神様、つがいが2人同時に現れるなんて酷過ぎます!

克全

文字の大きさ
上 下
5 / 7
第一章

第5話:修羅場・グリード皇太子視点

しおりを挟む
「護衛の分際で偉そうな口を利く、身の程を知れ!」

 生意気な口を利く人族の護衛に殺気を放ってやった。
 卑怯下劣な人族では耐えられないくらいの、少々強めの殺気だ。
 獣人族の戦士でも戦意が挫ける強さの殺気だから、人族だと死ぬかもしれないが、生意気な口を利いたのだから、それくらいは覚悟してもらう。
 まあ、蘇生魔法で生き返らせてやるから、竜人族の偉大さを思い知るがいい。

「このような大切な場でこれほどの殺気を放つとは、英邁と誉れ高い竜人族とは思えない愚かな行いですね。
 身なりから高き御身分のようですが、恥を知りなさい!」

 驚いた、死なぬどころか私に啖呵を切って来た!
 人族にしておくには惜しい度胸だが、それだけに腹立たしい。
 確かにこの行動は、少々恥ずべきところがある。
 このような野蛮な行動は、天虎族なら勇敢だと褒められるだろうが、竜人族では野蛮で礼儀知らずと叱責されてしまう。
 人族に惹かれてしまったという、前代未聞の出来事に、狼狽えてしまっていた。

「……確かにこれは少々礼を失していたようだ、許されよ」

 人族の、それも身分の低い護衛に詫びを口にするなど、本来なら恥ずべきことなのだが、ここで更に威丈高に出てしまったら、皇室や竜人族の名誉を損なう恥の上塗りなってしまう。
 ここは俺個人の名誉を損ねても、皇室と竜人族の名誉を守らなければならん。

「その謝罪は受け入れましょう、その代わり、体調を崩された姫様の退出をこれ以上邪魔されますな。
 うぅぐぅほっ!」

「マーガレット!」

 なんと、これほどの胆力と忠誠心を備えた者が人族にいたのか?!
 獣人族の戦士が戦意を失うほどの殺気を受け、身体に吐血するほどの酷い損傷を受けながら、主人を護ろうとする。
 私はこれほどの戦士を愚弄して恥をかかせてしまった。
 それは、自分の戦士を見る眼のなさ、愚かさを露呈したも同然だ。
 私は自分が思っているほど英邁でも公平でもない、ただ地位を振りかざす愚物だ。

「治癒。
 許されよ、護衛殿。
 私はまだまだ未熟で不明であった。
 貴殿ほどの戦士の真を見抜けずにいた」

「お気になさらずに、竜人殿。
 多くの人族が卑怯下劣な事、戦場往来の私もよく知っております。
 ただ、僅かな数ではございますが、人族の中にも戦士の心を持った者がおります。
 その事、覚えていてくだされば幸いです。
 尊き御身直々に治癒の魔法を唱えてくださり、心から感謝いたします。
 誤解も解けたと思いますので、このまま不調の主人を案内して、退出させていただきます」

 礼儀から言えば、このまま退出してもらうしかない。
 私が失点を重ねてしまい、これ以上の言葉は皇室と竜人族の名誉を損なう。
 そんな事は分かっているのに、心から帰したくないという思いが湧き上がる。
 それが忠勇を示した護衛に対するモノなら、これほど悩みはしない。
 悩み苦しむのは、忠勇を示した護衛に態度に報いる事もなく、ただここから逃げ出そうと考える、主人を帰したくないと思ってしまっているからだ。

「ならん、このまま俺様に挨拶もせずに帰る事、絶対に許さん!」
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

