女なのに、よほど私の事が心配なのですね。
ごめんなさいね、マイラ。
貴女が愛していた本物のアイリスはもう死んでいるのよ。
私が死んだ方が貴女も諦めがつくかもしれませんね。
「お嬢様、アイリスお嬢様、護符でございます、護符をしっかり握られてください」
ドミニク、乳妹のドミニクが抱きしめてくれます。
涙など流してもしかたないのですよ、私は偽者なのですから。
本当に死ぬのかな、この前のように別の人が憑依するのかな。
……嫌だ、死にたくない、怖い、何も分からないのは嫌!
こんな事なら、もっと本気で魔術と錬金術を学べばよかった。
三カ月も無駄にしてしまった。
三カ月を小説を書くのではなく、魔術に使っていたらこんな事にならなかった。
「お嬢様、護符を握ってくださいませ。
呪殺から身を護ってくれる護符でございます。
生命力を高める護符でございます。
助かります、必ず助かりますから、護符を握ってください、お嬢様」
「ああ、すまないアイリス、私が悪かったアイリス。
あの時私が領地に帰る許可を与えていれば、こんな事にはならなかったのだ。
私が王宮で王太子殿下との婚約解消を認めれば、こんな事にはならなかったのだ。
私が王宮でアイリスの魔力が高まった事を自慢しなければ、こんな事にはならなかったのだ、ごめんよアイリス、ゆるしてくれアイリス」
お前が原因なのか、父よ、いや、ヴィゼル公爵クレマン。
お前がアイリスを溺愛している事は知っている。
普段は名公爵なのに、アイリスが関係した時だけ暴走するのも知っている。
だが事はアイリスの命がかかっているのだぞ。
呪殺を謀った相手が見つかっていないのに、敵を煽るような言動をしてどうする。
「グッはっ」
我慢できずに血を吐いてしまいました。
真っ黒な血です。
これは、本当に死んでしまうかもしれません。
領地で病気療養したいと言ってから三カ月経ちました。
ですが私を溺愛する父が一向に領地の戻る許可を出してくれません。
母も兄も私に味方してくれましたが、駄目でした。
まあ、私の病気療養はあからさまな嘘なので、仕方ないですね。
「うっ、う、う、う、う」
むねが、胸が痛いです。
焼けつくような痛みが、胃から心臓、心臓から食道に駆けのぼります。
これほどの痛みは、先の呪殺の時以来です。
これは、また呪殺なのでしょうか。
それとも心筋梗塞か何かを起こしているのでしょうか。
「お嬢様、アイリスお嬢様!
閣下、公爵閣下、お嬢様が、アイリスお嬢様が!
魔術長、呪術長、何をやっているのですか。
お前達も一味なのですか」
マイラ、マイラが半狂乱になっています。
普段あれほど冷静な淑女なのに、よほど私の事が心配なのですね。
ごめんなさいね、マイラ。
貴女が愛していた本物のアイリスはもう死んでいるのよ。
私が死んだ方が貴女も諦めがつくかもしれませんね。
「お嬢様、アイリスお嬢様、護符でございます、護符をしっかり握られてください」
ドミニク、乳妹のドミニクが抱きしめてくれます。
涙など流してもしかたないのですよ、私は偽者なのですから。
本当に死ぬのかな、この前のように別の人が憑依するのかな。
……嫌だ、死にたくない、怖い、何も分からないのは嫌!
こんな事なら、もっと本気で魔術と錬金術を学べばよかった。
三カ月も無駄にしてしまった。
三カ月を小説を書くのではなく、魔術に使っていたらこんな事にならなかった。
「お嬢様、護符を握ってくださいませ。
呪殺から身を護ってくれる護符でございます。
生命力を高める護符でございます。
助かります、必ず助かりますから、護符を握ってください、お嬢様」
「ああ、すまないアイリス、私が悪かったアイリス。
あの時私が領地に帰る許可を与えていれば、こんな事にはならなかったのだ。
私が王宮で王太子殿下との婚約解消を認めれば、こんな事にはならなかったのだ。
私が王宮でアイリスの魔力が高まった事を自慢しなければ、こんな事にはならなかったのだ、ごめんよアイリス、ゆるしてくれアイリス」
お前が原因なのか、父よ、いや、ヴィゼル公爵クレマン。
お前がアイリスを溺愛している事は知っている。
普段は名公爵なのに、アイリスが関係した時だけ暴走するのも知っている。
だが事はアイリスの命がかかっているのだぞ。
呪殺を謀った相手が見つかっていないのに、敵を煽るような言動をしてどうする。
「グッはっ」
我慢できずに血を吐いてしまいました。
真っ黒な血です。
これは、本当に死んでしまうかもしれません。
0
お気に入りに追加
113
あなたにおすすめの小説
断罪されて婚約破棄される予定のラスボス公爵令嬢ですけど、先手必勝で目にもの見せて差し上げましょう!
