神様、つがいが2人同時に現れるなんて酷過ぎます!

克全

文字の大きさ
上 下
1 / 7
第一章

第1話:婚活舞踏会・クラリス王女視点

しおりを挟む
 テンポのよい、皆の心が浮き立つような音楽が奏でられています。
 最初は憂鬱だった私の気持ちさえ、湧き立たせてくれる音色です。
 去年までは、人族が加わることができなかった、異種の出会いの場。
 獣人族がつがいと出会うために、種族の垣根を超えて行われる舞踏会。
 でも、性根が悪いと評判の人族だけは、参加することができませんでした。
 まあ、つがいの影響力に公平さを欠く人族は、危険だと考えられたのもあります。

 獣人族同士でつがいとなった場合は、互いに影響力を行使して、どちらかが支配したり支配されたりという関係にはなりません。
 フェロモンの影響を受けますので、女性の状態によって影響を受ける事は免れないのですが、だからといって女性の命令に男性が唯々諾々と従う事はありません。
 ですが人間と獣人がつがいになった場合は、人間が支配権を持ってしまうのです。

 その理由は、笑い話にもならないのですが、人間の嗅覚が鈍いためです。
 つがいのフェロモンを感じることができずに、つがいの影響を受けないのです。
 そのくせ、自分のフェロモンで獣人を支配してしまうのです。
 これは獣人にとっては屈辱でしかありません。
 ですから、昨年まではこの舞踏会に人族は参加できませんでした。

 しかし、近年大きな問題が起きてしまっています。
 舞踏会を頻繁に開催しているにもかかわらず、つがいの発生率が極端に低下しており、種族の維持に問題が起きるくらい出生率が低下しているのです。
 つがいでなければ子供を生むことができないのに、十割あったつがい率が急速に低下し、一割を切ってしまうなど、種族絶滅の恐れさえあるのです。

 異種族同士の結婚でも、混血が生まれる事はありません。
 必ず両親のどちらかの種族に分かれます。
 多産のオーク女性が生む子供などは、二人がオークで六人が夫の竜人族という事すらありますから、この舞踏会では多産系の獣人女性が注目の的になります。
 まあ、多産系の女性であっても、つがいに選ばれなければ子供に恵まれないので、つがいと出会えるかどうかが何よりも重要です。
 
 嫌われ者の人族の参加が認められるくらいですから、獣人達の危機感はとても大きいのでしょうが、無理矢理参加させられるこちらは迷惑以外の何物でもありません。
 今まで人族は獣人と結婚などした事がないのです。
 獣人と夫婦の営みをしなければいけないと思うだけで、そのおぞましさに吐き気がするのです。

 別に獣人族とつがいにならなくても、人族は順調に増えています。
 まあ、それも獣人族たちの危機感を煽ったのでしょう。
 このままでは、弱く性悪の人族に、全獣人族が支配されてしまうかもしれないと。
 人族の中には、獣人と夫婦の営みがしたい特殊な性癖のひともいるのですが、私にそんな趣味嗜好はないのです。
 私はこんな所に来たくなかったのに、王女の義務で来るしかありませんでした。
 
 私がつがいに選ばれませんようにと、心から神様に願い祈っています。
 先程から感じる刺すような視線は、何かの間違いだと信じています。
 全種族合わせて十人に一人以下のつがい率です。
 性悪で嫌われている人族など、つがいに選ばれるとは思いません。
 つがいだと思っても、向こうが言い出さなければ鈍感な人族は気が付きません。
 どうかこの視線の主が、人族を嫌う誇り高い獣人でありますように。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

離婚した彼女は死ぬことにした

まとば 蒼
恋愛
2日に1回更新(希望)です。 ----------------- 事故で命を落とす瞬間、政略結婚で結ばれた夫のアルバートを愛していたことに気づいたエレノア。 もう一度彼との結婚生活をやり直したいと願うと、四年前に巻き戻っていた。 今度こそ彼に相応しい妻になりたいと、これまでの臆病な自分を脱ぎ捨て奮闘するエレノア。しかし、 「前にも言ったけど、君は妻としての役目を果たさなくていいんだよ」 返ってくるのは拒絶を含んだ鉄壁の笑みと、表面的で義務的な優しさ。 それでも夫に想いを捧げ続けていたある日のこと、アルバートの大事にしている弟妹が原因不明の体調不良に襲われた。 神官から、二人の体調不良はエレノアの体内に宿る瘴気が原因だと告げられる。 大切な人を守るために離婚して彼らから離れることをエレノアは決意するが──。 ----------------- とあるコンテストに応募するためにひっそり書いていた作品ですが、最近ダレてきたので公開してみることにしました。 まだまだ荒くて調整が必要な話ですが、どんなに些細な内容でも反応を頂けると大変励みになります。 書きながら色々修正していくので、読み返したら若干展開が変わってたりするかもしれません。 作風が好みじゃない場合は回れ右をして自衛をお願いいたします。

婚約破棄の甘さ〜一晩の過ちを見逃さない王子様〜

岡暁舟
恋愛
それはちょっとした遊びでした

王子の呪術を解除したら婚約破棄されましたが、また呪われた話。聞く?

十条沙良
恋愛
呪いを解いた途端に用済みだと婚約破棄されたんだって。ヒドクない?

【完結】何回も告白されて断っていますが、(周りが応援?) 私婚約者がいますの。

BBやっこ
恋愛
ある日、学園のカフェでのんびりお茶と本を読みながら過ごしていると。 男性が近づいてきました。突然、私にプロポーズしてくる知らない男。 いえ、知った顔ではありました。学園の制服を着ています。 私はドレスですが、同級生の平民でした。 困ります。

王太子になる兄から断罪される予定の悪役姫様、弟を王太子に挿げ替えちゃえばいいじゃないとはっちゃける

下菊みこと
恋愛
悪役姫様、未来を変える。 主人公は処刑されたはずだった。しかし、気付けば幼い日まで戻ってきていた。自分を断罪した兄を王太子にさせず、自分に都合のいい弟を王太子にしてしまおうと彼女は考える。果たして彼女の運命は? 小説家になろう様でも投稿しています。

雷鳴の歌

桧山 紗綺
恋愛
都の外れでひっそりと暮らす少女。 闇夜のみに現れる恋人が人ではないことは知っていた。 少女を疎む父の手の者が刀を手にして現れたとき、少女は初めて自らの生い立ちを知る。 ********* 和風ファンタジー ※「小説を読もう」に投稿していたものです

【完結】「幼馴染が皇子様になって迎えに来てくれた」

まほりろ
恋愛
腹違いの妹を長年に渡りいじめていた罪に問われた私は、第一王子に婚約破棄され、侯爵令嬢の身分を剥奪され、塔の最上階に閉じ込められていた。 私が腹違いの妹のマダリンをいじめたという事実はない。  私が断罪され兵士に取り押さえられたときマダリンは、第一王子のワルデマー殿下に抱きしめられにやにやと笑っていた。 私は妹にはめられたのだ。 牢屋の中で絶望していた私の前に現れたのは、幼い頃私に使えていた執事見習いのレイだった。 「迎えに来ましたよ、メリセントお嬢様」 そう言って、彼はニッコリとほほ笑んだ ※他のサイトにも投稿してます。 「Copyright(C)2022-九頭竜坂まほろん」 表紙素材はあぐりりんこ様よりお借りしております。

ヒロインと結婚したメインヒーローの側妃にされてしまいましたが、そんなことより好きに生きます。

下菊みこと
恋愛
主人公も割といい性格してます。 小説家になろう様でも投稿しています。

処理中です...