離婚した彼女は死ぬことにした

まとば 蒼
恋愛
2日に1回更新(希望)です。 ----------------- 事故で命を落とす瞬間、政略結婚で結ばれた夫のアルバートを愛していたことに気づいたエレノア。 もう一度彼との結婚生活をやり直したいと願うと、四年前に巻き戻っていた。 今度こそ彼に相応しい妻になりたいと、これまでの臆病な自分を脱ぎ捨て奮闘するエレノア。しかし、 「前にも言ったけど、君は妻としての役目を果たさなくていいんだよ」 返ってくるのは拒絶を含んだ鉄壁の笑みと、表面的で義務的な優しさ。 それでも夫に想いを捧げ続けていたある日のこと、アルバートの大事にしている弟妹が原因不明の体調不良に襲われた。 神官から、二人の体調不良はエレノアの体内に宿る瘴気が原因だと告げられる。 大切な人を守るために離婚して彼らから離れることをエレノアは決意するが──。 ----------------- とあるコンテストに応募するためにひっそり書いていた作品ですが、最近ダレてきたので公開してみることにしました。 まだまだ荒くて調整が必要な話ですが、どんなに些細な内容でも反応を頂けると大変励みになります。 書きながら色々修正していくので、読み返したら若干展開が変わってたりするかもしれません。 作風が好みじゃない場合は回れ右をして自衛をお願いいたします。

婚約破棄の甘さ〜一晩の過ちを見逃さない王子様〜

岡暁舟
恋愛
それはちょっとした遊びでした

王子の呪術を解除したら婚約破棄されましたが、また呪われた話。聞く?

十条沙良
恋愛
呪いを解いた途端に用済みだと婚約破棄されたんだって。ヒドクない?

王太子になる兄から断罪される予定の悪役姫様、弟を王太子に挿げ替えちゃえばいいじゃないとはっちゃける

下菊みこと
恋愛
悪役姫様、未来を変える。 主人公は処刑されたはずだった。しかし、気付けば幼い日まで戻ってきていた。自分を断罪した兄を王太子にさせず、自分に都合のいい弟を王太子にしてしまおうと彼女は考える。果たして彼女の運命は? 小説家になろう様でも投稿しています。

【完結】何回も告白されて断っていますが、(周りが応援?) 私婚約者がいますの。

BBやっこ
恋愛
ある日、学園のカフェでのんびりお茶と本を読みながら過ごしていると。 男性が近づいてきました。突然、私にプロポーズしてくる知らない男。 いえ、知った顔ではありました。学園の制服を着ています。 私はドレスですが、同級生の平民でした。 困ります。

雷鳴の歌

桧山 紗綺
恋愛
都の外れでひっそりと暮らす少女。 闇夜のみに現れる恋人が人ではないことは知っていた。 少女を疎む父の手の者が刀を手にして現れたとき、少女は初めて自らの生い立ちを知る。 ********* 和風ファンタジー ※「小説を読もう」に投稿していたものです

【完結】「幼馴染が皇子様になって迎えに来てくれた」

まほりろ
恋愛
腹違いの妹を長年に渡りいじめていた罪に問われた私は、第一王子に婚約破棄され、侯爵令嬢の身分を剥奪され、塔の最上階に閉じ込められていた。 私が腹違いの妹のマダリンをいじめたという事実はない。  私が断罪され兵士に取り押さえられたときマダリンは、第一王子のワルデマー殿下に抱きしめられにやにやと笑っていた。 私は妹にはめられたのだ。 牢屋の中で絶望していた私の前に現れたのは、幼い頃私に使えていた執事見習いのレイだった。 「迎えに来ましたよ、メリセントお嬢様」 そう言って、彼はニッコリとほほ笑んだ ※他のサイトにも投稿してます。 「Copyright(C)2022-九頭竜坂まほろん」 表紙素材はあぐりりんこ様よりお借りしております。

守護神の加護がもらえなかったので追放されたけど、実は寵愛持ちでした。神様が付いて来たけど、私にはどうにも出来ません。どうか皆様お幸せに!

蒼衣翼
恋愛
千璃(センリ)は、古い巫女の家系の娘で、国の守護神と共に生きる運命を言い聞かされて育った。 しかし、本来なら加護を授かるはずの十四の誕生日に、千璃には加護の兆候が現れず、一族から追放されてしまう。 だがそれは、千璃が幼い頃、そうとは知らぬまま、神の寵愛を約束されていたからだった。 国から追放された千璃に、守護神フォスフォラスは求愛し、へスペラスと改名した後に、人化して共に旅立つことに。 一方、守護神の消えた故国は、全ての加護を失い。衰退の一途を辿ることになるのだった。 ※カクヨムさまにも投稿しています

処理中です...