ありあんと
恋愛
ベアトリクスは突然自分が前世は日本人で、もうすぐ婚約破棄されて断罪される予定の悪役令嬢に生まれ変わっていることに気がついた。
気がついてしまったからには、自分の敵になる奴全部酷い目に合わせてやるしか無いでしょう。
婚約破棄された悪役令嬢は辺境で幸せに暮らす~辺境領主となった元悪役令嬢の楽しい日々~
六角
恋愛
公爵令嬢のエリザベスは、婚約者である王太子レオンから突然の婚約破棄を言い渡される。理由は王太子が聖女と恋に落ちたからだという。エリザベスは自分が前世で読んだ乙女ゲームの悪役令嬢だと気づくが、もう遅かった。王太子から追放されたエリザベスは、自分の領地である辺境の地へと向かう。そこで彼女は自分の才能や趣味を生かして領民や家臣たちと共に楽しく暮らし始める。しかし、王太子や聖女が放った陰謀がエリザベスに迫ってきて……。
逆ハーレムが成立した後の物語~原作通りに婚約破棄される当て馬女子だった私たちは、自分たちの幸せを目指して新たな人生を歩み始める~
キョウキョウ
恋愛
前世でプレイした乙女ゲームの世界に転生したエレノラは、原作通りのストーリーを辿っていく状況を観察していた。ゲームの主人公ヒロインでもあったアルメルが、次々と攻略対象の男性たちを虜にしていく様子を介入せず、そのまま傍観し続けた。
最初の頃は、ヒロインのアルメルがゲームと同じように攻略していくのを阻止しようと奮闘した。しかし、エレノラの行動は無駄に終わってしまう。あまりにもあっさりと攻略されてしまった婚約相手の男を早々と見限り、別の未来に向けて動き始めることにした。
逆ハーレムルートの完全攻略を目指すヒロインにより、婚約破棄された女性たち。彼女たちを誘って、原作よりも価値ある未来に向けて活動を始めたエレノラ。
やがて、原作ゲームとは違う新しい人生を歩み始める者たちは、幸せを追い求めるために協力し合うことを誓うのであった。
※本作品は、少し前に連載していた試作の完成版です。大まかな展開や設定は、ほぼ変わりません。加筆修正して、完成版として連載します。
※カクヨムにも掲載中の作品です。
婚約破棄された悪役令嬢は聖女の力を解放して自由に生きます!
白雪みなと
恋愛
王子に婚約破棄され、没落してしまった元公爵令嬢のリタ・ホーリィ。
その瞬間、自分が乙女ゲームの世界にいて、なおかつ悪役令嬢であることを思い出すリタ。
でも、リタにはゲームにはないはずの聖女の能力を宿しており――?
私を選ばなかったくせに~推しの悪役令嬢になってしまったので、本物以上に悪役らしい振る舞いをして婚約破棄してやりますわ、ザマア~
あさぎかな@電子書籍二作目発売中
恋愛
乙女ゲーム《時の思い出(クロノス・メモリー)》の世界、しかも推しである悪役令嬢ルーシャに転生してしまったクレハ。
「貴方は一度だって私の話に耳を傾けたことがなかった。誤魔化して、逃げて、時より甘い言葉や、贈り物を贈れば満足だと思っていたのでしょう。――どんな時だって、私を選ばなかったくせに」と言って化物になる悪役令嬢ルーシャの未来を変えるため、いちルーシャファンとして、婚約者であり全ての元凶とである第五王子ベルンハルト(放蕩者)に婚約破棄を求めるのだが――?
乙女ゲームの断罪シーンの夢を見たのでとりあえず王子を平手打ちしたら夢じゃなかった
月
恋愛
気が付くとそこは知らないパーティー会場だった。
そこへ入場してきたのは"ビッターバター"王国の王子と、エスコートされた男爵令嬢。
ビッターバターという変な国名を聞いてここがゲームと同じ世界の夢だと気付く。
夢ならいいんじゃない?と王子の顔を平手打ちしようと思った令嬢のお話。
四話構成です。
※ラテ令嬢の独り言がかなり多いです!
お気に入り登録していただけると嬉しいです。
暇つぶしにでもなれば……!
思いつきと勢いで書いたものなので名前が適当&名無しなのでご了承下さい。
一度でもふっと笑ってもらえたら嬉しいです。
【完結】もったいないですわ!乙女ゲームの世界に転生した悪役令嬢は、今日も生徒会活動に勤しむ~経済を回してる?それってただの無駄遣いですわ!~
鬼ヶ咲あちたん
恋愛
内容も知らない乙女ゲームの世界に転生してしまった悪役令嬢は、ヒロインや攻略対象者たちを放って今日も生徒会活動に勤しむ。もったいないおばけは日本人の心! まだ使える物を捨ててしまうなんて、もったいないですわ! 悪役令嬢が取り組む『もったいない革命』に、だんだん生徒会役員たちは巻き込まれていく。「このゲームのヒロインは私なのよ!?」荒れるヒロインから一方的に恨まれる悪役令嬢はどうなってしまうのか?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる